研究授業の実りをより大きくするために(その3)

授業を参観し、協議を通じて「より良い授業」を実現するための気づきを交換したり、学習効果をより大きくする方法を考えたりすることで、研究授業は所期の成果をおさめたことになりますが、毎回、これを繰り返しているだけでは発展的・継続的な取り組みにはなりません。

そもそも「研究授業」というからには、あるテーマにそって研究を進めていく土台としての授業という位置づけが必要ではないでしょうか。

参加される先生方のコミュニティで共通するテーマを持ち、それぞれが得た成果を共有し合い、磨き合えるような運営を目指しましょう。


❏ 研究授業の終了に当たり、次回に向けた宿題を選び出す

前々稿、前稿でご提案してきたような形で研究授業を実施する中、その場で最適解を探り当てられなかった「宿題」が何かしら残るはずです。

その宿題を自校/自分が担当する授業に持ち帰り、実践の場で解決策を模索して、次の研究授業にそれぞれが成果を持ち寄るというサイクルを作りあげたいところです。

参加者全員が同じ宿題になる必要はありませんが、複数の参加者が興味を共有できるようなテーマが幾つか挙がれば、それぞれの興味に応じて研究を進めていきましょう。

漫然と「より良い授業」を標榜して、特別な方向性も持たずに進める授業改善よりも、はるかに大きな効果をもたらしてくれます。


❏ 教室に持ち帰り、仮説を検証する

次の研究授業までの宿題には、新たな手法を実地に試してみることと、その効果を検証することの2つのフェイズが含まれます。

前稿の最後で出てきた「学習目標の達成度をさらに引き上げるためにできること」にあがった様々な仮説を採り込んだ授業をデザインし、実際の教室で試してみましょう。

新たな方法が本当に効果を上げるのかを試しているうちに、ちょっとした修正でより大きな効果が期待できることに気付くこともあります。

効果が現れてこないときは、仮説の組み直しも必要になりますが、安易に最初の仮説を棄却するのではなく、
  • 仮説自体が間違っている(=粘っても効果は期待できない)のか、
  • 生徒の戸惑いが解消を待てば効果が出てくるのか、
  • 仮説が成立するのを妨げる要因がほかに潜んでいないか
など、問題の切り分けを冷静に行う必要があります。実行ミスを作戦ミスと取り違えないことが肝要です。

言うまでもありませんが、効果測定は多面的に行う必要があり、
  • 科目固有の知識・技能の獲得はテストや課題
  • 学びに対する意欲や興味の向上などはアンケート
  • 学習行動の改善はルーブリックなどの活動評価
など、測定対象に応じたモノサシをきちんと用意しましょう。


❏ 宿題の成果を持ち寄り、さらなる「気づきの交換」へ

それぞれが持ち帰った宿題は、その成果を持ち寄ってこそ、気づきの交換でさらに大きな成果に繋がります。

次回の研究授業が予定されているのであれば、それまでに取り組みの経緯と成果を書面にまとめておきたいところです。

持ち寄ったものを回し読みすれば、効率よく互いの取り組みを知れますし、読み終えた後で相互の質疑応答をすれば、理解の補完も図れます。

書面に起こすのは面倒かもしれませんが、文字に起こしてみることで、それまでの取り組みを振り返っての新たな発見もあります。

手間の増大を抑えるべくスペースを敢えて小さくするのも好適です。特に伝えたいことに焦点を絞った記述が促され、書く側にも読む側にもハッピーな状態を作れるはずです。

以前にお呼ばれした研究授業では、はがきサイズのカードを使っておられました。読む側でも負担感なくじっくりと報告に目を通せます。情報の少なさが却って「行間」への興味を刺激したのか、相互の質疑応答も活発になっていたように感じます。


❏ 「授業法」以外にも研究の対象とすべきもの

研究授業は、基本的には「授業のあり方」を研究対象にしますが、学習指導がより大きな成果を着実に結ぶには、他にも磨きをかけなければならないことが沢山あります。

その代表格は、定期考査や校内実力テストの質的向上と、出題研究からの好適課題の収集の2つだと思います。

学力形成の効果測定の指標としての考査問題の妥当性を高めることは優先順位の上でトップに位置すると思います。

考査問題で何をどう測るかは、何を教えるかと同義であり、指導主眼の最適化を図る上で考査問題の妥当性を検討していくのは不可欠です。

教育改革の中で学力観が更新されていきますので、協働でおこなう出題研究は授業内外でのターゲット設問として好適な材料を収集する機会にもなりますし、入試問題を授業の教材に使うときに求められる知見の獲得も加速度的に進むはずです。


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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