共有すべきは付加価値の大きな指導

"組織的な授業改善"というと何やらヘビーな響きがありますが、それぞれの先生方が重ねてきた工夫の成果を共有して、教科全体、学校全体でより良い授業を目指しましょうということにほかなりません。

先日の拙稿「互いの実践を学び、校是たる授業像を作り上げる」で書いた通り、周囲の先生の優れた手法や工夫に学ぶことなしには、改善に向けた発想も、自分の中に閉じたものとなり、広がりも深まりもないままに凝り固まってしまうリスクを抱え込みます。


❏ 優良実践とは付加価値の大きな指導のこと

優良実践とは、大きな教育成果を挙げた指導、教育目的や指導目標の達成に大きく近づいたものですから、結果学力の向上にしても、学びを通した進歩の実感や興味・関心の発現、学習行動の改善にしても、それぞれに相応しい指標/モノサシを用意すればその所在を特定するのは容易です。

測定項目測定方法
教科固有の知識技能の獲得
(結果学力)
模擬試験の成績や外部検定のスコアにおける分布の変化
進歩の実感、興味の発現
(自己効力感)
生徒による授業評価アンケートなどの集計値に基づく生徒の意識分布やその変化
学習行動・スキルの獲得
(学習者としての自立)
ルーブリックなどの活動評価の結果、振り返りシートでの好適記述の出現頻度

同じ時間を投じてより大きな成果を得た授業が、「付加価値」の大きな授業と言えます。

投じることができる資源に限りがある以上、遠くにあるゴールを大きく引き寄せようとするなら、付加価値の大きな実践を選択し共有するのは当然の帰結ではないでしょうか。


❏ 教育活動や指導の成果は多角的に

付加価値の大きさを測ろうとするなら、上記のように多角的に効果を測定する必要があります。

模試や外部検定での成績を短期的に伸ばすだけなら、徹底した対策指導を行えばある程度の効果は出ますが、言われたことをこなしただけの生徒が正しい学習方策や学ぶことへの自分の理由を獲得できるかどうかは別の話です。

また、成績が伸びていても学力の向上や自分の進歩を実感できない生徒は、その科目への興味を深めることも、学び続ける意欲を維持することもできないことがあります。

正しい学び方を身につけていない生徒は、先生からの丁寧な手引きや学習支援を受けられなくなったとたんに伸びが止まるかもしれません。

結果学力、学ぶ意欲、学ぶ方策など、学習を通じて身につけさせたことは、すべてきちんと評価を行い、どれくらい伸びたかを把握しておかなければなりません。

 ご参考記事: 教科固有の知識・技能を学ぶ中で


❏ 成績推移は平均点より四分位数で

成績の伸びというと、平均値の上下で語られることが多いようですが、あまり合理的とは言えません。

下のサンプル(データはダミー)では、上位を伸ばしたクラス、下位の拡大があったクラスなどが混在していますが、学年全体の平均で見てしまうと、7月模試の学年平均は49.9、11月模試の学年平均は49.7です。

この結果だけをみて、「ほぼ前回並み」と結論するのは、あまりにも不注意ではないでしょうか。

画像

例えばA組は、平均は前回とあまり変わりませんが、中央値は引き上げられています。

7月から11月にかけての指導によって、成績中位層の学力を伸ばすことができた一方、上位層は伸ばせず、下位を拡大させてしまっています。



次稿では、箱ひげ図の読み方やエクセルで箱ひげ図を比較的簡単に作る方法などに触れたいと思います。

その2、箱ひげ図をどう読むか、エクセルでの作り方 に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一



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