学びの重なりを上手に利用したコンパクトな学校経営

学校は様々な教育活動の集合体として成り立っていますが、相補関係を考慮しないで個々の教育活動を設計すると、部分最適化は図られても、リソースの最適配分という視点が欠落することもあります。

新たな要請に応えて足し算(増築)を繰り返し、教育活動を膨らませていくばかりでは、リソースの枯渇は免れません。

積み上げてきたものを振り返り、その先を描く中で、新しいものに置き換えるのが好適か、以前からのものを磨き上げるべきなのか、戦略的な判断が求められるところです。

いかに無駄な重複をさけ、教育活動全体をコンパクトにまとめるかが、学校経営やグランドデザインを考えるときの最大のポイントです。

2016/10/13 公開の記事をアップデートしました。

❏ 教科固有の知識を学ぶことを「手段」と捉える

年間の総授業時間が既に目一杯となっている中、次期学習指導要領では科目の新設も見込まれますし、"教育の強靭(じん)化に向けて"で示されたように、学習内容/知識の量を減らさずに、思考力・判断力・表現力をこれまで以上に高めることが求められます。

知識を与える場面と思考力を鍛える場面をそれぞれ設ける余裕はないはずです。

課題解決を通して思考力などを養いながら、その過程で必要な知識を獲得させていくという発想が必要です。

拙稿「教科固有の知識・技能を学ぶ中で」で申し上げた通り、教科固有の知識や技能を学ぶことは、それ自体が目的であると同時に、学び方や考え方を身につけ、学ぶ理由を見出すというより大きな目的を達成するための「手段」でもあります。

教え込むより、調べさせて気づかせることを旨に、PBL(project-based learning)の要素を各教科の学びに組み込めば、教育の強じん化の養成に答えると同時に、探究活動の充実を図るときの土台も作れます。


❏ 各教科の学びと探究活動との重なり合わせ

高大接続改革では入学者選抜において、知識・技能、思考力・判断力・表現力に加え、「学ぶ意欲、主体的に学ぶ姿勢」 も問われます。

志望理由書や学習計画書が選考材料になるため、各教科の学びは「興味を見つけるきっかけ」になることが求められ、「見出した興味を掘り下げる方法を学ぶ場」としても機能しなければなりません。

 ■ 教室は、興味が生まれる瞬間を体験して学ばせる場

実際に、興味を掘り下げるなかで「大学で何を学び、学んだことを通じて社会にどう貢献したいのか」 という帰着点にもっていくには、探究型学習のプログラムが用意される必要もあります。

ここでも、「各教科は各教科」「探究活動は探究活動」という切り分けをしては、相互補完も働かなくなります。それぞれが互いの成果に乗っかった指導設計を心掛けましょう。

 ■ 教科学習指導と探究活動の重ね合わせ


❏ 探究活動と進路指導も上手に重ね合わせて

新たに探究型学習プログラムが整備されたのに、進路指導計画がそのままというケースも時々見かけます。

特に、探究活動と進路指導を別の分掌/チームが担当しているときに多いように思います。

カッコつきの"キャリア教育の充実!"に思うところは、「目標を決めさせれば生徒は頑張る」というロジックが抱える矛盾です。

せっかく探究活動がプログラム化されたなら、そこで掘り下げた興味から、学問探究に進ませるという新しいルートもあり得るはずです。

新しい教育活動を全体設計に組み込んだら、それに合わせて関連する部分に抜本的な見直しを図るのは当然のことではないでしょうか。

進路希望を作る指導[進路意識形成]も例外ではありません。


❏ 重なり部分の活かし方もカリキュラムマネジメント

カリキュラムマネジメントという言葉がだいぶ広く使われるようになってきたように感じます。

科目の新設などを受け、教育課程に各科目をどう配置して、学校の教育目標の達成を図るかも大いに悩みどころです。

枠は増えずにピースが増えるわけですから、重なりをどう設計するかが肝になるはずです。

教育活動全体をコンパクトにまとめれば、行事にじっくり向き合える、忙しすぎない学校生活の実現にも寄与するものと考えます。

各教科の学びと、総合的な探究の時間、進路指導との間で、相互にどのような役割を引き受け合わせるのか、俯瞰的に見直しましょう。

分掌、学年、教科といった組織の壁を越えて、いかに協働的に教育活動を設計するか(=互いの役割・立場を理解し、役割を引き受け合うか)が、これまで以上に重要になると感じています。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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