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zoom RSS 散布図中の位置から改善課題の所在を探る

<<   作成日時 : 2017/12/18 07:30   >>

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学習評価を行うとき、模試や考査の成績にしろ、授業評価アンケートにしろ、ある評価項目における集計結果を単独で見ているだけで改善課題が見つけられるとは限りません。要素ごとに集計を分けて、散布図を描いてみることで改善に必要なことが見えてくることがあります。


❏ 異なる要素は集計を分ける

例えば、定期考査の成績では、授業で扱った内容を理解して覚えたかどうかを試す問題とそれを使って初見の課題を解決する力を試す問題が混在しています。

二人の生徒、A君とB君が期末試験で同じ点数を取ったとしましょう。

A君は既習問題だけで点数を稼いでいるのに対し、B君は前者で取りこぼしはあるものの後者でも善戦したとしたら、その時点で形成されている二人の学力はタイプが違うことになります。

当然ながらその後の学習における重点課題も異なるはずですよね。

"考査問題における得点集計(集計の取り方と活用法)"で書いた通り、既習問題での得点と初見問題での得点をそれぞれ横軸・縦軸に取った散布図に当てはめると、その位置からその生徒の現時点での学力の特性が推定できます。


❏ 改善課題の特定ができるように質問を設定する

授業評価アンケートでは、「(先生の)授業のわかりやすさ」や「(生徒自身の)授業への取り組み方」などを訊くケースもありますが、何より重要なのは「授業を受けて学力や技能の向上、自分の成長を実感できるか」という問いへの答えです。

伸びている実感はその科目を学び続ける意欲に直結しますが、テストで測れる結果学力と違い、本人に聞いてみないことには把握できません。

アンケートの質問項目には、如上の一文を加えておく必要があるということですが、それだけ尋ねてみても、結果はわかりますが、学力向上感を妨げている要因が特定できず、改善に向けた方向性も得られません。

学力の向上などを実感できる授業がどのような要素を満たしているかをきちんと想定し、それらの充足も併せて測れるように質問を設計しておけば、前者を目的変数、後者を説明変数とした分析が可能になります。


❏ 説明変数を特定して評価項目に設定

統計的な分析によって"学習効果"(授業を受けて学力の向上や自分の成長を実感する)を左右する要素を特定する"準備"が必要です。

この準備段階で、自前で試行錯誤を繰り返すのも大変ですので、既存の研究成果を利用しましょう。

当オフィスでこれまでに蓄積されたデータでは、学習目標の理解、知識活用の機会、対話的な学びの場などが、最も大きく学力向上感を左右することがわかっています。

目的変数とすべき学習効果に対して有意に寄与している項目が判明したら、それらの集計値を横軸におき、学習効果を縦軸においた散布図を描いてみましょう。

画像

上の散布図は、ある学校の実際のデータを用いて作成した例です。前出の重回帰分析などの違い、統計ソフトなどを用いずにエクセルに実装されている機能だけで実現できます。


❏ 散布図の近似線から説明変数の目安値を導く

散布図を描いてみると、回帰式(近似線を表す数式)から、目的変数である"学習効果"で目標値に達するための目安が求められます。

ちなみに回帰式は、チェックボックスをひとつクリックするだけでエクセルのグラフに表示することもできますが、計算に使おうとしてグラフからセルにコピペするのも面倒です。

ちょっと操作が複雑なLINEST関数を使うまでもなく、SLOPE関数、INTERCEPT関数を使えば、係数と切片をセルに出力できます。

あとは一次関数にy=75を代入してxを計算すればOKですね。

さて、上の図では、"学習効果"で75ポイント(否定的な回答が10%未満となる水準)を達成するには、"活用機会"(仮題解決に、理解して覚えたことを用いる機会が整えられているか)で78.9ポイント以上を目安に改善を図る必要があることがわかりました。


❏ 目安値を大きく下回ったら優先的な改善課題

近似線から下方に大きく離れた場合は、他の要因(伝達スキルの不備や難易度の設定ミスなど)を想定して改善策を考えることになりますが、まずは目安値とご自身が担当しているクラスの集計値を比べてみることが重要です。

目安値を大きく下回っていればその分だけ改善課題として優先順位が高いということになります。

ちなみに、近似線から大きく上方に離れた"ミラクル"な授業もありますが、説明変数に拠らずに学習効果を得るだけの手法が存在しているということです。実際に教室を覗いてその手法を学びたいところですよね。

学習目標の理解や対話的な学びの機会についても同様に、散布図と回帰式から導出した目安値との照合によって、当該項目について改善の要否やその優先度を把握するようにしましょう。

いずれにも問題がないのに学習効果が目標値に達しない場合は、もう一歩分析を進めてみることになります。

後半、"授業改善に向けた課題形成のための点検手順"に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一




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