対話により思考の拡張を図り、観察の窓を開く

授業内に生徒が活動する場を作る目的は、解くべき課題を与えて発動させた思考を「対話を通じた知識や発想の交換」で拡張させることに加えて、生徒の頭の中で何が起きているかを把握するための「観察の窓」を開くことにあります。

沈思黙考という言葉もありますが、一人の頭の中だけで考え得ることには限界があります。それ超えていくためには対話を通じた思考の拡張が欠かせません。また、生徒一人ひとりの思考を言語化させてみないと、どこで躓き、何がわかっていないのか観察/把握することもできず、どんな一手を打てばその先に進ませられるかの判断もつかないはずです。

授業内の活動性を高めることを自己目的化しては何にもならないのではないでしょうか。タイトルにある「対話により思考の拡張を図り、観察の窓を開く」ことにこそ目的を見出して授業内活動を設計しましょう。

2018/08/10 公開の記事を再アップデートしました。
(前回更新:2019年07月24日)

❏ 教室での対話は、生徒同士の話し合いに限られない

対話的な学びというと、生徒同士の話し合いや教え合い・学び合いがすぐに連想されるかもしれませんが、対話の相手は周囲の生徒だけではありません。

先生の発問に答える生徒の発言を拾いあげ、次の問いに繋ぐことで実現する「先生との対話」の成否は、学びの成果を大きく左右します。

まさに、「問い掛けの多い授業が良い授業」だと思います。

また、問いを立てながら教科書や資料を読むことで行われる「テクストとの対話」は、巨人の肩に上り、遠くを見渡すために欠かせません。

自力で教科書を読ませることは、巨人の肩へのよじ登り方を身につける訓練でもあり、その積み重ねが自力で学び続けられる生徒を育てていくことに繋がっていくはずです。


❏ 生徒同士の対話~解くべき課題を共有して

思考は、解くべき問いがあってこそ発動しますが、生徒同士の対話は、協働で解決しなければならない課題がなければ自己目的化してしまい、盛り上がりにもかけ、学びを深めることにも繋がりません。

ただ話し合わせるだけでは、意見や考えを各自が言い合うだけで終わってしまい、学びを深め/思考の拡張を図る必要が生まれないからです。

自分たちで協力し合って答えを作り上げなければならないという状況こそが、持てる知識を総動員して解決を図り、対立する意見に落とし処を見つけようとする動機を与えます。

また、対話で得た気づきを携えて生徒一人ひとりが課題に立ち返る機会を作り、その答えの仕上げにじっくり取り組ませましょう。

グループで話し合ってその場が盛り上がっても、深く確かな学びが実現するとは限りません。フリーライダーも出てきてしまいます。

 ■ 答えを仕上げる中で学びは深まる
 ■ 協働学習を"集団としての調和"で終わらせない


❏ 先生との対話~生徒の発言から次の問いに繋ぐ

問い掛けが多い授業が良い授業と書きましたが、一方的に問い掛けるばかりで、生徒の発言を拾いあげて次の問いに繋げなければ、思考を掘り下げ深める対話にはなりません。

発問で引き出した生徒の発言をどう扱うかは、授業者に求められる重要な技術だと思います。

思考の拡張と深化を図るには、生徒が導いた答えに対し、「どうしてそういう答えになった?」「別の考えを取らなかった理由は?」といった具合に、思考のプロセスに焦点を当てた問いで返すことが重要です。

普段の授業を振り返ってみたとき、先生からの問い掛けが一歩踏み込んで考えるきっかけになっているでしょうか。


❏ テクストとの対話~巨人の肩の上に立つ

高大接続改革では、新テストの試行問題に見る通り、「読んで理解したことをもとに考えたことを表現する力」がこれまで以上に試されます。

単元内容を先生が丁寧に説明して理解させるだけでは、その力は育ちません。解くべき課題を与えた上で、解決に必要な知識や理解、考え方を教科書や資料に当たって自力で獲得させることの繰り返しが必要です。

ただ読ませても、表面をなぞった理解に止まってしまいます。眼前の課題を解決するという目的のもとでテクストに当たらせてこそ、深く考えながら読むことが促されます。

問いを立てることは、すなわち思考することです。「どうしてこう言えるのか」「この条件/パラメータが違ったらどうなるか」など、問いを立てながら読む習慣と方法を身につけさせましょう。

 ■ 教科書をきちんと読ませる
 ■ 参照型教材を徹底して使い倒す
 ■ 生徒に問いを立てさせる


❏ 観察の窓~思考力を鍛えるなら思考過程の観察を

以前の記事で書いた通り、「活動させるのは観察のため」です。黙っている生徒の顔をいくら覗き込んでも、頭の中は見えてきません。

如上の3つの対話のうち、生徒同士の対話や先生との問答は、生徒が自分の考えを言葉にして発しているわけですから、生徒の頭の中で何が起きているか、どこで躓いているかを把握する絶好の機会です。

期待通りの答えが返ってきたか、真面目に話し合いに取り組んでいるかにではなく、どのように思考しているかに注意を向けましょう。

テクストとの対話でも、教科書や資料のどこを見ているか、読みながらどんな行動を取っているかに着目すれば、自力で不明を解消する方策と習慣をどこまで身につけているか把握することができるはずです。



"主体的、対話的で深い学び" は高大接続改革と次期学習指導要領を読み解くときのキーワードですが、ただ対話を増やせば良いというものではありません。「対話により思考の拡張を図り、観察の窓を開く」という目的を踏まえて授業内に3つの対話をバランスよく作り出すことこそが思考力を磨く授業をデザインするときの肝であると考えます。

■ご参考記事:
  1. 自力で学ぶ力を育むのに重要な、最初に選ぶ”対話の相手”
  2. 活動性が苦手意識を抑制する機能とその限界
  3. 生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発)
  4. 対話によって学びはどこまで深まったか
  5. プレゼンテーション力より質問力
  6. コミュニケーション・ツールとしてのICT
  7. 対面以外の環境で実現する対話的な学び


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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