現場で頑張る先生方を応援します!

アクセスカウンタ

zoom RSS 認知の網の広げ方〜5教科7科目をきちんと学ぶ

<<   作成日時 : 2016/11/22 07:38   >>

トラックバック 10 / コメント 0

以前の記事で、5教科7科目に挑ませること には「認知の網」 を張るという意義があると書きました。国公立大学への合格実績は、学校の都合ですが、多くの科目を広く学ぶことは、生徒にとって理解できる範囲を広げ、分散知識を上手に使えるようになることを意味します。


❏ 理解可能な領域を広げ、偶然との出会いに備える

人の脳は、知っていることしか認識しません。

自分の生き方を変えるような重要な情報に触れても、それまでの学びがカバーせず、「認知の網」 が形成されていない領域では、その価値や意味を捉えることができず、情報を捕えて利することすらできないということです。

新たな知が生み出されるスピードがどんどん上がる中、様々なところに分散する知識を必要に応じて集めて利用するにも、広く張られた認知の網が重要な意味を持ちます。


❏ 新しいピースが、手持ちの材料を繋ぐ

新しい発想というのは、それまで自分の頭で関心をもって温めておいたパーツと、ちょっとしたことで接触した情報との組み合わせで生まれます。

情報との出会いは偶然によることが多く、自分ではコントロールできません。

意識して行えるのは、接触の可能性が高いところに身を置くことと、接触したときに確実に拾える「でかくて細かい網」 を用意しておくことぐらいでしょうか。

前者は、本を読んだり、講演を聞きに行ったりしても良いし、立場の異なる人との対話を楽しむことも大切です。

後者は、好き嫌いなく、できる限り広い範囲を学ぶ姿勢を持つことだと思いますが、高校までの学校教育の意味はまさにここにあるのではないでしょうか。


❏ すべての教科を満遍なく学ぶことで認知の網を整える

偶然の出会いに備えて、認知の網を広くできるだけ密に張っておかなければ、出会いがあっても活かせません。

高校生にとっては、全ての教科に手を抜かずにちゃんと勉強することがこれに当たります。受験に必要かどうかは関係ありません。

何と出会うかがわからないだけに、今の必要だけに照らした判断で切り捨ててしまっては、偶然との出会いを遠ざけ、自分の可能性を狭めるばかりです。

好きだ嫌いだに関係なく、強制力をもって学ばせてくれる、体系的なカリキュラムを用意してくれるところなど他にはありませんよね。


❏ 検索すれば済むとの思い込みには落とし穴

インターネット上で検索すれば、様々な情報が得られるとの考えもありますが、知識が決定的に不足している領域では検索ウインドウに入力する文字列を思い浮かべることもできませんし、ページを開いても、要点を拾い上げることすらできないことも…。

ミレニアル世代がネットを見ながら情報を検索するとき、画面をスクロールする速さには驚かされますが、読み取るスピードが高まったというよりも、知っている文字を探しているだけで、知らないものに意識を向けない(スキップする)という脳の使い方が大きく影響しているように感じます。

関心のないものは、視野に入っても意識には入らないということでしょうか。

ネットでの情報検索には、認知の網を広げる機能は乏しく、知っているものを重ね塗りしたり、補足したりすることに止まることも少なくなさそうです。

こう考えると、昔ながらに、新聞を最初から最後までページをめくり、見出しだけでも目で追う習慣を持つことは大切だと感じます。新聞を読んでも専門知識は得られませんが、その入り口となる程度の知識は増えていきますよね。


❏ 社会に関わる場所をAIに奪われないためにも

様々な職業がAIなどに取って代わられるなか、生き残る可能性が高いのは「マニュアルに起こせない仕事 (正確には、スケールメリットが小さく、マニュアルに起こすコストがアウトプットに見合わない仕事?)」 であろうと思われます。

常に新しい創意を重ねて、未開の領域(フロンティア)を拓いていけば、マニュアル化(業務手順のプログラミング)に追いつかれることはありません。

変化と深化を絶え間なく続けていくには、新しい知識や情報に触れたときに、インスピレーションを得られるかどうかが重要です。

そのための準備が「認知の網」 を広く密に張ることなのではないでしょうか。

3年生になれば、進路希望に合わせて履修する科目を選ばなければなりません。ひとつを選ぶということは、別の何かを置いていくということです。

少なくとも必修科目には手を抜かせず、可能な限り、5教科7科目に挑ませることで、認知の網に残る穴を少しでも小さく止めることには、大きな意味があるのではないでしょうか。


❏ 外界の知識を直接扱わない言語系の教科でも

外界についての知識を直接ターゲットとしない英語は「認知の網」 とは関係なさそうですが、ちがった角度から大きな関りを持ちます。

それぞれの読み物は外界への知識と関心を高めるには絶好の材料を提供してくれますし、読んだものを起点に探究学習に発展することだってあり得ます。

音声認識や自動翻訳の飛躍的進化で、「聞くこと」「話すこと」 は学ばなくても日常生活レベルではことを欠かなくなるかもしれませんが、機械が翻訳できるということは、その語彙がもつ概念が日本社会に伝わった後です。

