考査問題に使う初見材料をどこから調達するか

学力観が、「パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへ転換」 しつつあることを踏まえると、記憶と再現で対応できる問題と初見材料を前にどの道具を使って料理するか判断させる問題とをバランスよく出題することは、今後ますます重要性を増すはずです。


❏ 一度見たことがある材料では、工夫にも限界が

昨日の記事で、考査問題でも既習内容の理解と定着を試す問題とを切り分けて、初見の問題/文脈の中で知識の活用を試す問題を課し、得点集計も分けるべきだとのご提案をいたしました。

既習材料をもとに起こした設問では、正解を記憶しただけの状態と、そこでの知識を使いこなせるようになっている状態とを峻別できません。

教室で習ったことのある英文で和訳問題で正解を書いてきても、わからないまま訳を覚えていだけの可能性も否定できません。理解できていないことを見過ごしては、あとで困るのは生徒本人です。

記憶と再現で対処可能な出題を続けることには、生徒の学力観をゆがめ、「とりあえず覚えてしまえばいいんでしょ」 という姿勢を許容するリスクも伴うのではないでしょうか。


❏ まずは、大学入試問題から探すのが効率的

とは言え、考査に相応しい内容や難易度の初見材料を整えるのは容易ではありません。

単文ベースなら、多少陳腐な感じを我慢すれば辞書やコーパスを利用すれば十分に用が足りますが、長文となるとちょっと。ほかの教科・科目でも、教えたことを別の角度で扱っている材料を見つけるのは一苦労です。

日頃から大学入試問題等の出題を研究しておき、手持ちの材料を集めておくのが一番の早道です。

大学の先生が一度フィルターに欠けているだけに、他の方法に比べて、好適材料と出会う確率がグンと上がります。


❏ 一度は通して解いておかないと、いざというとき探せない

様々な事業者が市販/公開している入試問題データベースを利用する手もありますが、あらかじめ自力で解いておかないと、検索機能だけではピンポイントでほしい問題を探しだせません。

入試問題にざっと目を通すだけでも結構な手間がかかります。あまり使えない問題を除外する最初のフィルタリングは同僚の先生と協力して行い、そこで残った問題だけじっくり研究するというやり方も取り入れていきたいものです。


❏ 見つけた好適問題をゴールに、授業を設計するという発想

逆転の発想もあります。教科書を教えて、それに合致する問題を探そうとするからたいへんな苦労が生まれます。

出題研究を進める中で、「こういう問題を解けるようになってほしい」 と思える問題を見つけたら、解けるようになるために必要なことを教科書を使って学ばせていくという発想です。

昔からよく言われる「教科書を教える」 vs 「教科書で教える」 の違いです。教科書を教えることと、考査で学びの成果を測ることが相互に深く関連付けられるのではないでしょうか。

生徒に課したい良問を見つけたら、考査だろうと講習だろうとどのタイミングで生徒にチャレンジさせるか、その場で決めてしまいましょう。

それを見越して、問題が要求していることを授業内外の学びで消化していけば、今教えていることがどんな意味を持つかもより明確なイメージが持てます。

出題研究の中で良問を見つけたら、埋もれさせないように、その場で指導カレンダー上に配置しておくのが肝心です。


❏ キーワードで検索して、同一テーマの別文章を探す

また、英語以外の教科では使いにくい方法ですが、インターネットという巨大書庫も材料探しには積極的に使いたいものです。

インターネット上でキーになる単語や語句で検索すれば、教科書で扱ったのと似たテーマの英文を見つけるのはそれほど困難ではありません。

語彙や背景知識が共通でありながら切り口が異なる英文です。教材や考査の材料としていろいろな使い方ができそうですよね。

要約問題に仕立てるのもよし、ディスコースマーカーを空所にして「段落間の関係性を把握する問題」 にしても良よさそうです。主張部分を隠して、そこに入る文章を考えさせる英作文との融合も可能でしょう。

教科書と異なる立場で書かれた文章なら、賛否を表明させ、理由を述べさせるという問題もアリです。高大接続改革で出題が増加しそうな「考えさせる(=思考と判断を求める)問題」 の一つの候補になります。

そんな問題を用意し、且つ、生徒に挑ませた場合の正答率が正しく予測できていれば、実りの大きい授業になりそうです。


❏ 考査が変われば、教え方も学び方も変わってくる

生徒は考査問題に合わせて学習します。となれば、考査の出題を改めることが生徒に正しい学習観と学びの姿勢を作らせることに通じますよね。

次期学習指導要領では、「教育の強じん化(文科相メッセージ)」にあるように、思考・判断・表現の力に重きがおかれますが、定期考査でもそうした出題を増やしていくことで、学びに正しい方向性を与えたいものです。

本気で教育改革に取り組もうとする大学では、2020年を待たずに新しいタイプの出題に切り替えてくると思われます。過去の「新課程移行」 でも同じようなことが起きていました。

出題研究を着実に行うことで、問い方のヒントも、使い勝手の良い材料も着実に揃ってくるはずです。

2020年入試に臨む生徒は現在、中学校2年生。再来年の春には、高校の教室で授業を受けます。その時には、しっかり準備を整えて迎え入れてあげたいものです。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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