考査問題に使う初見材料をどこから調達するか

新課程への移行で、獲得させた知識・技能が「生きて働いているか」を確かめる必要性が高まりました。教室で学ばせたことをしっかり記憶し答案上に再現すれば丸がもらえる問題だけでは、その要件を満たせず、初見の材料(本文や資料)で作られた問題を前に、どの道具(知識や技能)を使い、どのように答えを作るかを考えさせることになります。

従来通りの定期考査ならば、その材料は教科書や副教材に求めるだけで十分でしたが、今後は、授業では扱わなかった材料を揃え、生徒が獲得している単元固有の知識や技能と、それらを獲得する過程で身につけた能力(言語・数量・情報の各スキルや思考力)を駆使すれば答えを導けるような問題に仕立てていく必要があります。

問いの作り方は、新しい学力観への対応をしっかり取っている意欲的な大学などの出題からも学んでいけますが、初見の材料をどのようにして調達するかも、喫緊の課題として考えていかなければなりません。

2016/11/16 公開の記事をアップデートしました。

❏ 既に学んだ材料では、どんな問い方をしたところで

既習の材料で作った問題では、授業で説明してもらったことをちゃんと覚えてさえいれば、問いに答えるのに、改めてその材料(本文や資料)を読む必要すらないこともしばしばではないでしょうか。

教科書に載っていたことなら、教室でしっかり考えさせたり、説明を聞かせたりして細部に至るまで十分に理解させていることでしょうから、その中に新たな問いを立てるのは至難の業です。

教科書で既に勉強した英文で和訳を求めても、生徒はその内容や訳文を覚えているでしょうし、内容一致文選択や空所補充もほぼ無意味です。内容説明などの問題でも同様です。

教科書を使って学ばせた、文や段落の構造を理解したり、語義を特定したり、含意や省略を見抜いたりするときの思考を、他の文脈にも正しく適用できるかどうかを試すには、初見の材料で作った問題が必要です。

もし、生きて働くものとしてこうした知識や技能が獲得できていないことを見逃してしまっては、後で困るのは他ならぬ生徒本人です。

設問になりそうな箇所を、授業では敢えて触れずに「スルー」し、考査の出題のためにとっておくのも姑息な感じがします。そもそもそれでは教室での学びが不完全なものになってしまいます。


❏ まずは、大学入試問題から探すのが効率的

とは言え、定期考査の問題とするのに相応しい内容と難易度を備えた初見の材料を揃えるのは容易なことではありません。

単元で学ばせた重要項目をキーワードにネットを検索すれば、該当する記事は簡単に見つかるでしょうが、読解に必要な前提知識が生徒の持つものを大きく超えていたり、主張に偏りがあったりと、定期考査の出題に好適なものはそう簡単には見つかりません。

これに対して、大学入試問題や各種検定の問題であれば、その出題者が選び出した「高校生に与えるのに好適なもの」が揃っているはずです。

見つけた材料は、その場ですぐに問題に加工する必要はありませんが、後で必要になったときに容易に探し出せるように、どの単元に該当するか、どんな内容かなど、メモを加えてからストックしておきましょう。

様々な事業者が市販/公開している入試問題データベースを利用する手もありますが、ひと通り目を通して如上の「検索タグ」を自分でつけておかないと、ピンポイントで狙った通りの材料は探しだせません。


❏ 見つけた良問をゴールに、授業を設計するという発想

授業を進めながら、次の定期考査で使う材料を並行して探すのは大変です。作問の期限が迫る中で、好適な材料が見つからなければ焦ります。

教科書で学ばせた知識や理解と、新たなに見つけた材料を理解するのに必要な事柄がマッチせず、面白い材料なのにテスト問題にしようと思ったら、注釈を山ほどつけなければならないということも多々あります。

ここでは逆転の発想を持つのが良いのではないでしょうか。

出題研究などの「材料集め」を進める中で、良いものを見つけたら、それを理解するのに必要な事柄を、その問題を実際に課すまでの期間で、生徒に身につけさせていくという発想です。

足りないものが単なる知識であれば、それらをリストアップして、定期考査までに生徒に自力で調べて勉強させておくという手もありますし、いっそのこと、「辞書や用語集などの持ち込み可」という形にしても良いかも…。(cf. ノート持ち込み可の定期考査がもたらすもの

大学の過去問をそのまま考査問題に転用する場合も、出題研究を進める中で見つけた「こういう問題を解けるようにさせたい」と思える問題はどのタイミングで生徒に挑ませるかを先に決めてしまうのも一手です。

解くのに必要なことがらは、チャレンジさせる時までに、日々の指導の中でじっくりと身につけさせていくという発想を持てば、授業や考査に採り入れる問題の選択に自由度がぐんと広がります。

 ■ 入試問題を授業の教材に使うときに


❏ キーワードで検索して、同一テーマの別文章を探す

今後、複数テクストの比較で試す「読解力」を鍛えたり、評価したりする必要性も高まってきますが、そこでも初見の材料のストックは欠かせないものになります。

大学等の出題例だけでは、なかなか好適な材料が見つからないこともありますので、日々の読書の中で材料を集めるのに加え、インターネットという巨大書庫も上手に活用したいところ。

インターネット上でキーになる単語や語句で検索すれば、教科書で扱ったのと似たテーマの文章や資料を見つけるのはそれほど困難ではないはず。別の視点や立場から書かれている記事は「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」のにも好適な材料になるはずです。

一方の筆者が他方の記事にどんな意見を言うかも考えさせてみたいところ。生徒にどちらの立場を取るかを選ばせて、対立する相手を説得したり、落としどころを探させたりすると、かなり高度な力も養えます。



本気で教育改革に取り組もうとする大学では、新しいタイプの意欲的な出題が多々見られます。出題研究をこれまで以上に充実させることで、問い方を学ぶと同時に、使い勝手の良い材料を集めていきましょう。

入試問題にざっと目を通すだけでも先生方の負担は小さくありません。お一人で取り組むだけでは材料集めの効率も高まりません。他の先生方とも協力し合い、好適な材料は互いにシェアしたいところです。

■関連記事:
  1. 出題研究を通して"問い方"を学ぶ
  2. 学びを深める、問いの立て方とその使い方
  3. 単元ごとに設定するターゲット設問
  4. 指導目標と指導方法が変わったら定期考査の問題も
  5. 考査問題の妥当性を評価し、最適化を図る


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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