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zoom RSS 探究型学習(課題研究等)の成果をどう測るか

<<   作成日時 : 2016/11/09 08:19   >>

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課題研究などの探究型学習に限りませんが、何かに取り組ませたら、きちんと評価をする必要があります。

できるようになったことをたな卸することで生徒に自らの成長を自覚させるとともに、足りなかったものに気づかせて次はどうすれば良いか展望を立てさせることがその目的です。


❏ 探究方策の獲得に焦点を当てた評価を

評価は、目標に照らして行うものですから、まずは何を目指していたのか、指導する側が明確にしておかなければなりません。

大学院や研究機関での論文であれば、研究内容そのものの価値が問われるのでしょうが、高校での探究学習は成果よりもプロセスに焦点を当てるべきだと思います。

例えば、PPDACサイクルに基づいて探究活動を行わせたなら、
  • 疑問に感じたことを問いに立てる
  • 疑問を解明する調査方法を立案する
  • 適切な方法で十分なデータを集める
  • データを分析して仮説を立てる
  • 仮説の妥当性を検証する
  • 結論を導き、他者に伝わる表現を与える
といった点に着目して、適切な学習過程を踏んだのか、各フェイズで求められるスキルや資質、姿勢の獲得が進んだのかを評価すべきです。


❏ 教える側で評価観点と評価基準を共有しておく

活動に取り組ませる前に、まずは教員間でこうした評価観点や基準をきちんと共有しておく必要があります。

公平な評価をするということだけではありません。評価というものは、すべからく育成のために行うものであり、評価基準が妥当性を欠けば、きちんとした指導・育成ができないからです。

評価観点等の共有を図ろうとすれば、指導に当たる先生方の間でおのずと不備の洗い出しやより良いものへのブラッシュアップに協働の機会が生まれるはずです。

生徒だけでなく、先生方の側でも、知恵と経験、発想を交換し合ってより良いものを作り出したいものです。

最初のトライからうまくいくはずもなく、実施を重ねる中で継続的に改善を図る必要があるのは言うまでもありません。


❏ 生徒自身にもあらかじめ評価方法を知らしめる

また、生徒に対しても評価基準を示しておくことが肝要です。

どのような方法・観点で評価されるかを知っておけば、それに照らして一つひとつのフェイズにどう取り組めば良いかを生徒は認識できます。

評価規準を書き出すことは即ち到達目標を明示することであり、それはすべての教育活動に当てはまることです。

どんな形であれ、探究をどう進めるべきか一定の型/探究活動の作法を生徒に示しておくことで、どの部分はOKで、どこに改めるべき課題があるかを切り分けられられます。


❏ 最終結果ではなく中途段階で各フェイズの評価を

前稿までに例示したケースでは、PPDACサイクルを利用していましたが、探究のフレームワークはこれ以外にも色々あります。中には、学校で独自に「探究の手引き」 を作っているケースもあります。

探究の入り口から仕上げまで一連の流れを一気に進めることはありませんので、各フェイズをパート練習のように扱うことにも一定の合理性がありそうです。

アイデアを出し合うときに、KJ法やマインドマップといった情報整理の手法が上手に使えたかどうかに焦点を当てて、その時々で評価をすることもあります。

KJ法を使っても、単にグループ分けしかできないときと、入れ子構造や表層での現象と背景の要因を区別できているときとでは大違い。

その違いを評価とフィードバックを通じて生徒に理解させることも重要な指導目標です。


❏ 仕上がったレポートやプレゼンでの評価だけでは…

探究活動の仕上がり(レポートや成果発表)だけを見て、評価をしていては、問題の切り分けができません。

探究自体はでたらめだったのにプレゼンテーションスキルでつじつまを合わせただけのものと、プレゼンはお粗末だがデータの収集・分析には目を見張るものがあるものとを、総合評価で一括りにしては…。

これでは、生徒が自分の探究活動を振り返る事すらできず、次に向けた課題形成は遠のくばかりです。

どのフェイズに不足があったか、どこにオリジナリティや優れた考察が見られたかを切り分けられるようにすることが、探究活動の評価を考えるときの肝であると考えます。

繰り返しになりますが、高校での探究活動は、学ぶ方法/新たな知を生み出す方法を学ぶための学習機会です。

結果ではなく、探究活動の中で生徒が辿ったプロセスや考案した方法そのものを評価するようにしたいものです。


❏ 探究活動が、自分の将来と向き合うことに繋がったか

探究活動は、学び方を学ぶと当時に、学ぶことへの自分の理由や動機を作る活動でもあります。

学びを深めていけばその分だけその領域への興味は広がります。

探究を終えたときに、次は何を明らかにしたいか、次の機会にはどんなことを試したいかを「意思表示」させることは多いと思います。

その意思表示がどのくらい具体性を持ち、それまでの学びとの関連がどこまで強く見られるかなどにも注目しましょう。

形だけの意思表示なのか、探究を通じて具体的で強い学びの動機を得たのかを見極めていく必要があります。

しばしば見かける「たいへんだったけど思ったより面白かった」 では少々残念ではないでしょうか。


❏ 課題研究に取り組む前と仕上げた後での変化に着目

さらに一歩踏み込んで、探究を通じて考えたこと、導き出したことをもとに、当事者としての覚悟や具体的な行動に結び付く意思を持つことができたら言うことなしですよね。

そもそも、何かを明らかにすることの目的は、その後の人生において、より良い選択をし行動を好ましいことに改めることにもあるはずです。

地域社会が抱える問題を扱ったなら、コミュニティの活動に参加する意欲や姿勢も膨らむかもしれません。

もし、そんな変化が生徒の日常に現れたとしたら、ここでの課題研究はとても大きな意味を持ったと言えるのではないでしょうか。

課題研究に取り組む前と仕上げた後とで、提出して返却された紙の束が手元にあるかどうかの違いしかないのでは、多くの時間とエネルギーを投じた意味も薄れそうです。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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