教科固有の知識・技能を学ぶ中で

工業化社会では、正しい手順を正確に且つ効率的に再現できることが生産性を高めることに直結しました。個々の教科の内容を学ぶ中で身につけた「与えられた情報を素早く理解し、記憶する力」 はそれ自体で武器になったように思えます。テストで「覚える力」 を証明することが、次のステージへのパスポートになったように感じます。

でも、人工知能(AI)の進化など情報化・グローバル化が急激に進展する不透明な時代をたくましく、しなやかに生きていくには、各教科に固有の知識・技能を獲得することだけを目的にすることはできなくなりそうです。


❏ 各科目の学習目標達成を「手段」 と捉える発想

社会の変化が加速し、新たな知見が生み出されるスピードが格段に上がる中、勉強して覚えた知識がわずかな期間で通用しなくなることも増えてくるかもしれませんが、勉強する中で身につけた「学び方」 や「考え方」 は場面を変えても役立つもの。

そう考えてくると、教科固有の知識や技能を学ぶことは、それ自体が「目的」 ではなく、学び方・考え方を身につけるための「手段」 と捉えた方が、これからの時代には馴染むような気がします。


❏ それでも、知識を軽んじることはできない

もちろん、教室で学ぶ各教科の知識は、物事を考えるときの土台であるとともに、出会った情報を認識・解釈するための「認知の網」 として欠かせません。

人の脳は、情報を解釈したり評価したりするのに、それまでの経験・知識を用いるので、持ち合わせる知識が少ない領域では外からの情報との接触があっても、意味や重要性を認知しないまま、素通りさせてしまいます。

これを網に喩えて、「認知の網」と言います。

平たく言えば、脳は知っていることしか認識できない、知らないことは認識しないってことです。

それが自分の将来を左右しかねない重要なことでも、大イノベーションに繋がるようなヒントになることでも、届いた端からはるか彼方に消えていきます。

 ■5教科7科目に挑ませることの意味
 ■記憶に格納する知識、外部参照する知識


❏ 教科固有の知識・技能を学びながら身につけられること

教科学習指導の場では、その教科の内容を伝えるだけではなく、(意識してか無意識のうちにかの違いはありますが)様々な知的活動を生徒の目の前で展開し、経験させています。

例えば、情報を整理・統合し、表現する方法として、
  • 題意を図に描き起こす、数的に処理できる形に変換する
  • 表組やフローチャートなどを用いて分類・整理する
  • 段落記号や入れ子構造を用いて、項目間の関係性を捉える
  • 軸(時間×項目など)を設けて現象を全体像の中に捉える
  • KJ法、マインドマップなどのファシリテーショングラフィック
などは、日常的に板書の中でやって見せていますよね。

せっかくやって見せたなら、生徒にもどんどんやらせていきましょう。やがては生徒自身の工夫も加わり、生徒独自のやり方が確立してくはずです。


❏ 探究の姿勢や汎用型スキルも

また、課題を解決するのに必要な情報や条件を抽出し、不足する情報が何かを特定し、補完・入手する方法を考えさせたり、ポイントとなる箇所を見つけ自ら問いを立てさせたり もしているはずです。

これらは課題を解決したり、物事を突き詰めたりするときの手順そのものです。

メモを取らせ、それを元に発想を拡充 したり、整理して発表させることだって珍しくないでしょうし、部活と勉強の両立を図る中で学ぶタイムマネジメント/タスク管理 だって、学習者が身につけるべきもの。

進級した後でも、卒業したあとでも、生きていく上で必要なスキルです。

協働的・対話的な学習の中では、理解を相手に伝えて他者と共有する言語能力(ディスカッションの方法、プレゼンテーションの方法、論述・記述)や、集団の一員としてのコミュニティ内での振る舞い方、役割を引き受ける方法・覚悟、互恵意識・貢献姿勢も学んでいるはずです。

協働性、多様性、主体性を学ばせるのは、お説教でも特別な教育機会でもなく、生徒が一番長い時間を過ごす授業の中なんではないでしょうか。

教科固有の知識に加えた部分でどれだけ多くを身につけさせられるかで、生徒の成長はずいぶん違ったものになるはずです。

 ■ご参考記事: 学力の三要素とは~もう一度考えてみました


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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