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zoom RSS 難易度からの得意・苦手の意識が受ける影響

<<   作成日時 : 2017/03/27 08:52   >>

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教材や課題の難易度が上がると、その科目への苦手意識が高まることは容易に想像できますし、実際のデータでも確認できます。しかしながら、苦手意識の発生には様々な要因が絡み合っており、目標水準を引き上げたからといって、そのまま苦手を感じさせるというわけではありません。

以前の記事「活動性を高めて苦手意識を抑える」 でデータを示してお伝えした通り、授業内活動には、苦手意識の発生を抑える効果があります。

教え合いや学び合いを通じて、互いの足りない知識を補ったり、解決法を一緒に考えたりすることで、「なんとかなる」 という認識を持てるからと思われます。


❏ 難易度をあげても、活発なやり取りがあれば

意識姿勢(得意か苦手か)を縦軸に、課題の難易度と授業内活動とをそれぞれ横軸において散布図を作ると、以下のようなグラフになります。
画像
中学1年1学期の国社数理英(n = 102)

近似線を描き、回帰式を表示してみると、それぞれ傾きを表す「回帰係数」 は、課題難易度が−0.65、授業内活動は+0.43であることがわかります。

回帰係数のプラスが大きければ、説明変数(=横軸)がプラスになるほど意識姿勢も大きくプラスに向かい、マイナスが大きければ、グラフは右下がりの傾斜を大きくするということです。


❏ 意識姿勢への影響度は学年を追って変化する

課題難易度と授業内活動が、意識姿勢にどのくらいの影響を与えているかを、回帰係数を用いて学年間で比較してみると、以下のような結果になりました。

画像
完全中高一貫校でのデータ(n = 765)

授業内活動からの影響は、多少の凸凹はあるものの、6学年を通して概ねプラスに働いています。

一方、課題難易度からの影響は、中学に入学して間もないうちマイナスはそれほど大きくありませんが、徐々にマイナスが大きく膨らんでいき、中間学年(特に中学から高校への接続期)で最大となり、その後、高2の後半あたりから回復し、3年後半でプラスに転じています。

この現象には様々な捉え方ができそうです。


❏ それまでのやり方が通用しなくなり、まともに影響を受けだす

中学に入学して間もない頃は、学習内容もそれほど高度化していないため、受験を通じて身につけていた学習方法だけでも通用するのかもしれません。

生徒が自分なりのやり方を持っていて、それで対処できる範囲であれば、多少難しいぐらいの課題には「チャレンジする意欲」 を維持できそうです。

入学当初の高い意欲と、入学者選抜で確保した一定の学力水準も下支えに役立っていると思われます。

その後、学習内容が高度し、また事象の捉え方も中学・高校らしいものが求められるようになり、従前の方法では通用しなくなると事情は変わってきます。

教え合い・学び合いなどを通じて、足りない知識や発想を補えなければ、事態はさらに深刻です。早いうちに、学習場面での協働性を身につけさせたり、「互恵意識で結ぶ学びのコミュニティ」 を形成する必要はここにもありそうです。


❏ 学習方法を確立できない科目は「切って」 しまう

終盤で、難易度からの負の影響が小さくなるのには、選択科目が中心になることも影響しているはずです。

進路希望実現という動機も「難しくても苦手とか言っていられない」 という意識を持たせるでしょうが、それ以上に「それまでの学習を通じて学び方を身につけていた科目しか選択していない」 という側面も否定できません。

逆に言えば、学び方を身につけられなかった科目を切ったことが、集団として捉えた場合に回帰係数のマイナスを見かけ上小さくしただけではないでしょうか。

「学習方策を確立できなかった科目には、学び続ける意欲を持てず、結果的に受験に使おうとは思わない」 というのは、想像に難くありません。

履修するかどうかは別として、結果的に切った科目についても、学び方を身につけさせ、学び続ける意欲を持たせ続けたいものです。

 ■ 認知の網の広げ方〜5教科7科目をきちんと学ぶ


❏ 与えられたものをこなし、当座の目的を達成するだけでは

不明が生じたときにどうすれば良いかを考える習慣と、難題に出会ったときに「わからない」 とあきらめるのではなく手持ちの知識を動員して何とかするという姿勢を育むことが必要です。

丁寧に一つひとつ教えるだけでは、如上の習慣や姿勢は育めません。

目先の課題を解決しようと自力で工夫を重ねる中で、自分なりのスタイルを作らせれば、負荷耐性 も高まります。

与えられたものをこなしているだけの間は、難度の変化からの影響をもろに受けるようになるのも、致し方ないところではないでしょうか。

生徒が苦手とする発想法や物ごとの捉え方を避けて、当座の目標を達成させることはできるでしょうが、この方策だけでは、「できないことを克服する」 ことには近づけないように思います。
  • できるようにさせたいことはどんどんやらせる。
  • やるべきことを与えたら、やり方は考えさせる。
ということを、日頃の学習指導の中で強く意識しておくべきだと思います。

 ■ 次のステージに向かう準備は整っているか


❏ 学習内容や学び方の変化を踏まえたオリエンテーション

学習内容が変われば、当然ながら、それまでの学び方そのものをアジャストしていく必要もあります。

今現在学んでいる単元の目標(=知識の獲得、理解の形成など)を達成すると同時に、次のステージに進んだ時に必要になる学び方(学習方策)を獲得させていくことにも、しっかり注力したいところです。

新しい学年を迎えたときや、学期の切り替わり、新単元に進むときなどの要所では、きちんとオリエンテーションを行い、学びに方向を与えていくことも必要ですし、生徒自身が一つ先のステージでの学びを常に意識できるようにしておく必要もあるはずです。

 ■ 学ぶ理由/自立した学習者 > 「学び方を身につけさせる」
 ■ 学力向上感、得意・苦手に成績が及ぼす影響は?


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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