考査問題における得点集計(集計の取り方と活用法)

模擬試験もそうですが、定期考査の役割はその時点までの学習の成果を測り、ゴールに近づくための課題形成を図ることにあります。何が足りていないのか、正しく検知できる問題が必要ですが、せっかく検知した課題も「総合点」 で丸めてしまっては、表に出てきてくれません。


❏ 初見の問題でしか試せない学力

授業で学ばせ、理解させたことをそのまま出題してみても、「生徒が正しく覚えたかどうか」 を測るだけであり、「理解しているか、使えるようになっているか」 は確認できません。

パフォーマンスモデルとコンピテンシーモデルという言葉が使われだしたPISA以降、求められる学力像ははっきりと変わってきてるように思えます。

定期考査でも、知識の獲得ではなく「活用」 に焦点をあてた出題を一定の割合で含んでおき、その部分の得点を、「覚えているか」 を試す部分と分けて集計しないと、学び方・教え方の課題が特定できない状況に陥りそうです。


❏ 測定したい学力ごとに集計を分けておく

ただでさえ忙しい中で、採点業務にそんな手間は加えられないというご意見ももっともですが、主旨の異なる設問は得点を分けて集計することで、課題の所在が特定しやすい環境をつくりましょう。

採点しながら感覚的に手応えを確かめえることはできますが、記憶はどんどん上書きされてしまいますし、データとして残らないと他のクラスとの比較(相対化)もできません。

生徒にとっても、総合点だけでは自分の課題に気づけず、ゴールに接近/到達する可能性が低くなるのではないでしょうか。

下のグラフは、定期考査で既習内容の理解・定着を試す問題を70点分、初見の文脈で知識の活用を試す問題を30点分出題したときの、あるクラスの得点分布です。前者での得点を横軸に、後者の得点を縦軸においています。
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❏ 座標面上の位置から、個々の生徒の課題を特定

このグラフを答案返却時に配布する採点講評に掲載して生徒の目に触れるようにすれば、生徒は散布図中で自分の位置を確認できますよね。

近似線との相対位置から今後力を入れるべき方向を探ることもできるほか、縦軸・横軸の「中央値」で座標面を分割すれば、「やり直し補習」 に参加させる生徒と「発展問題演習」 を受けるべき生徒を峻別するのにも使えそうです。

既習問題はOKでも初見問題はNGという場合、予習で自分の答えを作ってみることなく与えられた答えを覚えることで済ます、誤った学習スタイルを固めているかもしれません。

逆に、初見問題で示すパフォーマンスが既習問題で発揮できない場合、以前の貯金で点数を稼いでいるだけかも。貯金はじきに失われ、赤字転落が危惧されます。


❏ 位置で割り出した課題に応じた助言と頑張りへの評価

もちろん、具体的に何をしたら良いか判断がつかない生徒もいますから、採るべきアプローチは示さなければなりません。

採点講評内の記事で示してもよいし、シラバスや授業開きで配ったプリントに該当するものがあれば、それを参照させても良いと思います。

平均点だけであれこれ言われても、生徒一人ひとりにピンとくるアドバイスにはなりませんが、如上の方法であれば、個々の課題に寄り添う助言を届けられそうです。

回次を重ねれるなかで、近似線のはるか下方にいた生徒が、近似線を超える位置に移動してきたら、学びのスタイルが好適なものに変化してきたことを本人も確認できるのではないでしょうか。


❏ 散布図の形をクラス間比較で、領域別の優良実践を探す

教える側での利用法もあります。如上のグラフをクラスごとに作成してみると、分布の形がまったく違うこともあります。A先生が担当しているクラスとB先生の担当クラスとで、近似線の位置が違うこともあろうかと思います。

比較できる状態にしておくことで、より好適な指導法の所在にあたりがつけられれば、互いの方法を学ぶことで学年あるいは学校全体での指導法改善が進むはずです。

当然ながら、その改善の恩恵を受けるのは生徒であり、それぞれの先生が自分のやり方しか知らないでいては勿体ないのではないでしょうか。

如上のグラフを作るのは、Excelでひな形を一度作ってしまえば、あとは数字を打ち込むだけなので、手間は普段の業務と変わりません。つかうフォーマットが違うだけです。


 「考査問題に使う初見材料をどこから調達するか」 に続く


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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