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zoom RSS 『TOK(知の理論)を解読する』 を読んで

<<   作成日時 : 2016/11/01 06:20   >>

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今年2月に出てすぐに買ったにもかかわらず、積読(つんどく)になっていた同書をようやく読み終えました。以前から国際バカロレアのカリキュラム、特にTOKには大変興味があり、テキストを取り寄せて読んでみたり、実際の教室を参観させて頂いたりしてきましたが、知れば知るほど大きな可能性を感じます。

ただし、国際バカロレアのDPを導入するとなるとコストは膨大…。

まずは、教える側がそのエッセンスをじっくり学んで、教科学習指導の場に置き直していくという利用法もあり得るのではないかと考える次第です。


❏ 新たな知を生成する方法を学ぶ必要

変化を続ける社会の中で、新たな知を生成することはどんな場面でも必要になると思います。

ノーベル賞を取るような大発見や世界を変えるようなイノベーションもあるでしょうが、それだけではないはずです。

日々の生活や身近なコミュニティの中で次々に現れる課題にも、過去の成功体験(解き方)を当てはめるだけでは用をなすとは限りません。

そんなときに、答えの導き方や新たな捉え方を作り出す方法を学んでいるかどうかは、個人やコミュニティの存続さえ左右するのではないでしょうか。

そこかしこに問題解決へのヒントになりえる事象が転がっていても、それらを集めて評価し、知に組み上げる方法を知らなければ、何にもなりませんよね。


❏ 教科学習指導にある程度までなら組み込めるはず

帰納的推論、演繹的推論という言葉を知っていても、それらを使いこなせるかどうかは実際に使ってみる場を経験したかどうかによって大きく左右されます。

これらの用語を日頃の学習指導の中で使うことがあまりない教科の先生方であれば、TOK(知の理論)に触れてみることで、自教科の指導が大きく膨らむような気がします。

統計分析、数学モデリング、実験などに加えて、インタビュー、アンケート、ケーススタディなどの手法も学んでいるかどうかで使える手札が違ってきます。

どの教科で扱っている知識も、元を辿れば、それらを生成したときの方法が存在します。

教科書や資料集、プリントなどで「説明すべき事象」 を与えておき、分類の軸を考えさせたり、仮説を立てさせたり、あるいはそれらの妥当性を確かめる方法を考案させたりすることは可能であると思います。


❏ たとえ時間がなくても、やらなければならない理由

「そんなことに充てる時間がどこにあるのだ?」 というお叱りの声も聞こえてきそうですが、こうした学びが必要であると敢えて申し上げたいと思います。

既に確定している知識であれば、ソフトウエアの中にプログラミングできます。この領域では、ロボットが精度と速度でヒトをはるかに上回るパフォーマンスを示すことは火を見るより明らかですよね。

問題解決の方法そのものを学ぶことは、生徒一人ひとりがやがて社会の中で役割を持つための必須要件。そうした学びの場を提供することを、これからの教室は求められます。


❏ 教室で学ばせなければいけないこと

教室は、努力して達成した先に興味が生まれることを実体験を通じて学ばせる場であり、同時に、答えの作り方や学び方そのものを学ぶ場に転換を図らなければならないと思います。

教科固有の知識や技能を学ぶことは、それ自体が「目的」 であると同時に、学び方・考え方を身につけるための「手段」 と捉えた方が、これからの時代には馴染むはずです。

また、分散知識や集団知(集合的記憶)が、課題の解決に有効かつ欠かせないものであることを学ばせ、それらを上手く使う方法に習熟させることも大切な指導目標のひとつです。

新しい学習指導要領では、対話的な学習が重んじられますが、文献や書物から知識と情報を得ることも対話の一つと捉えます。

ワークショップのように、発想と経験を交換することで新しい価値を作り出すことは、集合知の活用そのものでしょう。グループワークは、学習方策を生徒が相互に補うだけではありません。


(おまけ) 私事で恐縮ですが、…

大学時代、真面目に学業に取り組んだとは言えない私ですが、専門は言語学です。卒論は、「複文における時制構造と言語形式」 というちょっとマイナーなテーマで書きました。

当時流行りだった生成文法や言語変化におけるダイナミズムの考え方を使って、古い時代の文法体系で記述されていた事柄に、より妥当性の高い説明を与えようと、…。

文字にすると志だけは立派に見えなくもありませんが、あとになって見返してみると顔から火が出そうな内容です。それでも、完成にこぎつけたときの気持ちには何とも言えないものがありました。

先行文献に当たり、見通しを立ててデータを集め、整理と論理づけを試みるうちに行き詰り、提出期限が迫る瀬戸際になって、ちょっとした発想の切り替えで新たな捉え方ができたときの、眼前かパッと開けた感覚は、今でもわりとはっきり思い出せます。

内容や仕上がりはさておいて、何か新しい知にたどり着いたときの喜び(快感というか達成感みたいなもの?)を体験できたことは、その後の職業生活にもどこかで生きているような気がします。

大学院に進むひとは別として、卒論を書き上げると、学究の世界からは遠のくのが普通かもしれません。学び舎にいられる期間を残した段階で、新たな知を生成する場を経験できていたら、きっともう一段ものの見方を深めていけるのではないかと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一




TOK(知の理論)を解読する ~教科を超えた知識の探究~
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