日本語サイトを通じてその情報を手に入れられたということは、すでに後塵を拝しているということです。時期のアドバンテージを失っているということですよね。

そもそも、翻訳が間違っているのに気づかず鵜呑みにしているようではどうしようもありません。

Top Ten Languages Used in the Web - June 30, 2016 によれば、インターネット上で日本語使用者が占める割合は、2016年の時点で3%に過ぎないそうです。

先端の情報に触れたり、違った視点から同じ現象や出来事を捉え直すには、他言語、特に英語の運用力、とりわけ批判的・分析的に読む力が、これまで以上に大切になりそうです。


■関連記事:


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(10件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
学び続けられる生徒を育てる
学校を卒業したあと、学びを続けていける生徒を育てることは、教科固有の知識・技能をきちんと身につけさせること以上に大切なことではないでしょうか。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/11/29 05:41
学力差、苦手意識、負荷調整
1 クラス内で生じた学力・学欲差への対処法1.0 クラス内で生じた学力・学欲差への対処法(序) 1.1 クラス内で生じた学力・学欲差への対処法(その1) 1.2 クラス内で生じた学力・学欲差への対処法(その2) 1.3 クラス内で生じた学力・学欲差への対処法(その3) 1.4 クラス内で生じた学力・学欲差への対処法(その4) 1.5 クラス内で生じた学力・学欲差への対処法(その5) 参照型教材を徹底して使い倒す2.0 参照型教材を徹底して使い倒す(序) 2.1 参照型教... ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2016/12/26 04:48
生徒が自分で気づけるように
教科学習指導で、その科目に固有の知識は獲得させようとする場合、一つひとつ丁寧に説明して理解させる、いわゆる「教える」 というアプローチもありますが、これとは対照的に、作業をさせたり、問いかけて考えさせたりする中で「気づかせる」 というアプローチがあります。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/03/09 07:42
学びの広さと深さ
昨日の記事「進学前に改めて考えさせたい、大学で学ぶことの意味」 でも書きましたが、自分が興味があることだけを掘り下げて学ぶだけでなく、えり好みせずに広く学ぶことも重要だと思います。 様々な専門を持つ方と触れ合うことでの気づきもあれば、単位を揃えるためにやむなく履修した授業で偶然みつけた「自分の専門・興味と、他の領域の関係性」 などもあるはずです。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/03/15 07:53
難易度からの得意・苦手の意識が受ける影響
教材や課題の難易度が上がると、その科目への苦手意識が高まることは容易に想像できますし、実際のデータでも確認できます。しかしながら、苦手意識の発生には様々な要因が絡み合っており、目標水準を引き上げたからといって、そのまま苦手を感じさせるというわけではありません。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/03/27 08:52
その宿題、本当に必要ですか?(その1)
先生の多忙も広く認知された社会問題になっていますが、生徒の忙しさもかなりのところまで来ているように感じます。「荷物を増やしても、学びが膨らむとは限らない」でも触れたように、副教材や授業外課題が大きく膨らんでいることも一因ではないでしょうか。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/10/02 06:59
その宿題、本当に必要ですか?#INDEX
宿題や課題は、生徒の力を伸ばそうという先生方の気持ちの現れであるため、ときとしてあれもこれもと与えてしまい膨張の一途をたどることもあります。こなしきれない量の宿題は、生徒に「仕上げきることの喜び」を学習する機会を奪う可能性もあります。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/10/04 06:00
中高一貫校での中高/前後期接続
中高一貫校の強みは、6ヵ年を通した指導計画のもとで中断なく指導の成果を積み上げられることにありますが、同時に、連続した指導期間が長くなるほどに抱え込むリスクもあります。その一つは、入学当初の高い意欲と終盤での進路希望実現への努力との間に生じる「中だるみ」が大きくなりがちなことでしょう。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2017/10/18 07:25
"丁寧に教える"ことを取り違えていないか
先日、ある先生とお話をしている中で、こんなご意見に触れることがありました。丁寧に教えていれば生徒は理解できるので、自分がその科目をできると誤解してしまう。進路を選んだ後になってその科目に適性がないことに気付いたのでは、入れたはずの大学にも進めなくなってしまう。丁寧に教えることが必ずしもよいこととは限らず、適性のなさに早めに気づかせ、ほかの進路を考えさせることも大事だ。確かに適性のないところで拘っていても袋小路が待っているだけかもしれませんが、この意見には何か見落としているような気がします。... ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2018/01/15 08:08
学んでいることの有用性に気づかせる
勉強は「役に立つからする」「役に立たないからしない」というものではありませんが、それでも「学んでいることが何かの役に立ちそうだ」と思えれば、身の入り方が変わってくることも確かです。手元のデータもそれを裏付けています。 ...続きを見る
現場で頑張る先生方を応援します!
2018/03/22 05:20

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文
認知の網の広げ方〜5教科7科目をきちんと学ぶ 現場で頑張る先生方を応援します!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる