進学先の確保と進路希望実現のはざま

進路希望の実現に向かう最終フェイズで、生徒一人ひとりが最後まで第一志望を貫徹できれば何よりですが、大学入学共通テストの結果などでセカンド・ベストへの切り替えを検討しなければならないケースもあります。出願指導では「進学先を確保してあげたい」と「初志を貫徹させたい」の狭間で先生方も判断に迷うことが多いのではないでしょうか。

いざ最終選択という場面を迎えて、判断を誤らない(=後悔しない選択ができる)ようにするには、様々な状況を想定した上で「納得のできる選択肢」を用意するとともに、判断基準を作っておく必要があります。

2018/01/23 公開の記事を再アップデートしました。
(前回アップデート:2019/01/09)

❏ 選択肢を広く知り、十分に吟味してきたか

生徒がこれまで認識していなかった大学(たとえば地方の国立大学)でも、学びたかったことが学べることは少なくありません。

しかしながら、当の本人がそのことを、頭の中で理解するだけでなく、気持ちの中でも納得して受け入れていないと、セカンド・ベストの選択は単なる「進学先の確保」に過ぎなくなってしまいます。

首尾よく合格しても、新たな居場所に納得できなかったり、「もし第一志望に進むことができていたら」という想像(妄想?)から離れられなかったりしては、せっかく得た環境も十分に活かしきれません。

2年生の夏あたりから3年の秋までの志望校選定に至る一連のプロセスで、学部・学科調べや学問を軸にした大学研究にじっくり取り組んでいたら、納得のいく選択肢の候補もいくつか見つけていたはずです。

今さら時計を巻き戻すことはできませんが、進路選びの中で自ら考えてきたことをもう一度整理しておくことはできるのではないでしょうか。志望校への思いも改めて強く持つことができるはずです。

大学入学共通テストまでは勉強に集中させたいところですが、自己採点が終わってからリサーチの結果が戻るまでの数日間では慌ただしい上に動揺などもあって冷静な判断は難しそう。となると、如上の整理の好機は2学期の期末が終わった直後ということになりそうです。


❏ 浪人して捲土重来を期すという選択肢でも

進路指導担当の先生方の中には、「浪人するにしても、合格校があってそれを蹴ってきた生徒の方が浪人生活が成功しやすい」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

予備校に勤めていた身として、確かにその傾向はあるように感じていますが、どこでもいいから合格しておけばそれで浪人後の伸びが倍加するというわけではありません。

最後まで粘って力をつけようと努力する中で、それまでの学びの穴を埋めてきたこと、自分なりの学び方・頑張り方を身につけてきたことが、浪人してからの伸びの土台になるという方が実態に近いと思います。

となると、受かりそうなところを選んで出願し、合格通知をもらうだけではあまり意味がなさそうです。「ダメもと」が脳裏にあっては、第一志望にこだわっても本気で頑張る気持ちは維持しにくいようです。

ここでもやはり、納得し得るセカンド・ベストを見つけて、受験日まで本気で頑張り続けることが重要ということになります。


❏ 自分の気持ちと置かれた状況をきちんと把握

家庭の事情で浪人が許されないのか、第一志望へのこだわりと学びたいことへの思いはどちらが強いか、自宅を離れることができるか、奨学金はもらえるか、…。

選択に臨むまでに把握しておかなければならないことは沢山あります。

生徒一人ひとりが、自分自身の考えと、自分が置かれている状況とをあらかじめ整理しておくこともまた、出願までの短い期間で正しい判断をするためには欠かせません。

第一志望への思いがどれだけ強いか(=志望理由が明確で、他の進路ではマッチしない)、浪人できるのかなど、重要な「条件」を生徒本人も曖昧にしていることは思いのほか少なくありません。

生徒は浪人できないと言っているにも拘わらず、保護者の方は一浪までならOKとしているのもよくあるケース。普段の対話が不足したことで判断の材料を取り違えていることになります。

大学入学共通テストの結果が出て気持ちが追い込まれてからでは、冷静な判断ができません。本人も保護者も、ときには先生方も「この場に至っては仕方なし」という、"覚悟だけでの判断" をしがちです。

勉強の合間に頭の中を整理したり、食事中に家族と話し合ったりできるよう、確認しておくべきことをリストにして生徒に提示しましょう。

自分の気持ちと環境をしっかり捉えていれば、差し迫った場面でも正しい判断がしやすいはず。そのための準備ができるのは、まさに今です。

当たり前ですが、受験する可能性がある学校の願書なども改めて取り寄せなければならなければ慌てるだけです。予期せぬ提出書類があれば、その手配に時間を取られ、追い込みにかけるべき時間が失われます。


❏ 今年の反省を次の学年団にしっかり伝える

年明けからの2か月、特に大学入学共通テストの当日からの数週間は、様々な選択と判断に迫られる瞬間の連続です。

受験生の指導に注力する中でも、次年度以降の進路指導計画の改善に繋げるために、少し離れたところにもう一人の自分を置き、対処している問題がなぜ生じたのか、解決には何が必要なのか/だったのかなどを冷静に考えながら、指導を通した所感を記録に残していきましょう。

これまでの指導や生徒に取らせた準備に不足がなかったか、洗い出して整理しておき、対処を考えていかないと、来年度以降も同じ轍を踏むことになりかねません。

年度末にかけては来年度の進路指導計画を固めていく時期です。出願校選定で困窮した生徒の姿から、次学年に伝えるべき知恵を抽出できるかどうかは、指導計画の妥当性を大きく左右します。

現2年生の担任団が受験学年を指導したのは、1サイクル前のことであり、その時の経験で事に当たるのでは不足が生じるのは必定です。特に今年(2021年度入試)は大きな変革を経験しますので、そこでの気づきと反省は貴重な教材になるはずです。

今年の受験生が経験した困難が何に起因したものか、発見/特定できれば、最終学年に進級させるまで/進級直後に指導の補完を図れます。

当然ながら、年度末の進路報告会では受験の結果に加えて、指導を通じて得られた「成果と課題」をしっかり伝えることが大切。そのためにも最終局面での指導の記録とその時々の所感は確実に残すべきです。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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