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zoom RSS PPDACサイクルを用いた課題研究(後編)

<<   作成日時 : 2016/11/08 05:13   >>

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昨日の記事から引き続き、課題発見や課題解決を行う枠組みの一つである、PPDACサイクルを用いた課題研究について考えます。

PPDACサイクルについての詳細は総務省統計局が開設している 「なるほど統計学園高等部」というWEBサイトに譲りますが、簡単に言えば、
  1. Problem(問題): 問題の把握と明確化
  2. Plan(調査の計画): 研究計画づくり、不足する知見の補完
  3. Data(データ): データの収集・整備、統計表の作成
  4. Analysis(分析): グラフの作成、問題点の分析
  5. Conclusion(結論): 分析結果の解釈、レポートの作成
という5つのフェイズで構成されした、統計的な理解を用いる課題解決アプローチのひとつです。

前稿は、日常生活で感じた疑問から、
    「人を引き付ける文章とは何か」
    「わかりやすい文章とはどういうものか」
という最初の問いを立てて、わかりやすい文章とわかりにくい文章を集めて比較するという研究の方針を打ち出すところで中断しました。

問いを立てるのが、Problem(問題の把握と明確化)という第1フェイズに当たり、先行研究も参考にしながら「どんな方法で答えに近づこうか」と考えるのが第2フェイズであるPlan(研究計画づくり、不足する知見の補完)に当たります。


❏ データの収集と整理

インターネットという巨大な「書庫」を利用してサンプルになる同一のテーマを扱った文章を集めたとしても、各々のサンプルに「読みやすさ」「惹きつける度合」というパラメーターを設けないことには、客観的な分析や考察に進めません。

研究する人が自分の感覚や主観で、わかりやすさや惹きつけられる度合を判定しては、説得力に欠けますよね。

わかりやすいとフラグを立てた文章に対して、他の人も同じように感じてくれないことには、土台が崩れます。

最小限、一定以上の人数の協力者(被験者)を集め、あらかじめ用意しておいた複数の文章(サンプル)について読みやすさや面白さを評価してもらう必要はありそうです。

もう少し本格的にやるなら、被験者が各サンプルを読み終えるまでの時間を測定し、内容をどこまで理解しているかを読後のテストで確かめるなどの方法もあるでしょう。

精度の高いテストを作るのは高校生にはさすがに無理となれば、所要時間や被験者が返り読みをした回数をカウントするなど、他の方法を考えましょう。


❏ 分析に向けた準備

一定数の被験者による評価結果が揃ったら、評価が二分するようなサンプルを除外して、「わかりやすい群」と「わかりにくい群」とに分ければ、分析の準備が整います。

そのまま計画通りに次のフェイズに進んでも良いですが、方向転換し、「文章のわかりやすさや面白さの感じ方にどうして個人差が現れるのか」 という新しい問いを立てる生徒が出てきてもウエルカムです。

最初に思い浮かんだのよりもっと強く「答えを作ってみたい」 と思える疑問が浮かべば、それの答えを作り出すことにテーマを切り替えるのは妥当でありむしろ好ましい判断でしょう。

興味を追求していれば、その先に新たな興味が生まれるのは当然です。

以前に決めたことに捕らわれて、新たな可能性に手を付けず見過ごす必要はありません。


❏ 定量的に比較考量できる形に変換する

分析の対象とするサンプルが揃いましたから、次はどのような視点で比較考量するかを考えます。

一文の長さや段落中のセンテンス数、漢字の割合に加え、句読点間の文字数なども、両者を分ける要素に含まれそうです。

ワープロソフトの解析ツールを使って、サンプルを数値化するという方法を思いつきたいところです。

得られた各数値と先に算出しておいた「わかりやすさ、面白さ」の評価値との相関をとったり、散布図に描き起こしたり、箱ひげ図で比較してみて、あれこれ考察します。

ここは数学の授業で勉強した統計の知識を駆使できるかが問われる場面ですね。

また、主張、本論、例示、反論の想定、ディスコースマーカーの適正使用など、国語の授業に学んだ文章構成に関する知識も活用すれば、構造上の要件を各サンプルがどこまで満たしているかを数値化し、パラメーターとして利用することも出来そうです。

文章という非定量のサンプルを、定量的に捉えてデータとして扱える形に変換することが、統計的手法を適用するための準備です。

以前の記事でご紹介した、「ある映画作品群を歴史として振り返り、そのテーマや登場人物像の変遷を辿る中、分類軸を立てて考察に臨んだことで社会の価値観の変化に客観的に迫ることができていた」というケースが思い起こされます。


❏ 仮説を立てるのはここまで来てから

面白さやわかりやすさにを分けているものが何であるかの見当は、前段までの作業(統計的な処理と思考)までにある程度ついているはず。いよいよ、それらを元に仮説を構築する段階です。

仮説という言葉を使うと何やら難しそうですが、ここはシンプルに最初に立てた「わかりやすい文章とはなにか」という問いに対する答えと捉えても良いのではないでしょうか。

探究活動の入り口はあくまでも「疑問を問い(=Problem)に書き起こすこと」であり、仮説はデータを集めて分析してから立てるもの、考えるのが好適です。

最初の段階では、仮説を「予測」するだけだということを生徒にもしっかり理解させないと、探究という活動のハードルが高くなり過ぎ、スタートで成立しなくなります。


❏ 結論を導く前に、仮説を検証

仮説の妥当性は、他のサンプルをうまく説明できるかどうかで検証させましょう。

分析に用いたのと別の文章を用意し、仮説を適用した場合に予測される「わかりやすさ」の評価と、再び被験者に協力してもらって得た評価とを比較し、十分な説明力を持つかを検証してようやく結論を出せます。

別のサンプルを用意するほかにも、文章そのものに手を入れて、比較実験用のサンプルに加工することもできます。

先の例でいえば、ディスコースマーカーを外してみたり、句点を足したり外したりする実験で検証してみても面白そうですよね。

仮説の妥当性が検証出来たら、いよいよグラフを描いたり、説明文を起こしたりしてレポートをまとめる段階です。

この時点で、すでに生徒は十分に考察を重ね、データも揃っていますので、単なる調べ学習に終わったときとは仕上がりも全く違ったものになるはずです。


❏ 方策や手順に習熟するまではグループ内で支え合い

実践を通じて探究の型を学ばせる必要があるということは、活動に臨む段階で生徒は自力で探究活動を進めるだけの準備が整っていないということです。

研究計画を立てるときも、データを見て考察するときも、個人の発想だけでは限界はすぐにやってきます。

話し合いの中で知識や経験を交換し、発想を膨らませましょう。

そのためにはグループで研究に取り組ませるのが好適ですよね。中発想は協働の中でこそ膨らむからです。

あまり大人数になってもフリーライダーを増やすばかりですし、大人数のコミュニケ―ションの難しさもありますが、人数が少なくては発想の交換も活発になりません。

生徒の経験値などの状況にもよりますが、最初のサイクルでは3人〜4人くらいのグループサイズが妥当でしょうか。


課題研究の成果をどう評価するか」 に続く。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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