国公立大の二次出願が始まるのも間もなくです。第一志望を貫徹できれば何よりですが、センター試験の思わぬ結果にセカンド・ベストへの切り替えを検討しなければならないケースもあります。最終局面での出願指導に当たるこちらとしても、「進学先を確保してあげたい」という気持ちの一方で、「優先すべきはあくまでも本人が抱いていた進路希望の実現」との思いもあり、大いに頭を悩ませます。 ❏ 選択肢を広く知り、十分に吟味してきたか 生徒がこれまで認識していなかった大学(たとえば地方の国立大学)でも、学びたかったことが学べることは少なくありません。 しかしながら、当の本人がそのことを、頭の中で理解するだけでなく、気持ちの中でも納得して受け入れていないと、セカンド・ベストの選択は単なる「進学先の確保」に過ぎなくなってしまいます。 首尾よく合格しても、新たな居場所に納得できなかったり、第一志望に進むことができていたらという想像(妄想?)から離れられなかったりしては、せっかく得た環境も活かしきれません。 2年生の夏あたりから3年の秋までの志望校選定に至る一連のプロセスの中で、学部・学科や学問を軸にした大学研究にじっくり取り組んでいたら、納得のいく選択肢をいくつも持てていたはずです。 時計を巻き戻すことはできませんが、センター試験の自己採点が終わってからリサーチの結果が戻るまでの数日の間だけでも、進路選びの中で考えてきたことを今一度整理しておくことはできそうです。 ❏ たとえ浪人するにしても 浪人するにしても、合格校があってそれを蹴ってきた生徒の方が浪人生活が成功しやすいと仰る方もいます。 予備校に勤めていた身として、確かにその傾向はあるように感じていますが、どこでもいいから合格しておけばそれで浪人後の伸びが倍加するというわけではありません。 最後まで粘って力をつけようと努力する中で、それまでの学びの穴を埋めてきたこと、自分なりの学び方・頑張り方を身につけてきたことが、伸びる土台になっている可能性もあります。 となると、受かりそうなところを選んで出願し、合格通知をもらうだけではあまり意味がなさそうです。 ここでもやはり、心で納得し得るセカンド・ベストを見つけ、受験当日まで頑張り続けることが重要ということになるのではないでしょうか。 ❏ 自分の気持ちと置かれた状況をきちんと把握 家庭の事情で浪人が許されないのか、第一志望へのこだわりと学びたいことへの思いはどちらが強いか、自宅を離れることができるか、奨学金はもらえるか、…。 選択に臨むまでに把握しておかなければならないことは沢山あります。 生徒一人ひとりが、自分自身の考えと、自分が置かれている状況とをあらかじめ整理しておくこともまた、出願までの短期間で正しい判断をするためには欠かせません。 第一志望への思いがどれだけ強いか(=志望理由が明確で、他の進路ではマッチしない)、浪人できるのかなど、重要な「条件」を生徒本人も曖昧にしていることは思いのほか少なくありません。 生徒は浪人できないと言っているにもかかわらず、保護者の方は一浪までならOKとしているケースでは、家庭での対話不足で判断の材料を取り違えていることになります。 センター試験の結果が出て追い込まれてからでは、冷静な判断ができません。本人も保護者も、ときには教員すらも「この場に至っては仕方なし」という、"覚悟だけでの判断"をしてしまうことがあります。 勉強の合間に頭の中を整理したり、食事中に家族と話し合ったりできるよう、確認しておくべきことをリストにして生徒に提示しましょう。 自分の気持ちと環境をしっかり捉えていれば差し迫った場面でも正しい判断ができますし、その準備ができるのは今を置いて他にありません。 当たり前ですが、受験する可能性がある学校の願書も改めて取り寄せなければならなければ慌てるだけです。予期せぬ提出書類があれば、その手配に時間を取られ、追い込みにかけるべき時間が失われます。 ❏ 今年の反省を次の学年団にしっかり伝える すでに出願が始まろうとしているこの時期に、敢えてこんな記事を書いているのは、これから数週間の出来事を客観的に見ていただきたいという思いがあってのことです。 これから数週間は、様々な選択と判断に迫られる瞬間が続きます。その中での反省を生かしてこそ、来年度の指導で同じ轍を踏まずに済みますし、次年度以降の進路指導計画の改善にもつながります。 これまでの指導や生徒に取らせた準備に不足がなかったか、冷徹な目で観察し、整理していきましょう。 年度末にかけては来年度の進路指導計画を固めていく時期です。出願校選定で困窮した生徒の姿から、次学年に伝えるべき知恵を抽出できるかどうかは、指導計画の妥当性を大きく左右します。 現2年生の担任団が受験学年を指導したのは、1サイクル前のことであり、その時の経験で事に当たるのでは不足が生じるのは必定です。 今年の受験生が経験した困難がどこに起因したか発見できれば、最終学年に進級させるまでにこれまでの指導の不足を補完し、成果を確かめることもできるはずです。 当然ながら、年度末の進路報告会では、受験の結果だけではなく、指導を通じて得られた「成果と課題」をしっかり伝えることが大切です。 |
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進路希望の具体化と実現へ
1 選択の機会ひとつひとつに備えさせる1.1 大きな分岐(選択の機会)を前に整えるべき指導機会 1.2 先に控える選択の機会をいつ認識させるか 2 進路希望の実現をあきらめさせない2.1 どこまで伸びるか見立てる 2.2 第一志望をあきらめさせない指導 2.3 生徒が互いの頑張りを支え合う集団作り 3 早すぎる選択は視野と可能性を狭める3.0 進路を意識させるタイミング(序) 3.1 進路を意識させるタイミング(その1) 3.2 進路を意識させるタイミング(その2) 4... ...続きを見る |
現場で頑張る先生方を応援します! 2018/01/26 05:25 |
最終局面での進路指導〜出願校選定から卒業まで
いよいよセンター試験の本番を迎えます。ここから先は出願から試験の本番を経て、出た結果を踏まえた最終的な決断(進学先の決定)に臨み、卒業を迎えることになりますが、この大切な最終局面での進路指導について、考えるところをまとめてみました。 ...続きを見る |
現場で頑張る先生方を応援します! 2019/01/15 06:51 |
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