ひとつの教材を扱う中で4技能を養う(その2)

前稿に引き続いて、これまで以上に重視される「思考力・判断力・表現力」の育成と、「4技能の向上」という2つのミッションを同時に達成し、さらには「自学を可能にする学習方策の獲得」も目指した授業を、限られた指導機会/時間の中でどう実現すべきか考えてみます。

教材をいたずらに増やすのではなく、精選した教材で(可能な限り教科書から離れずに)多角的な活動を通して学びを深めるのが戦略の中心になりますが、他教科/探究活動との重なりも4技能/思考力/言語・情報スキルを高める場として活用したいもの。

指導計画や授業設計にはカリキュラムマネジメントの発想が必要です。

2017/11/15 公開の記事をアップデートしました。

❏ 読んで理解したことを表現する力はリテリングで

読んで理解したことを、自分なりにまとめて表現する力を養うのに最適な学習活動のひとつはリテリングであることに異論はないと思います。

読み取ったことを別の形で伝えるには、どの情報をピックアップして、どこに焦点を当てるかという判断も必要となりますので、その過程には思考の要素も含まれます。

レシテーション(暗唱)も学習内容の定着に効果的ですが、考えて自分なりにまとめ直すリテリングの方が難度ははるかに上がるものの、より実践的。本文の内容や生徒の状況によって2つを使い分けましょう。

指名した生徒に発表させるだけでは他の39人が傍観者になってしまいます。ペアやグループでの活動をメインにするのが好適かと思います。

活動する様子を観察しながら、誰に発表させるか決めていけば、そのときに本気で頑張っていた生徒に「認められる場」を与えられます。

ちなみに、宿題にして発表者を予め指名しておくのは避けるのが賢明。当たっていない生徒は取り組みへの意欲も持ちにくいはず。意図しないところで「勉強するな/しなくて良い」と言っているようなものです。


❏ リテリングをベースに意見構築に展開

生徒がリテリングに慣れてきたら、自分の考えや主張を一文加えるところから始めて、徐々に/段階的に活動を拡張していきましょう。

意見や主張には、当然ながら理由と根拠を示すことが求められますが、最初から複雑なことを求めても躓きがちです。

最初は「本文の内容に対して自分はどう思うか、賛成か反対か」というシンプルなところから始めるのが授業に採り入れるときのコツです。

スタートにした賛否や、シンプルな意見・主張に対して、
  • どうしてそう考えたのか
  • 根拠となる事実は何か
  • どんな反対意見が予想されるか
  • その意見に反対する人はどう考えているのか
  • その人たちに納得させるにはどうしたら良いか
といった具合に、問いを重ねながら最初の発言を段階的に拡張していけば、最終的には「読んで理解したことをもとに思考を積み上げ、その結果を表現する」という目標の達成に近づいていけるはずです。

一連の活動のゴールに、プレゼンテーションやエッセイライティングを設定することで、学び/取り組みの成果を「たな卸し」する機会を確保することも大切です。真剣に取り組んだ生徒には強い達成感を与えますし、個々の生徒の「成果」をシェアすることで相互啓発も働きます。

 ■ 生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発)


❏ ワンステップずつ拡張していくことのメリット

上のように問いを重ねながら話すこと/書くことを拡張していく方法であれば、それぞれの生徒の英語力や活動への習熟度などに見合った課題や到達目標を設定することができます。

第二段階をクリアできた生徒には、第三の問いを与え、それもクリアできたら第四段階へと進めていけば、各ステップで達成機会が持てます。

いずれかの段階で躓いたら、そこで中断し、その段階のクリアを目標に次の授業までの「個々の学習活動」の中で再チャレンジさせましょう。確認した結果に基づいてきちんと学びを仕上げさせることが肝要です。

次の授業までに仕上げに取り組む中で、生徒は一人ひとりが「授業で到達できたところの一歩先」に進むことができます。

段階を踏まずにいきなり「本文を読み〇語以上の英語で意見をまとめなさい」とした場合は、最初の何段階かがクリアできたとしても、生徒の中に残る印象は「課題を達成できなかった」だけです。

それでは、生徒は次に何をすべきか明確に捉えられず、メタ認知/適応的学習力(思考力の一要素)の獲得も進まないのではないでしょうか。


❏ 仕上げた答案は公開添削や相互評価の材料に

宿題にして仕上げてきた答案は、先生が点検した上で公開添削に使ったり、相互評価の材料にすることで、思考の欠落や表現の不備を解消する方策を学ばせる機会としましょう。

採点基準を示して自己採点/自己添削を行わせる必要もあります。従来型の学ばせ方が、自己答案を客観的に評価する力を十分に養えていない可能性は、別稿でも触れた通りです。

 ■ 提出物は丁寧に添削して返すのがベスト?

先のリテリングやペア/グループワークがうまく行っても、そこで学習活動を止めてしまっては、学習の成果を確かなものにはできません。

仕上げたものを点検して、次のステージを目指すには何が必要か課題形成をしっかり行うことが大切です。限られた指導機会/授業時間で最大成果を得るカギは、「やりっぱなしにしない」ことだと思います。


❏ 他教科/探究活動のインプット/アウトプットにも

夏休みなどの長期休業期間の課題としてサイドリーダーを与えたり、普段の多読指導で副教材を使ったりするケースも多いかと思います。

しかしながら、こうした指導の効果測定が客観的に行われているケースは少なく、自学でどこまで英語が学べているか疑問が残るところです。
もし、「読まされている」というやらされ感が前面に出たら、主体的に学びに向かう姿勢/読むことへの意欲を却って弱めてしまいそうです。

こうした弊害を避けるためにも、多読の教材は「興味のあるものを生徒自身に選ばせる」のが好適です。

総合的な探究の時間で先行文献に当たらせるときも、一つは英語で書かれたものを選ばせたりしてみても面白いと思います。探究の成果をまとめるときにサマリーは英語で書かせるケースも増えていますので、そこで必要な語彙や言い回しを学ぶのにも打ってつけです。

インターネットや図書館で英語で書かれた資料を探して読ませるのは、特に、研究開発大学を目指す生徒が進学後に必要となる力を獲得させる絶好の機会ではないでしょうか。

英文中にわからないところがあっても、「知りたい」が先行するため、自分から調べて解消しようとしますし、どうしてもわからず手詰まりになれば職員室を訪ねて先生に訊けば良いだけの話です。

他教科で学習していることや、今後予定されている体験学習/学校行事の下調べに関連付けて、英語を「読み」、その内容をまとめて「書く」という活動を、学校全体の指導計画の中に組み込めば、英語科でわざわざサイドリーダーを指定しなくても十分な言語活動の機会が作れます。

 ■ カリキュラム全体の中での英語の位置づけと授業デザイン



意外なことに、英語(外国語)は、「生徒が授業を受けて学力や技能の向上を実感する度合い」と「板書や資料が整理されているか」の相関が他教科以上に強固です。言語活動が重要なのは当たり前ですが、その前提を作るためにも「確かな伝達」が欠かせません。

押さえるべきところは目でも確認させ、手を使わせることで観察をより精緻にし、記憶への刻み込みも強化したいところ。復習で知識の定着を図るにしても、いっぺんに厚塗りするよりも、間を空けて漆を塗るように薄く何度も重ねていく方が、ひび割れや剥がれもない仕上がりになるはずです。

また、文法や構文の体系的理解にもしっかり/段階的に取り組ませないと先で躓いたり、どこかで技能の伸長にストップがかかります。単元で学んだことの体系化に挑ませることは、情報を集め、知に編む力(情報編集力)を高めるのにも打ってつけの活動です。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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