学部・学科調べに、学問探究という入り口も
昨日の記事で、進路希望を調べるときは、前段階の確認も併せて行うことが大事だと書きましたが、大学を選ぶのが先か、学部・学科を選ぶのが先かと言えば、当然ながら、後者が正解ですよね。
自分の興味を満たしてくれる学科、学んでみたいことをきちんと学べる学科を探すことが先決です。
その学科を設置している大学をピックアップして、自分の求めるものと大学が提供しているもの(カリキュラム、教授を含めたコミュニティ、サポートや環境等)とのマッチングを確かめて大学を選んでいくのが正しい選択手順だと思います。
とはいえ、学科調べを実際に進めようとすると、いろんなところに難しさが…。そんな時は、学部・学科調べという捉え方を少し離れて、学問調べを入り口にしてみるのも良さそうです。
❏ 学問の細分化と学際の拡大で、学科は3,000近くに及ぶ
平成28年度学校基本調査の付属資料 にある、学科系統分類 によると、11の大分類、77の中分類の下に、なんと約2,900もの学科名が並んでいます。
複数の分類にまたがる学科もあり、これらを別個にカウントすると、その数は3,200近くに及びます。
5年前にあたる平成23年度と比べても、後者の数え方で230ほど学科の名前が増えています。
平成17年度まで遡るとその数は2,400ほどですから、干支が一回りしないうちに学科の種類が3割も膨らんだことになります。
なんとなく想像はしていましたが、これほどまでの数になっているとは…。
❏ 従来の区分けでは、興味に合致する学科を探せない
こんな学科もあるのかとただ感心する一方で、恥ずかしながら、学科名を見ても何を研究してどんな課題に取り組んでいるか想像力が追い付きません。
学問が細分化してきたということもあるでしょうが、それ加えて従来それぞれ独立した別学科で扱っていたものが複合して新たな学際を形成し、それが新しい学科になったのだと思います。
理系か文系かという区分けを入り口にしても、自分の興味に合致する学部・学科に行き当たるのは難しそうです。
生徒に「理系希望か、文系希望か」 と尋ねてみたところで、「数学が苦手かどうか」 以上の意味は持てないような気がします。
❏ 学会名鑑を覗いてみたことはありますか?
一方、科学技術振興機構が運営する学会名鑑 によると平成28年現在で、学会の総数は2,009だそうです。
大分類が3つ、その下に30の小分類がありますが、それぞれの中に何十、何百という学会がひしめていることに、改めてびっくりです。
【カッコ内の数字は、当該区分内にある学会数】
上記の名鑑からリンクを辿っていくと、それぞれの成り立ちが読めたり、各学会のホームページに飛んだりできます。
また、J-GROBALの研究者検索へリンクも用意されており、どの大学のどの研究者がどんなキーワードで研究をしているかも簡単に調べることができます。
クリックしてあちこち見て回るだけで結構楽しいです。この原稿を書きながら、ついつい夢中になってあちこち見ているうちに、時間があっという間にたってしまいました。
興味を起点に学問の世界を覗いてみるだけでも刺激的です。
どの大学のどの学科で、どんな研究者が何をやっているのか知ることは、もしかしたら「自分が学びたいこと」 を見つける機会にもなるかもしれません。
進路選択でなくても、生徒が課題研究や探究活動のテーマを探すときにも大きなヒントを与えてくれそうです。
❏ 様々な研究、取り組んでいる課題を知って、進路意識を作る
様々な分野で研究を行い、活動を展開している人々の営みに触れることは、社会が取り組む課題に、自分はどう関わるのかを考える契機になるはずです。
生徒一人ひとりの進路希望を確かめることは、指導計画を作る上でも大切であり、欠かせないものです。
しかしながら、進路希望が「行ける大学が設置する学部・学科から自分の希望と折り合いがつくところを選ぶ」 という発想の中で作られてはいけないと感じています。
自らの中に生まれた興味を起点に、自分の好奇心を満たし、且つその先に「学んだことを通じて社会とどのような接点を持つか」 をイメージできる場所を選ばせることができたら、それに勝るものはないように思います。
■ 探究型学習を使った進路指導
■ 社会が取り組む課題を軸にした学部・学科研究
#03 「進路意識形成について意識を質し、内省を促す」 に続く。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
自分の興味を満たしてくれる学科、学んでみたいことをきちんと学べる学科を探すことが先決です。
その学科を設置している大学をピックアップして、自分の求めるものと大学が提供しているもの(カリキュラム、教授を含めたコミュニティ、サポートや環境等)とのマッチングを確かめて大学を選んでいくのが正しい選択手順だと思います。
