探究活動の目的から考えるテーマ選び
次期学習指導要領で、高校の「総合的な学習の時間」から 「総合的な探究の時間」に名称を改めるとの方針が発表されてから約1年がたちました。高校が新しい教育課程に移行するのは2022年ですが、それを待たずに各地では既に様々な新しい取り組みが始まっています。
❏ 探究型学習を通じて目指しているもの
探究活動を通じて目的としているところは学校によって少しずつ異なるようですが、外すところができないのは、
■ 『TOK(知の理論)を解読する』 を読んで
■ 進路希望を作る指導[進路意識形成]
❏ 高大接続改革でも問われる「自らの未来を拓く力」
高大接続改革で変わる入試(入学希望者選抜テスト)が測ろうとしている力とも一致する部分がありますよね。
前者は、個々の教科・科目で学んだ知識や技法を総動員する中で、合教科・科目型の学力が身につくことが期待され、思考力・判断力・表現力を試す新しいタイプの入試問題で、生徒一人ひとりの学習成果が試されることになります。
後者は、何を学びたいか、学んだことを用いて社会にどう関わりたいかという進路意識を作ることであり、大学入試においても「学習計画書や志望理由書」 がきちんと書けるかどうかを試されていきます。
このように考えると、高校における探究型学習の目的は、広い意味でも、目の前の進路実現という意味でも、「生徒が自らの未来を拓く力」 を育むことに他ならないのではないでしょうか。
学習指導要領の改訂より、一歩先を進んでいく必要がありそうです。
❏ 趣味を起点にした調べ学習に止まっていては…
ここ数年、高校での探究型学習に興味をもって、機会があるごとにあちらこちらの発表会を参観しに出かけていました。
生徒の皆さんがいろいろと工夫を凝らして、研究や発表に取り組んでいる姿には頼もしさも感じる一方で、選んだテーマが自分の未来と繋がりにくいものも多いような気がしています。
自分の関心(というより「趣味」?)を起点にしているケースも少なくありません。プロスポーツチームの強さとは何か、ミニ四駆を早く走らせるポイントといったものもありました。
これ自体は別に問題とは思いませんし、なかなか面白い発表だったと思いますが、「自分たちが向き合うことになる問題(=未来)」 との関りが感じられないのはちょっと残念です。
❏ "学ぶことへの自分の理由"に結び付ける中途の問い
プロスポーツチームの経営を材料に、企業のマネジメントや広報活動のあり方まで展開できれば、経営学やパブリックリレーションズの研究に「自分が学ぶ理由」 を見つけることもあるかもしれません。
ミニ四駆のスピードアップなら、エネルギーの効率的利用を切り口に、様々な工学分野への興味に展開できる可能性もあります。
せっかくの探究活動の場が、趣味の範囲に止まり、「いずれ自分たちで解かなければならない問い」 に拡張できないのを、生徒の所為にするわけにはいきません。
探究活動の目的をきちんと捉えさせる指導がなされていたかの違いなのではないでしょうか。
途中での問い掛けや、助言によって、そうした方向に導いていければ違った発表になったはずです。
❏ 成果発表会で「相互啓発」を働かせるために
成果発表会に登壇させる生徒を選ぶときにも、細心の注意が必要です。
探究のテーマ選びの起点が、自分の趣味であろうと、身近な生活に根差す問題でも、あるいは持続可能な開発目標(SDGs)などに示されるグローバル社会が取り組む課題であろうと、どれでもかまいません。
でも、高校生にとっての探究型学習が如上の目標を持つとすれば、探究した結果の中に、自分の未来、自分との関りを見いだせているかどうか、言い換えれば、「自分が解くべき問いを立てられているかどうか」 が、発表者選考における重要な観点の一つだと思います。
■ 探究活動や課題研究と成果発表会
このほかにも、既にだれかが明らかにしていることをネットや書籍から引っ張ってきているだけの発表も、他の生徒や後輩たちに見せるべきではありません。
反面教師にはなるかもしれませんが、それは、参観している生徒たちが良いもの悪いものの見極めができていることが大前提です。
正しい評価を受けながら、そうした見極めができるようになるまでは、不用意な発表者選考が、「あんなんもので良いのか」 という誤った認識を持たせてしまうのではないでしょうか。
特に、これから探究活動に取り組む後輩たちに見せるときは、このリスクを十分に踏まえる必要があると考えます。
❏ 探究活動の成果を志望理由に絡められたら大成功
テーマ選びは生徒にとって難儀な仕事ですが、もし、探究活動を終えたときに、その成果を自らの志望理由書で触れることができたら、大成功と言って良いのではないでしょうか。
SDGsのような世界規模での社会問題を扱うのはちょっとヘビーかもしれませんが、それでも 「高校 SDGs」という検索ワードでググってみるといろいろな学校で意欲的な取り組みがなされている様子が窺えます。
まだ見ぬ他校の生徒がどんなことに取り組んでいるかを知ることも、テーマ選びにおける参考になるかもしれません。
また、過日の記事「学部・学科調べに、学問探究という入り口も」 でご紹介したような方法もあり得そうです。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
❏ 探究型学習を通じて目指しているもの
