学びの方策、進路意識の形成過程における効果測定

結果学力の伸長や、学びに対する自己効力感の向上などに加えて、学びへの取り組み方や学習方策の獲得も指導を通じて目指すところである以上、これについてもきちんとした効果測定を行う必要があります。


❏ ルーブリックを用いた活動評価

教科学習指導を行う中で、身につけていくものには、「課題解決に向けた協働の場面でのふるまい方」や「探究活動や課題研究を行うときのスキル・姿勢」「あらたな知識を生成する方法」などが含まれます。

これらを生徒が獲得していく様子は、観点毎に段階的な評価規準を設けた、いわゆる「ルーブリック」を用いて評価するのが好適です。

ルーブリックは、「できるようになったこと」をたな卸しし、「何が足りないか、どうすればもっと良くなるか」を生徒自身が認識し、学びに展望と方向性を与えるためのツールですが、段階評価の分布をクラス/担当者間で比較することによって、指導効果の測定にも使えます。

拙稿「教科固有の知識・技能を学ぶ中で」にも書きましたが、教科固有の知識や技能を学ぶことは、それ自体が「目的」 ではなく、学び方・考え方を身につけるための「手段」 と捉えた方が、これからの時代には馴染むような気がします。


❏ 進路意識の形成や選択の力の獲得についても

上級学校などに進んで学びたいことを見つけ、そこで学んだことを接点に社会にどう関わりたいかという進路意識の形成も、担当者ごとの指導のあり方でその進み方が大きく異なります。

自らの進路をどこまで描けるようになってきたか、進路指導で育む“選択の力”がどこまで身についてきたかなどをアンケートや面談を通じて把握したら、その結果に基づく効果の比較も行うべきではないでしょうか。

教科学習指導以上に、進路指導ではクラス担任間での違いがあるため、優良実践の抽出と共有による改善効果は大きなものが期待できます。


❏ 定期考査の改善も欠かせない仕事

結果学力についても、模試や外部検定を用いるだけでは不十分です。

学年が進めば、模擬試験や外部検定の受検機会も増えますが、それを待つわけにはいきません。

英数国以外では、外部テストの実施頻度も少なく、定期考査が唯一の効果測定機会という時期もあります。

また、日々の指導において重点的に扱った項目に焦点を当てた問いなどを戦略的に課すには、自前で作るテスト以外にその機会がありません。

定期考査における出題の妥当性を高く保ち、集計方法なども効果測定に利用しやすい形を整えられていることが重要です。


❏ 優良実践の共有は、業務効率も改善する

繰り返しで恐縮ですが、指導目標の達成に向けて各担当(個人・組織)がそれぞれ最善と考える方法で取り組んだら、一定期間を経て効果測定を行うべきです。

それぞれの指導が生み出した付加価値の大きさを比較し、目的により大きく近づけた方法を選択・共有していかないと、個人レベルの試行錯誤が延々と続くことにもなりかねません。

互いの成果を共有せずに、一人ひとりが自前の試行錯誤を重ねる中には無駄や重複も生まれる隙が生まれ、その重複が業務の効率化を妨げている部分もありそうです。

無駄をいかに取り除いていくかは、昨今大きな課題になっている教員のライフ・ワークバランスの実現にも欠かせないはずです。


❏ 順序は、教育目的→指導目標→評価方法→指導方法

学校の教育目的のもとに各教科・各分掌の指導目標が設定されますが、目標に対して、評価方法も決めずに、方法に関する議論を先行させても得るものは少ないはずです。

校是たる授業像をエビデンスなしに打ち出しても、やり方を個々の先生に押し付けるばかりで、優れた発想が埋もれる可能性もあります。

また当初に打ち出した「校是」がもし不合理を含むものであったら、生身の生徒を巻き添えにするリスクも抱えます。

方法を先に考えることには大きなリスク、落とし穴があるとお考えいただきたく存じます。目的や目標を決めたら、次に考えるべきは、効果測定の方法(=達成検証手段、評価の方法)です。

各々の先生方が最善と見込んで実施した指導の効果を測定し、その中から付加価値の大きな指導、目標の達成により大きく近づけた方法を選択して共有していくのが協働で行う授業改善の進め方です。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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