次のステージに向かう準備は整っているか
年度末に差し掛かり、模試成績の検討会や成績会議が続く季節になりました。「前学年での躓きが原因となって成績伸長を妨げた」 という反省がなされるケースもたびたび目にしますが、反省は有効な対策を講じることに利されてこそ意味を持ちます。
この場面での対策は、大きく3つに分けることができると思います。
❏ 不足しているのは、知識・技能だけではない
ある時期に身につけるべき教科固有の知識・技能が欠落すると、その後の学習の大きな妨げになるのは明らかですが、それ以上に問題となり得るのが「学び方への未習熟」 だと思います。
学び方には、所謂、学習方策、課題解決工程、タスクマネジメントなどが含まれます。
これらに目を向けないと、その場でのケア(=不足知識を補わせる補習や再学習、多くは後手に回る)に終始し、根っこの問題を放置することになります。
捻挫したらシップが必要ですが、ねん挫しないような走り方や柔軟性を身につけるプログラムがなければ、同じことを繰り返します。
学び方への未習熟は、答案などの形で出てきたものだけでは窺い知れない部分を含んでいますので、模試や定期考査の成績といった結果学力だけ見ていても、見落とすものがあるのではないでしょうか。
普段の予習や復習でも、教える側が想定しているのとは違った(≒誤った)学び方をしていないか、折に触れて確認していく必要があると考えます。
❏ 目の前で「予習」 をさせてみてはじめて気づくこと
教室内で、つまり先生の目が届くところで、実際に予習をさせてみたり、課題に取り組ませてみたりすることではじめて見いだせる 「学び方における問題点」 も少なくありません。
英語で言えば、知らない単語が出てきたときに、構造に注意も向けないまま、辞書を開いて最初の太字しか見ないのでは、きちんと辞書を使って初見の英文を読めるようにはなりません。
未習語であっても、文脈(意味的なものではなく、並列・言い換えなど観察可能な構造的なもの)に照らして、およその意味を類推することにも、姿勢と方策を身につけていないのを放置するのも好ましくないでしょう。
日々の授業の中でも、発問と観察を通じても点検と育成はできますが、生徒一人ひとりが自力で学ぶときの行動を観察することで、さらに正確な把握ができると思います。
生徒がどこまでできるようになっているかを正確に把握することは、その先の指導の設計を最適化する上での前提条件です。
❏ できないことは、やらせながらできるようにさせる
ある時点で生徒にできないことを、「仕方がない」 と受け入れて(あきらめて?)、代替策を講じることで指導を成立させていても、いずれは「できるようになる必要」 があるのを先延ばしているだけです。
卒業後まで先延ばししては、十分な備えなしに、上級学校や社会に送り出してしまうことになります。
冒頭に並べた3つの対策のうち、2番目に置いた「不足しているものを補完するための指導機会、あるいは生徒自身がそれらを補い得る場面を整備する」 ことの必要性はここから生じるものだと思います。
授業内での指導を重ねることで十分に獲得させられるめどが立つならじっくりと構える戦略もありますが、どこかで集中的に補完を図る必要があるものもあるはずです。
両者をきちんと切り分けして、それぞれに相応しい指導計画に落としこんでいくことが大切です。
❏ 日々の学習に加えて、中長期にまたがるタスク管理も
日々の予習復習はそれなりにこなせても、長期休業期間中など、一定の期間を通して進める課題を計画的にこなしていけない生徒もいますよね。
タスクマネジメントは、
課題の履行率が低い生徒/おざなりにしてしまう生徒、とひと括りにするのではなく、弱点の所在を見極めるとともに、本人にも気づかせることが重要です。
「ちゃんと期限通りに提出しなさい」 というプレッシャーをかけたり、ペナルティを課したりするだけでは、前提となるスキルを欠いたままですから、状況は改善せず、いつまでも同じことを繰り返すだけかもしれません。
■高校生のタスク管理&スケジューリング
❏ 学びが次のステージに進むたびに、学び方を更新
授業開き/オリエンテーションでも書きましたが、学年が上がったり、長期休暇を挟んで新しい学期を迎えたりして、学びが新しいステージに進むときは、何はさておき、「その時点で生徒が何をどこまでできるようになっているか」 を把握することが大切です。
新入生を迎えたときは特に注意が必要ですね。身につけている学習方策は、その生徒が積み上げてきた学習のスタイルで大きく変わります。
他人が作ったプログラムに従うことで選抜を通過してきた生徒もいるかもしれません。自分なりの学び方を作り上げる中で「工夫の仕方」 を身につけてきた生徒とは、適応力に大きな隔たりが想像されます。
そもそも、小中学校で身につけた学び方のまま、上級学校に進んでもそのまま通用するとは限りませんよね。
先生方ご自身がどんな指導を展開しようとしているか、その指導を成立させるために「前提」 として考えていることは何かに照らして、生徒の学習行動を観察・評価しましょう。
入学試験でフィルタを掛けたのは、結果学力だけです。新しい教室に迎え入れた段階で、学び方そのものを観察し、これからの学びに必要なものとの差分を明らかにすることが、指導のスタートです。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
この場面での対策は、大きく3つに分けることができると思います。
