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zoom RSS 知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせて

<<   作成日時 : 2016/11/21 06:21   >>

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ひとつの単元を学んだんときに、どこまで拡張して知識を獲得させるか ── 生徒の進路希望を実現しようと、最大公約数的に広く網をかけていくと、「そこまでは必要ではない」 という生徒に過剰な負担をかけることになりそうです。

同時に、さらに深い理解や思考、広い知識を必要とする生徒も、足りないものを残す状態においてしまうかもしれません。


❏ 必要な知識の範囲は、生徒一人ひとりの事情で異なる

その科目を受験で使う生徒もいれば、使わない生徒もいます。受験科目とする生徒でも、国公立大学を志望する生徒と、私大専願やセンターのみの場合とでも、必要な知識の広さや学びの深さは違ってくるのではないでしょうか。

主教材を用いた授業での学びで、「理解の軸」をしっかり作っておけば、その先、知識の範囲を広げていくのは、生徒が自分の必要に応じてできるはず。

選択的・複線的にゴールを設定するという発想が求められると思います。

単元内容を捉えるための考え方や、最小限必要な知識さえ備えさせておけば、必要が生じたときに生徒が自力で調べることもできますし、関連する情報に接触したときに反応できるだけの「認知の網」も張れたことになります。


❏ 理解の軸を中心に必須知識の補完と体系化を図る

授業では、本時の学びのターゲットとなる課題を示して、その時点で導ける仮の答えを作らせれば、解き明かしたい疑問で生徒の頭は満たされます。

疑問に解を導き、不明を解消しようと、先生の話を聞き、自分で調べ、周囲と話し合う中で、必要な知識や理解が徐々に形成されてきます。

先の課題に、再度答えを作り直し終えた時には、課題の周辺に限られるとはいえ、ある程度の理解は形成されているはずです。

それを土台に、先生からの講義によって、その単元を体系的に捉えるための必須概念やフレームと、それらを説明するのに最小限必要な知識を補えば、その単元について「軸を持ち、体系化された理解」 に至りますよね。

 ■ 目標理解と活用機会を整える授業デザイン


❏ 受験に不要なら、認知の網を張れたところが当面のゴール

授業の中で、体系化された最小限の知識群を形成できれば、認知の網としては十分に機能します。

その科目を受験で使わない生徒にとっては、「偶然との出会いに備えができた」 ことで、学習目標は達成されたと考えても良いのではないでしょうか。

初等中等教育が目指すところは、必要が生じたら自分で学べる状態までもっていくことであり、判断や選択に必要な情報を逃さず拾い上げるための「認知の網」 を張ることだと思います。

それ以上のところまで求めて、小テストなどで負荷をかけても、ノルマが大きくなるばかり、仕上げ切らないことを習慣化させるリスクが大きくなります。

 ■ やりきらせる責任〜仕上げ切らないことを習慣化させない


❏ 必要な知識の拡充は、生徒自身に任せてもできるはず

しかしながら、この段階でストップしては、その科目で受験する生徒にとって知識面の不足は明らか。拡充を図る機会と方法を与える必要がありますよね。

すでに理解の軸は形成されていますから、サブノート式のプリントなどを配り空所を埋めさせれば、必要な知識に触れる機会は確保できます。

教科書を読み直したり、資料集や用語集を調べて、空所を埋めていけば良いだけの話ですね。

その作業は生徒に任せても支障なく進むはずです。どうしてもわからなけば、周りに訊いても先生に質問しても良いわけですし。

必要なことであれば、生徒は何とかしようと知恵を使います。お膳立てをすべて整えては、知恵の使いどころを奪うだけですよね。

センター試験でその科目を使う生徒には、とりあえずここまではマストでしょうか。受験期を迎えて、過去問演習を重ねるときの準備は整ったことになります。


❏ 知識を断片化させないためには、言語化の機会とセットで

必要な知識を、空所を埋めることで獲得させたらそれで完了というわけには行きません。

知識が断片化したままでは、使えませんし、覚えた端からガンガン忘れます。

それらの用語を使った記述式の設問や数十字のマイクロ論述を課して、理解したことを言語化させることで、正しく理解し、その理解の中に知識を配置できたかを生徒自身に確かめさせましょう。

 ■ 小テストをもっと効果的に

「〇〇とはなにか」「〇〇である理由は何か」 というシンプルな問いだけでも、十分に機能します。

国公立大学を志望する生徒には、記述に慣れさせ、その力を伸ばす機会にもなるはず。ここまで挑ませたいところですよね。

前段のサブノート式のプリントで、必要な知識の大半はカバーされていますし、資料集や用語集だってあります。図書館もあれば、先生もいるわけで、生徒に任せてもなんら支障はありません。

定期考査にも一定の割合で組み込み、ちゃんと取り組んでいるかもチェックしたいところです。


❏ ゴールの設定は生徒自身のニーズに合わせて複線的に

授業内で、全生徒を対象に、如上のすべてを組み込んだ学習を経験させようという発想から離れることが大切ではないかと考えます。

必要のない負担を強いて、仕上げ切れないことを積み上げさせたり、必要なところに踏み込めない生徒を作ったりしていないか、冷静に振り返る必要があるのではないでしょうか。

もちろん、ほぼ全員が国公立大学を受験するというクラスであれば、それに応じた指導を計画・設計すれば良いのですが、多くの場合は多様な進路希望を持った生徒が混在しています。

個々のニーズに合わせ得る、複線的なゴール設定という発想を、指導計画・授業設計に持つことは、今後ますます重要になると考えます。

 ■ ひとつの課題から複線的なハードルを作る

教室を離れた場面では、対話は成り立ちません。思考を深め・拡張する「深い学び」 には先生からの問い掛けや、生徒同士での発想や気づきの交換が重要な意味を持ちますよね。

集団でこそできることに、授業時間のより多くを割り当てるにも如上の発想を持つことは必要だと考えます。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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