大きな問いは分割してから挑ませる

与えられた問題が大きすぎて、どこから手を付けていいものやら見当もつかないときがあります。そのまま何の手立ても打たず、問題の加工もせずに教室に持ち込んで生徒に挑ませたとしたら、生徒の手と頭は止まったままですし、「わからない、できない、手に負えない」という印象だけを残すことにもなりかねません。

入試問題を授業の教材に使うときに」で申し上げた通り、こうした場合には、いくつかの切り口を与えて問いを分割する「問いの加工」が必要になります。


❏ 大きすぎる問いのままでは、取っ掛かりが作れない

例えば、昨年来、よく話題になっている「待機児童問題」についても、人材確保の観点から問題を論じることもあれば、対象者をカウントするときの基準に疑問を投げかける議論もあれば、保育所を増やすにも費用対効果の最大化を経済的な観点から考えてみることだってありそうです。

関連する報道記事や書籍に当たらせて、様々なアプローチから「課題研究」ができれば素晴らしいと思いますが、いきなり生徒にこれを投げ掛けても、生徒は受け止めきれるとは限りません。

ファーストめがけて投げた渾身の牽制球がフェンスまで転々と転がっていくような寂しい光景になりそうです。


❏ 切り口を見つけさせるための準備学習

こうした場合、様々な切り口で論じているコラムや社説などを集めておき、準備学習として生徒に読ませてみると入り口がうまく作れることが多いようです。

当然ながら、資料を集めたり、進行の手順を考えたり、先生側での授業準備にはとても大きな手間がかかります。

ましてや、課題学習のテーマを決めてから材料集めに奔走するというやり方をしていては、準備のゴールが見えず、過剰な負担を抱え込むだけになりそうです。

普段から読まれている新聞、雑誌などの記事をスクラップしている中で、材料が揃ったときに授業への落とし込みを考えるというやり方もあるはずです。

校内外の先生方と協力して、資料のストックを協働で行うのも良いかもしれませんね。インターネットを介した協働に取り組む事例もあちらこちらで見かけるようになりました。


❏ 生徒同士の分業で、広い視野での深い学びを目指す

分割した問いを、一つひとつ取り上げて、時間軸のなかで処理していくのも良いのですが、指導に当てられる時間には限りがあります。

切り口をいくつか用意したら、生徒をグループ分けして「分業」で取り組ませることが必要な場面もあるでしょう。

各グループの成果を発表という場を通して共有すれば、広い視野で深く学んだ成果を(間接的にですが)得ることもできます。


❏ 個々の興味・関心に合わせたグルーピング

どの観点(立ち位置)から論じるかを選ばせるとき、機械的にグループを分けてしまうのでもかまわないと思いますが、生徒の興味・関心の所在に応じてグループを作らせるという方法もあります。

用意してきた資料の読み込みや、ひと通り資料を読み終えた後の論点整理を終えたら、どの切り口に関心を持ったか、どのアプローチで問題を考えたいか、生徒一人ひとりに意思表示をさせてみましょう。

機械的に割り振られたグループでは、しらけムード漂う集団ができたり、自分の興味を満たせないことで不満を感じる生徒も出てきたりします。


❏ ひとりひとりに役割を与えて、フリーライダーを出さない

"正解がひとつに決まらない問題"でお伝えした「ひとつの課題にも様々なアプローチや考え方があることを生徒が知る必要」は、多様な立場から書かれた資料を読み、他の生徒と意見を交わすことで、かなりのところまで満たせるはずです。

しかしながら、グループで取り組んでいると、後ろに下がったまま傍観しているだけで済まそうとする生徒も出てきますよね。

その場ではグループとしての答えは出ますので、当座の困りごとは起きませんが、その場のコミュニティを離れてその生徒が何をできるようになっているのか、かなり疑わしいような気がします。

資料を読み込む場面、周りとの議論を経て自分の答えを作る場面では、個人のタスクに戻して仕上げ切ることを求めていきましょう。「協働学習を"集団としての調和"で終わらせない」ことが大切です。


❏ 広い視野を得て、判断の軸を持つことが目的

大きすぎる問題を、深くかつ広い視野で学ぶための授業デザインを考えてみましたが、ここにはもう一つ目的としていることがあります。

大学入試でも、どこに軸を置いて意見を作るか判断を求める問題も増えてくるとすれば、こうした学びの場を作ることが、「進路希望を実現する」というミッションの達成にも必要になってきそうです。

各科目の内容を扱う日常での教科学習の場面では、こうした活動は作りにくいかもしれません。

総合的な学習の時間(次の学習指導要領では「総合的な探究の時間」に名称が変わりそうですが)での課題学習などで試してみたいところです。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

この記事へのトラックバック