探究活動を通じて目的としているところは学校によって少しずつ異なるようですが、外すところができないのは、
- 生徒たちが向き合っている/向き合うことになる、様々な課題を解決するのに必要な「新たな知を生成する方法」 を学ぶこと
- 課題の中に新たな疑問や解くべき問い(=学ぶことへの自分の理由)を作り、学んだことを接点に社会にどう関わるかを見つけること
■ 『TOK(知の理論)を解読する』 を読んで
■ 進路希望を作る指導[進路意識形成]
❏ 高大接続改革でも問われる「自らの未来を拓く力」
高大接続改革で変わる入試(入学希望者選抜テスト)が測ろうとしている力とも一致する部分がありますよね。
前者は、個々の教科・科目で学んだ知識や技法を総動員する中で、合教科・科目型の学力が身につくことが期待され、思考力・判断力・表現力を試す新しいタイプの入試問題で、生徒一人ひとりの学習成果が試されることになります。
後者は、何を学びたいか、学んだことを用いて社会にどう関わりたいかという進路意識を作ることであり、大学入試においても「学習計画書や志望理由書」 がきちんと書けるかどうかを試されていきます。
このように考えると、高校における探究型学習の目的は、広い意味でも、目の前の進路実現という意味でも、「生徒が自らの未来を拓く力」 を育むことに他ならないのではないでしょうか。
学習指導要領の改訂より、一歩先を進んでいく必要がありそうです。
❏ 趣味を起点にした調べ学習に止まっていては…
ここ数年、高校での探究型学習に興味をもって、機会があるごとにあちらこちらの発表会を参観しに出かけていました。
生徒の皆さんがいろいろと工夫を凝らして、研究や発表に取り組んでいる姿には頼もしさも感じる一方で、選んだテーマが自分の未来と繋がりにくいものも多いような気がしています。
自分の関心(というより「趣味」?)を起点にしているケースも少なくありません。プロスポーツチームの強さとは何か、ミニ四駆を早く走らせるポイントといったものもありました。
これ自体は別に問題とは思いませんし、なかなか面白い発表だったと思いますが、「自分たちが向き合うことになる問題(=未来)」 との関りが感じられないのはちょっと残念です。
❏ "学ぶことへの自分の理由"に結び付ける中途の問い
プロスポーツチームの経営を材料に、企業のマネジメントや広報活動のあり方まで展開できれば、経営学やパブリックリレーションズの研究に「自分が学ぶ理由」 を見つけることもあるかもしれません。
ミニ四駆のスピードアップなら、エネルギーの効率的利用を切り口に、様々な工学分野への興味に展開できる可能性もあります。
せっかくの探究活動の場が、趣味の範囲に止まり、「いずれ自分たちで解かなければならない問い」 に拡張できないのを、生徒の所為にするわけにはいきません。
探究活動の目的をきちんと捉えさせる指導がなされていたかの違いなのではないでしょうか。
途中での問い掛けや、助言によって、そうした方向に導いていければ違った発表になったはずです。
❏ 成果発表会で「相互啓発」を働かせるために
成果発表会に登壇させる生徒を選ぶときにも、細心の注意が必要です。
探究のテーマ選びの起点が、自分の趣味であろうと、身近な生活に根差す問題でも、あるいは持続可能な開発目標(SDGs)などに示されるグローバル社会が取り組む課題であろうと、どれでもかまいません。
でも、高校生にとっての探究型学習が如上の目標を持つとすれば、探究した結果の中に、自分の未来、自分との関りを見いだせているかどうか、言い換えれば、「自分が解くべき問いを立てられているかどうか」 が、発表者選考における重要な観点の一つだと思います。
■ 探究活動や課題研究と成果発表会
このほかにも、既にだれかが明らかにしていることをネットや書籍から引っ張ってきているだけの発表も、他の生徒や後輩たちに見せるべきではありません。
反面教師にはなるかもしれませんが、それは、参観している生徒たちが良いもの悪いものの見極めができていることが大前提です。
正しい評価を受けながら、そうした見極めができるようになるまでは、不用意な発表者選考が、「あんなんもので良いのか」 という誤った認識を持たせてしまうのではないでしょうか。
特に、これから探究活動に取り組む後輩たちに見せるときは、このリスクを十分に踏まえる必要があると考えます。
❏ 探究活動の成果を志望理由に絡められたら大成功
テーマ選びは生徒にとって難儀な仕事ですが、もし、探究活動を終えたときに、その成果を自らの志望理由書で触れることができたら、大成功と言って良いのではないでしょうか。
SDGsのような世界規模での社会問題を扱うのはちょっとヘビーかもしれませんが、それでも 「高校 SDGs」という検索ワードでググってみるといろいろな学校で意欲的な取り組みがなされている様子が窺えます。
まだ見ぬ他校の生徒がどんなことに取り組んでいるかを知ることも、テーマ選びにおける参考になるかもしれません。
また、過日の記事「学部・学科調べに、学問探究という入り口も」 でご紹介したような方法もあり得そうです。
興味を起点に学問の世界を覗いてみるだけでも刺激的です。どの大学のどの学科で、どんな研究者が何をやっているのか知ることは、もしかしたら「自分が学びたいこと」 を見つける機会にもなるかもしれません。進路選択でなくても、生徒が課題研究や探究活動のテーマを探すときにも大きなヒントを与えてくれそうです。