相手に合わせて質問もアレンジ(学校評価アンケート)

昨日に引き続き、学校評価アンケートにおける質問文のお話です。学校評価アンケートでは、生徒、保護者、教職員の三者評価や、地域を加えて四者評価とするケースが多いようですが、同じ項目について尋ねる場合でも、回答者の認識のあり方や及ぶ範囲をきちんと踏まえた質問を起こすことが大切です。


❏ 例えば、勉強と部活動の両立について尋ねるとき

部活と勉強の両立を校是として追求している学校では、これを評価項目に入れないわけには行きませんよね。

様々な立場の関係者からの意見を募り、学校の教育目標の実現に近づく方策を考えたり、実現に向けた取り組みの進捗を探ったりするのが学校評価の目的ですから。

では、「勉強と部活の両立」 という評価項目を置く場合、生徒、保護者、教職員に対してはどのような聞き方をするのが好適でしょうか。

同じ質問文で三者に尋ねる」 という固定観念に縛られて、「本校の生徒は、学習時間を確保しながら部活との両立ができていると思いますか」 と聞いたところで、すべての回答者がうまく反応できるとは思えません。


❏ 対生徒の質問文では、自分のことに焦点を

生徒に「本校の生徒は…」と聞いたところで、生徒は面食らうばかりですよね。

「自分はOKだと思うけどクラスの皆はあんまりね?」 、あるいは「自分はともかく、他の皆は頑張っているんでは?」 と考える生徒は、YESで答えるか、NOで答えるべきか判断がつきません。

生徒に対しては、「あなたは」 という二人称単数で聞き、自分自身のことに焦点を当てて答えてもらうのが良さそうです。

こううした聞き方をすれば、YESと答える生徒の割合で、クラス間、年度間の比較を行えます。

クラス間、年度間で比較するのは、序列をつけることが目的ではありません。優れた評価を得たクラスを見つけて、倣うべき手法を抽出・共有することや、指導改善を図ったときにその効果を測定するためです。

実際に、データを見てみると、同じ学年でもクラスによってだいぶ違う結果が出ます。好適事例を抽出できれば、学校全体での教育活動を改善する上でのヒントが得られます。


❏ 保護者が答えられるのは、家庭での姿から伺える範囲

保護者に対しても、「本校の生徒は…」 では答えようがなさそうです。

「身だしなみや礼節が身についている」 かどうかのように、学校を訪ねたときの生徒たちの様子から直観で答えられるような項目ならかまいませんが、両立への取り組みとなると、ちょっと見てわかるようなものではありません。

「お子様は、部活との両立を図りながら、学習時間を確保しようとしていますか」 と尋ねるのであれば、家庭での姿から保護者がYES/NOの判定をできそうですね。


❏ 教職員に対しては、教育活動の適正さを焦点に

教職員に対しては、また違った聞き方が必要です。

生徒が勉強と部活の両立を図っているかは、部活動の参加率と学習時間調査の結果を照らし合わせればわかることですよね。

もちろん、どの程度の参加率や学習時間が適正かの「基準」 がなければいけませんが。

過年度生のデータを辿り、目標とする進路希望を実現した生徒の平均的な学習時間を目標とする方法もあります.。

もう少し精緻にやろうと思えば、「第一志望を堅持して進路希望を実現したかどうか」 を目的変数とする回帰分析を行い、学習時間における境い目を探ることもできます。

こうした基準を、論拠とともに示すことで、生徒に対しても学習時間を確保することへの動機づけができるはずです。

話を元に戻しますが、教職員に尋ねるべき質問は、「本校では、生徒が勉強と部活を両立できるよう適切な指導がなされているか」 ではないでしょうか。

授業外学習の履行時間は、適切な課題(=達成可能性が担保され、且つ学んだ成果を生徒が実感できるもの)が与えられているかどうかで大きく左右されますし、勉強と部活のバランスや優先順位のつけ方は部活顧問からの指導によって大きく左右されます。

教職員が共通理解のもとで、それぞれの立場から「両立に向けた適切な指導」 を行わないで、生徒の側での頑張りばかりを求めてはいけないはずです。


❏ 地域に対しては、学校をよく理解してもらうことを主眼に

四者評価をやろうとする場合、地域も対象に加わりますが、ここでは、「学校の取り組みをよく知ってもらう」 ことが何より優先すべきことだと思います。

地域の方が生徒と接触するのは、生徒の通学時間や部活などで見かけるグランドでの姿ですから、「勉強と部活の両立」 について評価を求めるのもどうかと思います。当然ながら、「尋ねない」 という選択肢もありますよね。

むしろ、地域の方には、学校の取り組みを知ってもらうことが優先事項。学校が重点的に取り組んで、成果を上げている取り組みがあるのなら、積極的に尋ねて知ってもらうことも心がけましょう。

理解者と協力者を地域の中で増やしていくというパブリック・リレーションズの基本的な考え方であり、「認知、理解、共感、選択」 の4フェイズを着実に踏みしめていくことが肝心です。

もし、勉強と部活の両立を図る指導に学校が本気で取り組んで、成果を上げてきているとしたら、ホームページ等で詳細を示しておき、回答者に読んでもらったうえで、取り組みへの評価をお願いするというやり方もあります。

質問文としては、「生徒が勉強と部活動を両立させる指導を展開してきました。本校の取り組みは十分だと思われますか」 というくらいに落ち着くのかもしれません。

その3に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一



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