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zoom RSS 新共通テストの採点基準〜正しく適用できる力

<<   作成日時 : 2017/05/22 06:23   >>

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前々回から引き続き、5月16日に発表された「大学入学者共通テスト(仮称)」のモデル問題についての考察です。出題内容とともに着目すべきであるのは採点方法。また、2回にわたって実施されたモニター調査実施結果からも今後の指導のあり方を考えさせられることがあります。


❏ 今回提示の採点法は、条件付き記述に特有のもの

共通テスト(仮称)のサンプルで示された問題では、出題内容に加えて、採点方法についても着目しておく必要がありそうです。サンプル問題1(国語)の問4は以下のような設問です。

父と姉の会話を聞いて、改めてガイドラインを読んだかおるさんは、姉に賛成する立場で姉の意見を補うことにした。かおるさんはどのような意見を述べたと考えられるか、次の条件に従って述べよ。

条件1全体を2文でまとめ、合計80字以上、120字以内で述べること。なお、会話体にしなくてよい。
条件2一文目に、「ガイドラインの基本的な考え方」と、姉の意見が一致している点を簡潔に示すこと。
条件3二文目に、「経済的負担」を軽減する方法について述べること。
条件4条件2 ・条件3 について、それぞれの根拠となる記述を【資料B】「城見市『街並み保存地区』景観保護ガイドラインのあらまし」から引用し、その部分を「 」で示すこと。

正答の要素には、以下の3つを挙げたうえで、下表の基準を示しています。
  1. 姉の主張と広報のための資料として作られた「景観保護ガイドラインのあらまし」の内容との関係をとらえることができる。
  2. 姉の主張に賛成する立場で主張するための根拠について、広報のための資料 として作られた「景観保護ガイドラインのあらまし」から必要な情報を取り出すこ とができる。
  3. 上記1〜2について整理し、姉を賛成する立場からの考えについて的確にまとめて書くことができる。
画像

正解が一義に決定するタイプの問題では、模範解答との異同を、正答要件を充足している項目の数や組み合わせで定量化する方法が一般的です。

今回のモデルでこの形式が採られたということは、当座の実施では、条件を厳しく設定し、許容解の幅を狭くキープすることを主旨に作問していることが窺えます。

実際の採点では、許容される表現の幅に、採点者で差異が生じないように、仕組みが講じられるはずです。

クラスタリングで答案をいくつかのパターンに分けるのも、その方策のひとつですし、許容解の判断を下すたびに、採点基準表が更新・共有される仕組みは、すでに塾・予備校の採点でも活用されています。


❏ より自由度の高い論述では採点ルーブリックが導入される

将来的に、より自由度の高い記述/論述問題が出題されるようになったときは、観点をいくつか設けてそれぞれの段階的な到達規準を記述する「採点ルーブリック」 に転換されるものと予想します。

正解が一つに決まらない問題(=立ち位置/判断軸の違いで様々な正解があり得るもの)では、正解との異同によって点数化することはできません。

「採点ルーブリック」 は、以前に公開された【「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」 で評価すべき能力と記述式問題イメージ例 】 でも、英語の採点方式として例示(同文書のp.22以降)されていました。

後述の通り、条件付き記述用の採点基準ですら、自己採点がままならず、採点結果との一致率が6割にとどまる現状を鑑みると、新学習指導要領の導入にむけて採点ルーブリックの活用に生徒も先生も習熟していく必要があるのではないでしょうか。


❏ 正答率の低さが、新しい問題と従来の指導のミスマッチを示唆

モデル問題を用いて、大学1年生を受験者として実施した「モニター調査実施」 では、当該設問の正答率(全正解要件の充足)は15%、条件の一部を満たす答案が31.5%だったそうです。

得点率に置き換えて概算してみると、25%ないし30%(最大でも40%には届かない)といったところでしょうか。

現行のセンター試験の正答率と比べると、この得点率はかなり低めです。モニタ受験に臨んだ大学1年生が従来通りの指導では対応できない可能性がありそうです。

2020年までには、難易度を含めた問題の最適化が図られていくと思いますが、今回の問題が本質的にはそれほど難しくないようにも感じられるため、出題側が大きくハードルを下げてくるとは考えにくいのではないでしょうか。


❏ 自己採点の精度の低さは、答案を相対化する力の不足ゆえ

もう一つ気になるデータは、自己採点と採点結果の一致率が6割(上記の問4) にとどまったことです。

如上の基準表は、調査対象が大学生であることを踏まえれば、それほど複雑でも難解なものでもありません。それでも、不一致が4割も発生するということは、高校卒業までに「自分の答案を相対化する訓練」 が十分でなかった学生が少なくないということです。

自分が書いた答案を客観的に評価できるようになることは、表現力を高めることに通じます。

答案が正答要件を満たしているかどうか判断できないうちは、テストの結果を受けて次に向けた学習上の課題も設定できません。

何ができていなかったかを把握しながら学習を進めることの利点は、勉強を好きにさせる学ばせ方に書いた通りです。

これまでの指導法では、新しいテストが要求するものに対応しきれない部分がありそうです。高大接続改革に向けて、採点基準に照らした自己添削を行わせる場を充実させていく必要があるのではないでしょうか。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一



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