解いたことで成長ができる問題こそが"良問"

どんな問いを立てるかは、授業デザインの要です。学習目標を認識させるにも、答えを仕上げる中で学びを深く確かなものにするにも、問いは大きな役割を果たします。

予習に取り組ませるときも、範囲を指定して「予習しておきなさい」と指示するだけのときと、指定範囲をしっかり勉強すれば答えられる問いが用意され、その答えを作るために教科書や参考書に当たるのとでは、学びの質に大きな違いが生じます。やり終えたときに生徒が得る達成感の大きさ(=次に向けたのモチベ―ション)も違ってきます。

答えを作ろうとする中で新たな気づきがあったり、それまでバラバラだった認識がストンとひとつにまとまったりするような「良問」を用意できれば、取り組んだことでの実りはさらに大きくなるはずです。解いたことで成長ができるような問題を用意してあげましょう。

2018/01/24 公開の記事をアップデートしました。

折しも、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、生徒が自学自習する機会は増えます。自習用の課題を用意するときも、教材(教科書、プリント、動画)ごとに、それらを学んだ後で生徒が自力で答えを作るべき「良問」をきちんと用意したいところです。

学びに方向性を持たせられますし、学ぶことへの意欲も刺激しやすくなるはずです。提出期限後は、先生が作った模範解答に添えて、生徒の手による「好適な答案」もシェアすれば、相互啓発の材料に利用できるのではないでしょうか。

休校明けで学校に日常が戻ったときも、どれだけ密度の濃い学びを授業内外に作れるかがスタートの遅れをどこで取り戻せるかを決めるはず。良問の配列で深く、効率的な学びをデザインしましょう。



❏ まずは、出題者/授業者が面白いと思う題材

解くことが成長に繋がるかどうかのポイントにはいろいろありますが、まずは何といっても、興味を刺激し得る内容、題材であることです。

題材を探そうとするとき、「生徒はこれを知っているかな、理解できるかな」という視点でフィルターをかけがちですが、出題者自身が内容に面白さを感じるかどうかを最初のふるいにした方がよさそうです。

生徒の既習範囲を超える部分が大きいからと、せっかくの好材料を引っ込めてしまっては、より良い学びは作れません。

知らないことは調べさせれば良いだけの話です。その方が学習方策の獲得も進み、学習者としての自立が進むはずです。

問題の出来栄えは、題材選びでほぼすべてが決まります。読んで面白くなければ、解いても面白いはずはありません。

良い材料を調理法がダメにすることがあるように、設問の立て方でダメな問題になることはあっても、ダメな題材はどのように設問を立てたところで良問にはなりません。


❏ 新たな着眼点に気づかせる問いや選択肢

設問がなければ読み飛ばしていたところにも、問われて改めて考えてみると思わぬ気づきがあるものです。

ある知識の有無を問う設問でも、知らなかったことを知る機会になりますが、それまで持っていなかった着眼点に気づかせてくれるような問いにこそ、「やられた」と感じることが多いように思います。

問い方というのは、なかなか難しいもので、自分で問いを立てようとしても、それまでに持っていた発想に縛られてしまいます。

出題研究をするとき、何を聞いているか(=どのような知識を求めているか)以上に、どこにポイントを見つけ、どのように訊いているかに着目して、問い方/尋ね方を学び、その幅を拡げていくことが授業者・出題者としてのスキルアップにつながりそうです。


❏ 出題研究を通して、生徒に解かせたい問いを集める

内容的に面白い題材も、ハッとさせられる問い方も、集めたり作り上げたりするのは容易ではありません。

大学入試でも高校入試でも、あるいは中学入試でもかまいませんが、入試の出題担当になった顔も知らぬ方々の努力の成果を利用させてもらいましょう。

学問の先端を日々研究している方々は、普段目を通す文献などの種類も検索をかける範囲も違うこともあり、普段、私たちがふれるのとは違う題材を引っ張ってくることがあります。

問い方にしても、専門ならではの発想の賜物か、同じ題材でもこんな捉え方もあるのか、ここにも着目すべき点があるのかと、気づかされることが少なくありません。


❏ どの場面で生徒に解かせるか考えてみる

そうした問題を見つけたら、生徒にもその問いにチャレンジする機会を与えてあげましょう。自分の答えを作る中でこそ学びが生まれます。

何の準備もせずに、プリントにして教室で配ってみても、生徒が面白さを感じてくれたり、成長に繋がったりするとは限りません。

しっかりと生徒側でのレディネスを調えてから挑ませないと、せっかくの好機が活かせません。

  • どの単元で扱うか、まとめに使うか導入に利用するか。
  • その問題に挑ませるまでにどんな仕込みをしておくか。
  • 生徒が書き上げた答案を、どんな基準に照らして採点するか。

教室に持ち込む前に考えるべき事は山ほどあります。採点基準だって、じっくり読ませ活用すべき教材です。

単元ごとの時間配分や生徒の家庭学習の負担なども考慮して、年間指導計画のどこに配置するのが最適か判断してから実行に移すかどうかが、その一問を解いたことが生徒の成長になるかどうかの分岐点です。

■ ご参考記事:
  1. 入試問題を授業の教材に使うときに
  2. リモート学習の可能性と十分な成果を得るための前提要件
  3. 学習目標は解くべき課題で示す
  4. 答えを仕上げる中で学びは深まる
  5. 学力観の変化は良問と悪問の分け方を変える
  6. 情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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