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zoom RSS 教科書をきちんと読ませる

<<   作成日時 : 2017/01/24 07:06   >>

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昨年のニュースで、「検定教科書の内容を中高生の半数近くが読み取れていない、内容を正確に理解できない可能性がある」 という研究結果が発表されて大きな話題になったのは記憶に新しいところです。教育現場では、言語能力の向上に様々な取り組みをしてきただけにちょっとショックな結果です。


❏ 日頃の学習で、教科書をきちんと読ませているか

学校の教室をお訪ねして授業を参観していると、教科書とは別にプリントが用意され、先生が丁寧に説明しながら空所を埋めていく場面をよく目にします。

プリントを使っていなくても、教科書などにかかれたことを先生が解きほぐしながら板書に展開して、生徒が一生懸命にノートに書きとっているのもごく普通の光景です。

でも、生徒が自力で教科書や資料集を読み、必要な情報を拾い上げて、自分なりに整理をつけていく姿はあまり見かけません。

生徒の手元を除くと、教科書はずっと机上に閉じられたまま。3学期になっても新品同様というのは一体どういうことなのか、改めて考えさせられました。


❏ 先生が肩代わりして、読解力をつける機会がない?

読解とは、文章などの連続型テキストや図表のような非連続型テキストから、必要な情報を拾い上げ、関連付けていくことですが、如上の風景のなかでは、そのプロセスを先生が肩代わりしてしまってはいないでしょうか。

教科書の内容を読み、わからないことがあれば参照型副教材(参考書)で調べ、自力で理解を形成していく訓練は、きちんと教室の中で積み上げさせたいものです。

生徒が卒業するまでは、丁寧に教えてあげることも、難しいところを肩代わりしてあげることもできますが、卒業と同時に「じゃあ、あとは頑張って」 では、生徒も困ってしまいます。

そもそも、自分が読めていない(=読解力がない)ことに気づいていないのかもしれません。


❏ 問題は、解き方に習熟すれば、読めずとも解けることが…

定期考査や模擬試験では、問題文が読めているから大丈夫だろうと考えるのは、ちょっと危険な気がします。

テストでは、問題の解き方に習熟していれば、正解できてしまうことも少なくありません。

解き方や単元の内容は先生が教えてくれたもので、関連知識もプリントで与えられ覚えていたら、「自力で読み解き、知識を体系づけて、内容を理解する」 という経験はあまりないはず。

出題範囲が限られたテストなら、「たとえ、読解の工程に未習熟でも、問題を解くことはできる」 というのも、あながち極論ではありません。

ときには、本文が何を言っているかわからなくても、問いや選択肢を手掛かりにして本文の内容にあたりをつけて正解できてしまうことだってありますよね。


❏ 教材を自力で読み解く機会を不用意に奪わない

そもそも、テストという「特殊な環境」 以外では、問いやそれに対する選択肢は与えられていません。読み解くための手がかりは本文だけ、ということです。

こうした、日常的に経験する普通の場面での読解力は、生きていくためにも欠かせないもの。

その貴重で有意なトレーニングの機会を、「丁寧な説明」「作り込まれたプリント」 で肩代わりしてしまうことには大きなリスクもありそうです。

誤解を招かないよう確認しておきますが、説明すべきところは丁寧に行うべきですし、プリントでの拡充や整理を否定しているわけでもありません。

生徒が自力で教科書や資料集、参考書を読んで理解すべき場面を奪わないようにしましょう、ということです。


❏ 能動的な読みに向かわせる実践例

読解力を高める機会は、すべての教科の学習活動、授業の中にあると思います。

最初は自力で読めない生徒もいるでしょうが、読めないからといってずっと肩代わりしていては、いつまでたっても読めるようになりません。
  1. 解くべき課題を先に与えておき、仮の答えを作らせてから、教科書、資料を自力で読ませる。
    目的意識さえ刺激しておけば、自分で読んで理解する力も補われます。聞かせるより読ませた方が早いし、返り読みもできます。できることはどんどんやらせる〜生徒の邪魔をしないことが、単位時間あたりの学びの量を増やす上でも望ましいのは言うまでもない。
  2. 地歴公民や理科でも、教科書の音読を経て、プリントの空所に埋める作業は自力で行わせる。
    生徒全員で教科書を音読する場面が繰り返されており、そこでは「目で見て、声を出し、耳で聞く」 という複数の感覚器を同時に使う活動が、内容の定着に非常に有利に働いている。音読後に行う解説の中では、ポイントになる箇所を、先生からの指示ではなく、問い掛けの形で拾い上げさせている場面も印象的であった。
  3. 英語や国語では、「問いを立てる/設問を起こす」 というタスクを与えて本文を読ませる。
    他人が作った問いは、たとえどれだけ洗練されたものであったとしても、生徒にしてみれば「んなこと、どうでもいいじゃん?」という場合もあります。「正解は何?」「それを覚えておけばいいんでしょ?」という姿勢にも、無理からぬものを感じます。ところが、文章や資料の中にポイントになりそうなところを探させ、問いに仕上げなければならなくなったら話は違います。
  4. 例題の解説は、基本的には生徒自身に読ませ、わからなかったら相互に教え合わせる。

これらはいずれも、様々な学校で拝見した授業実践です。教科の特性や単元の内容に応じて、アレンジしながら使ってみれば、もっと良い方法も生まれてきそうな気がします。

プリントの枚数が増えて、教科書を読まなくなるのでは、何か矛盾したものを感じます。副教材もボロボロになるまで使い込んでこそ、自分のものになるのではないでしょうか。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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