- 対象の生徒が学習方策や汎用スキルをどこまで獲得しているか点検し、それを前提とした授業展開を策定する (指導計画の修正)
- 不足しているものを補完するための指導機会、あるいは生徒自身がそれらを補い得る場面を整備する (当座のケア/補完指導)
- 今年度の生徒に不足したものを明確にし、その獲得を次学年への指導における重点目標の一つに加える (次年度に同じ轍を踏まない)
❏ 不足しているのは、知識・技能だけではない
ある時期に身につけるべき教科固有の知識・技能が欠落すると、その後の学習の大きな妨げになるのは明らかですが、それ以上に問題となり得るのが「学び方への未習熟」 だと思います。
学び方には、所謂、学習方策、課題解決工程、タスクマネジメントなどが含まれます。
これらに目を向けないと、その場でのケア(=不足知識を補わせる補習や再学習、多くは後手に回る)に終始し、根っこの問題を放置することになります。
捻挫したらシップが必要ですが、ねん挫しないような走り方や柔軟性を身につけるプログラムがなければ、同じことを繰り返します。
学び方への未習熟は、答案などの形で出てきたものだけでは窺い知れない部分を含んでいますので、模試や定期考査の成績といった結果学力だけ見ていても、見落とすものがあるのではないでしょうか。
普段の予習や復習でも、教える側が想定しているのとは違った(≒誤った)学び方をしていないか、折に触れて確認していく必要があると考えます。
❏ 目の前で「予習」 をさせてみてはじめて気づくこと
教室内で、つまり先生の目が届くところで、実際に予習をさせてみたり、課題に取り組ませてみたりすることではじめて見いだせる 「学び方における問題点」 も少なくありません。
英語で言えば、知らない単語が出てきたときに、構造に注意も向けないまま、辞書を開いて最初の太字しか見ないのでは、きちんと辞書を使って初見の英文を読めるようにはなりません。
未習語であっても、文脈(意味的なものではなく、並列・言い換えなど観察可能な構造的なもの)に照らして、およその意味を類推することにも、姿勢と方策を身につけていないのを放置するのも好ましくないでしょう。
日々の授業の中でも、発問と観察を通じても点検と育成はできますが、生徒一人ひとりが自力で学ぶときの行動を観察することで、さらに正確な把握ができると思います。
生徒がどこまでできるようになっているかを正確に把握することは、その先の指導の設計を最適化する上での前提条件です。
❏ できないことは、やらせながらできるようにさせる
ある時点で生徒にできないことを、「仕方がない」 と受け入れて(あきらめて?)、代替策を講じることで指導を成立させていても、いずれは「できるようになる必要」 があるのを先延ばしているだけです。
卒業後まで先延ばししては、十分な備えなしに、上級学校や社会に送り出してしまうことになります。
冒頭に並べた3つの対策のうち、2番目に置いた「不足しているものを補完するための指導機会、あるいは生徒自身がそれらを補い得る場面を整備する」 ことの必要性はここから生じるものだと思います。
授業内での指導を重ねることで十分に獲得させられるめどが立つならじっくりと構える戦略もありますが、どこかで集中的に補完を図る必要があるものもあるはずです。
両者をきちんと切り分けして、それぞれに相応しい指導計画に落としこんでいくことが大切です。
❏ 日々の学習に加えて、中長期にまたがるタスク管理も
日々の予習復習はそれなりにこなせても、長期休業期間中など、一定の期間を通して進める課題を計画的にこなしていけない生徒もいますよね。
タスクマネジメントは、
- やるべきことをピックアップする
- 持ち時間を見立て、その枠内にタスクをレイアウトする
- (他の誘惑に負けずに)計画を実施する
課題の履行率が低い生徒/おざなりにしてしまう生徒、とひと括りにするのではなく、弱点の所在を見極めるとともに、本人にも気づかせることが重要です。
「ちゃんと期限通りに提出しなさい」 というプレッシャーをかけたり、ペナルティを課したりするだけでは、前提となるスキルを欠いたままですから、状況は改善せず、いつまでも同じことを繰り返すだけかもしれません。
■高校生のタスク管理&スケジューリング
❏ 学びが次のステージに進むたびに、学び方を更新
授業開き/オリエンテーションでも書きましたが、学年が上がったり、長期休暇を挟んで新しい学期を迎えたりして、学びが新しいステージに進むときは、何はさておき、「その時点で生徒が何をどこまでできるようになっているか」 を把握することが大切です。
新入生を迎えたときは特に注意が必要ですね。身につけている学習方策は、その生徒が積み上げてきた学習のスタイルで大きく変わります。
他人が作ったプログラムに従うことで選抜を通過してきた生徒もいるかもしれません。自分なりの学び方を作り上げる中で「工夫の仕方」 を身につけてきた生徒とは、適応力に大きな隔たりが想像されます。
そもそも、小中学校で身につけた学び方のまま、上級学校に進んでもそのまま通用するとは限りませんよね。
先生方ご自身がどんな指導を展開しようとしているか、その指導を成立させるために「前提」 として考えていることは何かに照らして、生徒の学習行動を観察・評価しましょう。
入学試験でフィルタを掛けたのは、結果学力だけです。新しい教室に迎え入れた段階で、学び方そのものを観察し、これからの学びに必要なものとの差分を明らかにすることが、指導のスタートです。