進路希望を調べるときは、前段階の確認も併せて
新年度を迎え、生徒一人ひとりの進路希望を調べる機会もあるかと存じます。調査票を配って、国公立か私立か、理系か文系かなど、現時点での希望を尋ねたり、大学名や学部・学科を挙げさせるのがよく見かけるやり方ですが、不用意な訊き方をすると、背後に潜む問題点を見落としたり、思わぬ弊害を招くこともありますので、要注意です。
❏ 選択の結果を訊くなら、選択のプロセスの前段階も確かめる
進路希望調査で、具体的な大学名や学部名が上がったとしても、きちんと向き合った結果か、あまり考えていないで書いただけなのか、見極めが必要です。
「未決定」 を選択肢に加えても、まだ全然考えていない場合と、考えた末に迷っている場合との区別はつきません。また、決まっていたとしても、そこに込める思いの強さ、本気度にも違いがあります。
具体的な進路希望が出来上がるのは、「大学に進んでどんなことを学んでみたいか、学んだことを通じて社会にどうかかわりたいか」 という問いに自分なりの答えができたときです。
学びたいことがあるということは、
これらについて、アンケートや面談で生徒に尋ねてみて、もし、きっかけやその後の具体化行動がないのに、進路希望だけやたらはっきりしていたら、進路意識を形成するプロセスをきちんと辿っていない可能性があります。
❏ 志望を文字にさせることで意識を固定してしまうリスク
興味があるものも挙げられず、学んでみたいことのイメージもつかないでいるのに、大学名だけがポンと出てくるのは、ちょっと変な話ですよね。
進路希望調査の提出期限が迫って何か書かなければならないからと、とりあえず思いついたものを書いてしまっている場合もあります。
思慮を重ねて選んだものであろうと思いつきで書いたものであろうと、一度文字にしてしまうと、それが何かの形で意識の中に固定して残ってしまうものです。
他の可能性に意識を向けなかったり、別の方向を見なくなったりすることだってあり得ます。
不用意に進路希望を尋ねて、用紙に記入させてしまっては、益がないばかりか害をもたらします。
大学名や学部名をいつ書かせか、進路指導計画に照らして好適時期を探る必要があるのではないでしょうか。
ある時期がくれば、模擬試験で志望校を記入しますので、その段階までは、如上の問いへの答えを見つけさせることを優先すべきと考えます。
❏ 伸びている実感に乏しいときに進路希望を訊くと…
進路希望調査というと、志望校(大学、学部・学科)を挙げさせるのが普通ですが、それは様々なことを考えた結果です。
どこを目指すのか選択を迫られたとき、「手が届きそうだと思える範囲」 にしか選択肢をイメージしない生徒も少なくありません。
自らの選択にまだ十分に向き合っていない段階で、とりあえずの希望をあたかも具体的な志望のように文字にしてしまったことで、自分の可能性をその範囲に限定してしまうことだってあり得ます。
これからの努力で自分がどこまで伸びるか予想のすべはないはずです。
勉強法の間違いに気づいて改めたときに、こちらの予想を超えて大きく伸びる生徒だっていますよね。
自らの学力向上を実感できないときに進路選択を迫られたら、自分の可能性を低く見積もったまま将来のイメージを描くのは無理からぬことだと思います。
■ 伸びている実感が、挑む意欲を支える
■ どこまで伸びるか見立てる
❏ 訊くべき事柄には順序や段階性がある
自分の可能性を見限らせず、視野を広く保たせて、自分の資質や嗜好にマッチした進路を見つけさせていくならば、いきなり具体的なことを答えさせるのではなく、他の方法がありそうです。
まずは、日々の学習や課題研究などを通じて、何らかの興味を持つこと/持ったことがあるかが、最初の質問かもしれません。
その上で、興味を起点にしてより深く、あるいは広く調べてみたことがあるというなら、興味はかなり強く、学びたいという気持ちの本気度も伺えます。
関連する書籍を読んでみれば、学問の先端やそれを研究している人や組織について知ることができるはずです。
こうしたことを、YES/NOや、「よくある~まったくない」 の尺度で聞いてみると、進路意識形成のプロセスをきちんと辿っているかどうか、ある程度は確かめられます。
より詳しいところは、面談での対話で掘り下げていくべきですし、如上の問いへの回答分布をクラスや学年といった集団単位で把握・比較すれば、指導の成果を検証するデータにも使えるはずです。
選択の結果を言葉にさせるなら、選択に至るプロセスもきちんと確かめたいものです。
算数のテストで、回答欄に数字を書かせても、正しく考えたかどうかはわからないのと同じです。それらしい答えを書いていても、きちんと考え、向き合った答えなのかはわかりません。
高校3年生になったら、志望理由を書かせて、選択の結果に向き合わせる ことの大切さもここにあると思います。
