考査問題と被験者学力のマッチング

考査問題の妥当性を評価し、最適化を図ることの重要性は以前の記事でも書いた通りですが、たとえ同じ問題であっても、どんな学力層の生徒に与えるかで「良問」にも「悪問」にもなり得ます。


❏ いかなる場合でも出題を避けるべき問題

詳細は如上の記事に譲りますが、目標学力(=指導を終えたときできるようにさせたい事柄、獲得させたいコンピテンシー)への接近状況を測定できない問題は、いかなる場合でも出題を避けるべきです。

試験を受けたことで、どこまでできるようになっているか、次は何ができるように頑張るべきか/どのように学んで行けばよいかを生徒も先生も把握できなければなりません。

参考書(執筆者が無意識に引きずっている古いテスト像が残っていることもあります)には必ず載っていても、実際の入試問題ではとんと見かけない事柄を試していても仕方ありません。

また、教わったことを覚えたかどうかしか試せない問題ばかり与えていては、生徒は「覚えることが勉強だ」という誤った学力観を身につけてしまいます。


❏ 成績層別に正答率を算出してみると

現代的な学力観に見合った問題であっても、受験者層の学力とのマッチングが悪ければ、その時点で課す問題としては好ましくありません。

設問ごとの正答率や採点基準ごとの充足率を、成績層別に算出してみると、その問題/基準がどの学力層で最も識別力が高いか判断の材料が得られます。

下図は、客観式の【設問あ】、【設問い】、記述式で3つの正解要件を持つ【設問う】を例に作成したものです。

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❏ このグラフをどう読むか/何がわかるか

【設問あ】は、受験者全体の正答率では10%台となり、「難しい問題」と片付けられてしまいそうですが、中位群上位と上位群を識別する能力には優れています。

成績が中の上に止まっている生徒が上位群に加わるためには、この問題を解けるようならなければならないということです。

【設問い】は、成績下位者でも7割近くの正答率であり、このクラスに課す問題としては、易しすぎると言えそうですが、もっと学力の低い生徒が集まるクラス(例えば補習講座など)で使うには適切な問題です。

【設問う】は、中位群の中での上位/下位を分ける学力要素を含んでいると考えられそうです。特に採点基準上の要件2や要件3が満たせるかどうかが、平均未満に止まる生徒にとっての壁と考えられます。


❏ 設問毎の正誤情報があればグラフ作成は簡単

成績層の区分けは、当該科目の模試偏差値などをもとに、四分位数での分割をしてあります。

生徒毎にどの層に位置するか記号を付しておけば、ピボットテーブルやCOUNTIF関数でそれぞれの正答率/正解要件充足率を算出できます。

ちなみに、上位層と下位層で正答率に差がない場合、設問そのものがおかしいはずです。

言うまでもありませんが、成績集計において総合点しか記録されていないようでは、どの問題がどの層に課すのに相応しいかを知るチャンスは得られません。

すべての設問、あるいは毎回の考査で行うには負担が大きすぎますが、こだわりを持って指導してきたことを試す設問に絞って行ってみる価値は十分にあります。

様々な成績層の生徒に対して、どこに力点を置いて指導をすればよいのか、もう一段の学力伸長を図るために何を大切にするべきなのか、貴重なヒントが得られるはずです。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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