組織的授業改善の土台: データを使った効果測定

効果測定を重ねながら、優良実践の抽出と共有を継続的に行っていけばそれぞれの先生方が持っておられた強みの集合体として、共通項を一定以上に含む「本校の授業のありかた」の具体的な姿が徐々に表れてくるのではないでしょうか。

授業改善に向けた協働の中で、先生方が互いの実践から学び、指導効果の高い指導手法を共有していけば、学ばせ方・教え方における担当者による差は自ずと縮小に向かうはずです。

これまで取り組んでなお十分な効果が発揮されてこなかった方法の代わりに、他の先生が大きな効果を上げてきた手法を自らの授業に採り込んでいくのは、学校の教育目的や指導目標に共感して入学してきてくれた生徒の期待に応えるための方策のひとつにほかなりません。

先生方が互いの成果を共有していけば、限りある教育リソースの無駄遣いも減り、同じ目的を達するために必要なエネルギーも減るはず。ほかの目的に回す余裕も出ますし、何よりも、業務効率の改善、ひいてはライフ・ワークバランスの実現にも繋がるのではないでしょうか。



テストやアンケートの結果をデータとして効果測定をきちんと行えば、指導効果が大きい(=教育目標の達成により近づけた)方法の所在を特定することはできるはずです。もし、現状において優良実践の所在特定にデータを活用できていないとしたら、これまでのやり方に改めるべき点があると考えるべきではないでしょうか。


互いの実践を学び、校是たる授業像を作り上げる
21世紀型学力という言葉で、協働性・多様性・主体性を育む必要性が高まってきている中、そのモデルを先生方の行動の中に見せていくのはとても大切なことのような気がします。授業改善という課題の解決に、先生方が協働で立ち向かう姿、(様々な授業観が入り混じる)多様性の中で、取るべき行動を建設的に判断し、積極的に学んでいる姿を生徒に見せることは、「ついていくべき背中を見せること」なのかもしれません。

共有すべきは付加価値の大きな指導
"組織的な授業改善"というと何やらヘビーな響きがありますが、それぞれの先生方が重ねてきた工夫の成果を共有して、教科全体、学校全体でより良い授業を目指しましょうということにほかなりません。「互いの実践を学び、校是たる授業像を作り上げる」で書いた通り、周囲の先生の優れた手法や工夫に学ぶことなしには、改善に向けた発想も、自分の中に閉じたものとなり、広がりも深まりもないままに凝り固まってしまうリスクを抱え込みます。

箱ひげ図をどう読むか、エクセルでの作り方
一般的に利用されている平均点の推移で捉える方法では、層別の動きが捉えられませんし、上下への動きが相殺して平均値の変動は小さなものに集約されてしまうこともあります。層別の分布を知る必要に加えて、クラスごと、担当教員ごとに指導の成果は異なりますので、優良実践の抽出において着目すべき差分を埋もれさせないために、クラスを並べて比較する箱ひげ図で分布の変化とクラス間での相違を捉えるのが好適です。

生徒にYESと答えてもらいたい質問
指導目標の達成により大きく近づいた指導(=付加価値)の大きな指導を特定して共有を進めることで、組織的な授業改善が進みます。一人ひとりがより良い指導を目指して試行錯誤を繰り返すことは大切ですが、その段階に止まっていては限りある教育リソースを浪費するばかりです。目標の次に決めるべきは「方法」ではなく、「評価」です。どんな質問にYESと答えてもらいたいかちんと決めておくのが、優良実践の所在特定への起点です。

学びの方策、進路意識の形成過程における効果測定
結果学力の伸長や、学びに対する自己効力感の向上などに加えて、学びへの取り組み方や学習方策の獲得も指導を通じて目指す以上、これについてもきちんとした効果測定を行う必要があります。その他にも、進路意識の形成や選択の力の獲得なども効果測定を行うことで優良実践の共有が進みます。日々の学習指導の効果測定には、定期考査問題の妥当性向上が必須の課題です。優良実践の共有は業務の効率化にもつながるはずです。


ご参考記事:

 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)
 効果測定は、理解者と賛同者を増やすため
 指導案の優劣を論じるときも
 新たな取り組みを始めるときの鉄則
 考査問題の改善が授業も変える
 ルーブリック評価の作成と運用


追記。(蛇足ながら…)

自分が行ってきた指導の成果を検証し、生徒の声に耳を傾けることは、体重計に乗るのと同じではないでしょうか。体重計に乗る習慣をつけるだけで減量がうまく進められたり、健康的な生活習慣の獲得に向かったりすることもあるとか…。より良い授業の実現を目指すなら、データを用いて自分の指導を定期的に振り返る(=効果測定を行う)のは欠かすことのできない習慣のひとつだと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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