#2 「学部・学科調べに、学問探究という入り口を」 に続く。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
❏ 選択の結果を訊くなら、選択のプロセスの前段階も確かめる
進路希望調査で、具体的な大学名や学部名が上がったとしても、きちんと向き合った結果か、あまり考えていないで書いただけなのか、見極めが必要です。
「未決定」 を選択肢に加えても、まだ全然考えていない場合と、考えた末に迷っている場合との区別はつきません。また、決まっていたとしても、そこに込める思いの強さ、本気度にも違いがあります。
具体的な進路希望が出来上がるのは、「大学に進んでどんなことを学んでみたいか、学んだことを通じて社会にどうかかわりたいか」 という問いに自分なりの答えができたときです。
学びたいことがあるということは、
- 興味を持つようになった何らかのきっかけがあった。
- 興味の周辺をきちんと調べてみた。
これらについて、アンケートや面談で生徒に尋ねてみて、もし、きっかけやその後の具体化行動がないのに、進路希望だけやたらはっきりしていたら、進路意識を形成するプロセスをきちんと辿っていない可能性があります。
❏ 志望を文字にさせることで意識を固定してしまうリスク
興味があるものも挙げられず、学んでみたいことのイメージもつかないでいるのに、大学名だけがポンと出てくるのは、ちょっと変な話ですよね。
進路希望調査の提出期限が迫って何か書かなければならないからと、とりあえず思いついたものを書いてしまっている場合もあります。
思慮を重ねて選んだものであろうと思いつきで書いたものであろうと、一度文字にしてしまうと、それが何かの形で意識の中に固定して残ってしまうものです。
他の可能性に意識を向けなかったり、別の方向を見なくなったりすることだってあり得ます。
不用意に進路希望を尋ねて、用紙に記入させてしまっては、益がないばかりか害をもたらします。
大学名や学部名をいつ書かせか、進路指導計画に照らして好適時期を探る必要があるのではないでしょうか。
ある時期がくれば、模擬試験で志望校を記入しますので、その段階までは、如上の問いへの答えを見つけさせることを優先すべきと考えます。
❏ 伸びている実感に乏しいときに進路希望を訊くと…
進路希望調査というと、志望校(大学、学部・学科)を挙げさせるのが普通ですが、それは様々なことを考えた結果です。
どこを目指すのか選択を迫られたとき、「手が届きそうだと思える範囲」 にしか選択肢をイメージしない生徒も少なくありません。
自らの選択にまだ十分に向き合っていない段階で、とりあえずの希望をあたかも具体的な志望のように文字にしてしまったことで、自分の可能性をその範囲に限定してしまうことだってあり得ます。
これからの努力で自分がどこまで伸びるか予想のすべはないはずです。
勉強法の間違いに気づいて改めたときに、こちらの予想を超えて大きく伸びる生徒だっていますよね。
自らの学力向上を実感できないときに進路選択を迫られたら、自分の可能性を低く見積もったまま将来のイメージを描くのは無理からぬことだと思います。
■ 伸びている実感が、挑む意欲を支える
■ どこまで伸びるか見立てる
❏ 訊くべき事柄には順序や段階性がある
自分の可能性を見限らせず、視野を広く保たせて、自分の資質や嗜好にマッチした進路を見つけさせていくならば、いきなり具体的なことを答えさせるのではなく、他の方法がありそうです。
まずは、日々の学習や課題研究などを通じて、何らかの興味を持つこと/持ったことがあるかが、最初の質問かもしれません。
その上で、興味を起点にしてより深く、あるいは広く調べてみたことがあるというなら、興味はかなり強く、学びたいという気持ちの本気度も伺えます。
関連する書籍を読んでみれば、学問の先端やそれを研究している人や組織について知ることができるはずです。
こうしたことを、YES/NOや、「よくある~まったくない」 の尺度で聞いてみると、進路意識形成のプロセスをきちんと辿っているかどうか、ある程度は確かめられます。
より詳しいところは、面談での対話で掘り下げていくべきですし、如上の問いへの回答分布をクラスや学年といった集団単位で把握・比較すれば、指導の成果を検証するデータにも使えるはずです。
選択の結果を言葉にさせるなら、選択に至るプロセスもきちんと確かめたいものです。
算数のテストで、回答欄に数字を書かせても、正しく考えたかどうかはわからないのと同じです。それらしい答えを書いていても、きちんと考え、向き合った答えなのかはわかりません。
高校3年生になったら、志望理由を書かせて、選択の結果に向き合わせる ことの大切さもここにあると思います。
#2 「学部・学科調べに、学問探究という入り口を」 に続く。