その宿題、本当に必要ですか?(その2)

宿題や課題を通して、授業で学んだことを課題解決に使ってみることは達成感を原資に次の学びへのモチベーションを高める効果に加え、課題に向き合って答えを仕上げる中で、不明の解消や興味の掘り下げも図られますので、学びを深く確かなものにします。

前稿で挙げた3タイプの宿題のうち、「授業内容繰り返し型(記憶再現タイプ)」や「主教材と別に進める知識拡充型」に偏ってしまっては、如上の効果が最も期待できる「知識活用・課題解決型」が脇に置かれてしまいかねません。

2017/10/02 公開の記事をアップデートしました。

❏ 授業で学んだことを使うタイプの宿題を中心に

前掲の3タイプの宿題のうち、学習意欲を高め、主体的な学びを具体的な行動に転じさせる機能に最も優れるのは、3番目のCタイプです。

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まずは、授業で学んだことを別の課題を解決するのに使う機会(Cタイプの宿題・課題)を整えることを優先しましょう。

 ■ 習ったことを使ってみる機会
 ■ 単元を跨いで作る、習ったことを使ってみる機会

Aタイプは、Cタイプの宿題をしっかり整えれば、課題への解を仕上げようとする中で必要な知識に触れる再記銘の機会は十分に確保できますので、わざわざ設ける必要はさほどないと思います。

Bタイプも、前稿で申し上げた通り、主教材での学びを進めながら頻繁に参照させることで、既習部分は着実に広がり、定着も進むはずです。受験期を迎えて必要に迫られてから、過去問演習を通じて総ざらえしていく方が効率的ではないでしょうか。

知識は使わないでいるうちに、忘却曲線にそって保持率が下がりますので、向こう暫く使う機会がないことまで範囲を広げて無理に覚える機会を作っても、得るもの/残るものは期待ほど大きくないはずです。


❏ 必達、上位、挑戦の段階に分けた課題付与

前項の繰り返しで恐縮ですが、知識拡張の範囲を設定するときに最大の網をかける発想には弊害が大きすぎるように思います。

受験で必要になるかもしれないことはすべてカバーしておきたいとの思いで授業を設計してしまうと、確実に理解を形成したい箇所の掘り下げが足りなくなったり、こなしきれない生徒に「仕上げないことを常態化させたりと、リスクばかりを膨らませる結果になりかねません。

まずは必達課題にしっかり取り組ませ、それを達成できたことを見極めたうえで、余力と意欲のある生徒にその先へと進ませるといった段階性をもった課題付与を考えたいところです。

なお、獲得すべき知識と課題解決に用いる知識の差分が大き過ぎるなら何らかの補完策も必要ですが、丸暗記を強いても、獲得した知識が生きて働く保証はありません。

短答式の語句説明問題や空所補充の求答問題を並べてチェックリスト様式に調えるなど、「理解したことの言語化する要素」を含んだものとするのが好適です。

理解の軸をしっかり作っておきさえすれば、先生が主体になって答え合わせなどしなくても、生徒が自力で教科書や資料を読んで、周辺知識の獲得と理解を進めて行くこともできるはずです。


❏ 学習時間の延伸を自己目的化しない

家庭学習時間を延ばすことを自己目的化したような課題付与も一部に見られるように思います。平均学習時間が伸びたからといって、実りのある学びが実現しているかどうかは別問題です。

授業外学習は、見方によれば生徒にとっての残業です。学習目標を達成するのに必要な課題かどうかを徹底的に検証して、不要なものは課さないという姿勢が指導者に求められます。

与える量を増やしても、却って履行率が下がったり、取り組みが形式的になったりすることも少なくないように思います。

宿題に追われ、教室での学びに向けた準備(予習)が疎かになったり、授業中の学びを携え課題にじっくり向き合う時間が足りなくなったりしては、元も子もありません。

A/Bタイプの宿題に追われ、小テストのたびに不合格となり、再テストに備えた丸暗記だけで貴重な学習時間を浪費しては、本来の/正しい学びはどんどん遠ざかってしまうのではないでしょうか。


❏ 「やりかけ」の状態を作って履行率アップ

宿題を与えるときは、どんな課題をどれだけ与えるか以上に、どうやって履行率を高めるか/きちんと仕上げさせるかに注力しましょう。

履行率を高めないと、「仕上げ切らないことを常態化させるリスク」を抱えるばかりか、次のステージに進むためのレディネスも整わなくなり、その後の学習の妨げを抱え込むことになります。

Cタイプの宿題を課すときには、授業終了間際に「仮のアウトプット」をさせるようにしましょう。ある学校で行った実験では、仮のアウトプットを挟んだクラスで、他のクラスと比べて、宿題の履行率も単元内容の理解も有意に上回る結果が得られています。

宿題の答えを考える中で、教科書やノートも見直すことは、その日の学びを俯瞰する機会になります。あやふやだったところに整理がつく、見落としていたところに気づくなどの効果は小さくありません。

やりかけの状態を作ると、生徒のうちに「仕上げたい」という欲求が生まれますし、仮のアウトプットを通し「宿題を仕上げるのに必要な知識や理解」の欠落に気づけば、教室を離れる前にそれを解消しておこうと先生や周りに訊いたりすることで前提理解の確保も進みます。

仮のアウトプットをさせず、プリントを配っただけでは、そのままカバンにしまい込まれ、生徒が宿題と「再会」するのは帰宅してからです。

その時点でやっと不明に気づいても、訊くべき相手は周りにいません。手が出なければ放置するしかなく、翌日の授業の前に他人の答えを写すのが関の山です。中には、LINEで友達に聞くという殊勝な生徒もいるかもしれませんが、たいていは「面倒くさい」が勝るように思います。

その3に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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