その宿題、本当に必要ですか?(その3)

シリーズタイトルとした「その宿題、本当に必要ですか?」は、宿題を指定する側が常に自問しなければならない問いだと思います。生徒が学習に振り向けられる時間は有限であり、その貴重なリソースを最大限に活かすには、より効果的な課題を選び出して行く必要があるはずです。

日々の授業で生徒に課している宿題・課題の一つひとつには、履行を通じて達成すべき目標状態(=やらせる目的)があるはずですが、その目的はどのくらい達成できているでしょうか。

きちんと取り組んだことで、学力の向上、学習方策の獲得、学ぶ意欲の増大といった効果が得られなければ、その宿題・課題は妥当性に欠くものだった可能性があります。生徒による履行状況を把握した上で、その効果をきちんと測定することで宿題・課題の精選を進めましょう。

2017/10/03 公開の記事をアップデートしました。

❏ 宿題・課題の履行状態×目標の達成状態

宿題・課題への取り組み方と、その宿題・課題を通して目指していた到達状態に到達できかたどうかを集計表にまとめてみると、α1~α3、β1~β3、γ1~γ3の9セルにそれぞれ生徒の人数が入るはずです。

目標状態を
達成した
目標状態に
近づいた
変化なし
/遠のいた
真面目に取り組んで
きちんと仕上げた生徒(α)
  α1  α2  α3
履行したが
仕上げが不十分な生徒(β)
  β1  β2  β3
やらなかったか、
写しただけの生徒(γ)
  γ1  γ2  γ3

もし、α3の人数が{α1+α2}を上回ったり、近い値となったりしたら、真面目に取り組んでも効果不明ということですから、その宿題・課題のあり方に疑問の余地がありますよね。α に比べて β や γ が多いようなら履行率を高めることにもうひと工夫が必要と言えるはずです。

クロス集計表に基づいてカイ二乗検定や残差分析を行えば、統計的に効果の有無を検証することもできます。前者であれば、エクセルの実装関数CHISQ.TESTが使えますが、後者は統計ソフトが必要です。


❏ 同じ課題を与えても事前指導によって結果は違う

同じ課題を与えたとしても、事前にどんな指導を行っていたかで、履行率や目標の達成率が大きく変わります。

副教材で持たせている例文集の暗唱でも、主教材を進めるなかで頻繁に参照して「虫食い状態」を作ってから、総ざらえの学び直しを暗唱テストで行っていく場合と、そうした事前指導なしで単独に進めていく場合とでは、前者の方がはるかに良い結果を結びます。

前稿Cタイプの宿題でも、授業を終えるときに仮のアウトプットに挑ませるかどうかで大きな違いが出ることが実験で確認できています。

複数の先生が同じ教材を扱うときは、それぞれが最善と思われる方法で指導を行い、その結果を如上のような方法で検証して、より効果的な方法を共有していくべきだと思います。

学年教科内だけでは比較実験ができないのであれば、クラスごとにやり方を変えてみて変化を確かめることもできますし、前年度の記録と照らすこともできるはずです。


❏ 作戦ミスと実行ミスの切り分けを

如上の方法のように、「きちんとやった/やらない」という軸を加えて「効果があった/なかった」との2軸で現況を捉えるようにしないと、作戦ミスと実行ミスの切り分けができません。

作戦ミスとは、その宿題を選んだ時の意図と、実際に選んだ宿題とがうまくマッチしないことや、やらせる時期を間違えたことを意味します。

一方の実行ミスは、宿題は好適なものが選ばれ、時期も適切であったのに、取り組ませるときの指導が不十分であったり、適切さを欠いたりしたということです。

効果が現れなかった原因が実行ミスにあるのに、作戦ミスと誤解してその宿題を引っ込めてしまうのでは、それこそ作戦を誤っています。


❏ やらせたことはきちんと効果を測定する

宿題・課題にした以上、生徒の学習時間という貴重なリソースを使わせていますので、きちんと効果に結び付ける必要があります。

例えば夏休みの宿題に英語のサイドリーダーを購入させて読ませたとしましょう。宿題として課した目的は、おおよそ、
  • 文法や語彙などの再定着や拡充を図る
  • 読解速度の向上
  • 英語を読む意欲や習慣の形成
といったところかと思いますが、いずれもテストやアンケートで効果測定が可能なはずです。

夏休み前と後での変化を測り、所期の効果が得られたかどうか、事前・事後指導の相違で効果に違いが生じているかなどは確かめてみるべきだと思います。

どの指標にも有意な効果が見られないようなら、その宿題を与えることの合理性を疑ってみる余地がありそうです。

効果測定があまり大げさになっては、先生側での費用対効果を下げますので、必要最小限の要件を満たす簡便な方法を選びましょう。


❏ 知識の拡充と定着を図る課題でも

ある時期に定着を図る目的で、ガンガン繰り返し覚えさせたことでも、半年たってみたら忘れていたのでは何の意味があったのか不明です。

知識は使う機会がなければ、時間の経過とともに保持・想起できなくなり記憶から失われます。

ある単元を学ばせたときに、周辺知識まで一気に拡張を測り、定期考査までに覚えさせたとしても、半年後に再テストしてみて定着率が予想を大きく下回ることも少なくありません。

むしろ、学習が進んで関連する単元を学ぶ時期に合わせて、復習テストを行うように変更して大きな効果を得た事例もあります。

ここでは、新たな教材を与える必要はありません。最初に学んだときの教科書、ノート、プリントを出題範囲にすれば、新たに学ぶこと(=生徒の負担)を増やすこともなく、カレンダー上での配列を変えるだけで効果を増大させることができるはずです。


❏ やらせる以上、最も効果の上がる方法を選ぶ

やらせた以上は、それをもって何らかの効果が上がっていなければなりません。ごく一部の生徒だけが頑張って成果を挙げているという状態なのに、「今の宿題にはそれなりの合理性がある」と主張するのは少々乱暴ではないでしょうか。

また、再テストや補習といったペナルティ要素をもった「外圧」で勉強させても、生徒にとっては「学ぶことへの自分の理由」が生まれるとは思いませんし、外圧がなくなった瞬間に学習の習慣まで失う状態で卒業させるのも問題がありそうです。

宿題・課題に一生懸命に取り組むことで、自分の成長に繋がる何かを得ることができたという実感を持たせ、努力して目標を達成することの意味と喜びを学習させることも大切ではないでしょうか。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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