とはいえ、学科調べを実際に進めようとすると、いろんなところに難しさが…。そんな時は、学部・学科調べという捉え方を少し離れて、学問調べを入り口にしてみるのも良さそうです。
❏ 学問の細分化と学際の拡大で、学科は3,000近くに及ぶ
平成28年度学校基本調査の付属資料 にある、学科系統分類 によると、11の大分類、77の中分類の下に、なんと約2,900もの学科名が並んでいます。
複数の分類にまたがる学科もあり、これらを別個にカウントすると、その数は3,200近くに及びます。
5年前にあたる平成23年度と比べても、後者の数え方で230ほど学科の名前が増えています。
平成17年度まで遡るとその数は2,400ほどですから、干支が一回りしないうちに学科の種類が3割も膨らんだことになります。
なんとなく想像はしていましたが、これほどまでの数になっているとは…。
❏ 従来の区分けでは、興味に合致する学科を探せない
こんな学科もあるのかとただ感心する一方で、恥ずかしながら、学科名を見ても何を研究してどんな課題に取り組んでいるか想像力が追い付きません。
学問が細分化してきたということもあるでしょうが、それ加えて従来それぞれ独立した別学科で扱っていたものが複合して新たな学際を形成し、それが新しい学科になったのだと思います。
理系か文系かという区分けを入り口にしても、自分の興味に合致する学部・学科に行き当たるのは難しそうです。
生徒に「理系希望か、文系希望か」 と尋ねてみたところで、「数学が苦手かどうか」 以上の意味は持てないような気がします。
❏ 学会名鑑を覗いてみたことはありますか?
一方、科学技術振興機構が運営する学会名鑑 によると平成28年現在で、学会の総数は2,009だそうです。
大分類が3つ、その下に30の小分類がありますが、それぞれの中に何十、何百という学会がひしめていることに、改めてびっくりです。
人文・社会科学 | 生命科学 | 理学・工学 |
---|---|---|
言語・文学 (182) 哲学 (132) 心理学・教育学 (311) 社会学 (210) 史学 (178) 地域研究 (179) 法学 (103) 政治学 (73) 経済学 (140) 経営学 (145) | 基礎生物学 (107) 統合生物学 (66) 農学 (219) 食料科学 (61) 基礎医学 (177) 臨床医学 (354) 健康・生活科学 (225) 歯学 ((104) 薬学 (87) | 環境学 (143) 数理科学 (39) 物理学 (51) 地球惑星科学 (71) 情報学 (95) 化学 (94) 総合工学 (114) 機械工学 (62) 電気電子工学 (50) 土木工学・建築学 (89) 材料工学 (69) |
上記の名鑑からリンクを辿っていくと、それぞれの成り立ちが読めたり、各学会のホームページに飛んだりできます。
また、J-GROBALの研究者検索へリンクも用意されており、どの大学のどの研究者がどんなキーワードで研究をしているかも簡単に調べることができます。
J-GLOBALは、「つながる、ひろがる、ひらめく」をコンセプトに、これまで個別に存在していた科学技術情報をつなぎ、発想を支援するサービスです。登載された情報間のつながりをもとに、JST内外の良質な科学技術情報から意外な発見や異分野の知を入手する機会を提供いたします。産学連携や研究開発の初期段階および計画立案時におけるアイデア探しやきっかけ作りなどにぜひご活用ください。 ※J-GLOBALとは より引用
クリックしてあちこち見て回るだけで結構楽しいです。この原稿を書きながら、ついつい夢中になってあちこち見ているうちに、時間があっという間にたってしまいました。
興味を起点に学問の世界を覗いてみるだけでも刺激的です。
どの大学のどの学科で、どんな研究者が何をやっているのか知ることは、もしかしたら「自分が学びたいこと」 を見つける機会にもなるかもしれません。
進路選択でなくても、生徒が課題研究や探究活動のテーマを探すときにも大きなヒントを与えてくれそうです。
❏ 様々な研究、取り組んでいる課題を知って、進路意識を作る
様々な分野で研究を行い、活動を展開している人々の営みに触れることは、社会が取り組む課題に、自分はどう関わるのかを考える契機になるはずです。
生徒一人ひとりの進路希望を確かめることは、指導計画を作る上でも大切であり、欠かせないものです。
しかしながら、進路希望が「行ける大学が設置する学部・学科から自分の希望と折り合いがつくところを選ぶ」 という発想の中で作られてはいけないと感じています。
自らの中に生まれた興味を起点に、自分の好奇心を満たし、且つその先に「学んだことを通じて社会とどのような接点を持つか」 をイメージできる場所を選ばせることができたら、それに勝るものはないように思います。
■ 探究型学習を使った進路指導
■ 社会が取り組む課題を軸にした学部・学科研究
#03 「進路意識形成について意識を質し、内省を促す」 に続く。