論述問題対策の前段階~要約の練習(後編)

答えが一つに決まらない問題や、多量の文章や資料を読ませてそこで理解したことを元に思考させ、その結果を論述させる問題が増えてくるとなると、その前段階である要約の力はしっかり養っておきたいところ。

発表や答案を、生徒自身や生徒相互で評価させることで、より良い要約にするために何が必要かを、生徒が自ら気づけるようにしていくことが重要であるのは言うまでもありません。


❏ 採点基準を正しく適用する力を養う

先生がいくら丁寧に評価を行っていたとしても、その結果を示すだけでは、生徒が自己の答案/発表を評価する力は養えません。

かといって、生徒による相互/自己評価の練習を重ねるだけでは、単に場数を踏んだだけ。評価の力が養えている保証はありません。

"評価規準は使いながらブラッシュアップ"でも申し上げましたが、採点基準を正しく適用する力を養う必要があります。

振り返って点検していただきたいのは、
定期考査や校内実力テストにおける要約問題や意見論述問題などの採点基準(評価の観点と各観点の評価規準)が、3ヵ年を通して、きちんと(=段階性や整合性を備えたものが)用意されているか
ということです。

"考査問題の改善が授業も変える"でも書いた通り、先生方の頭の中にはそれぞれの学力観があり、それをもとに授業や考査が作られます。

万が一、考査での採点基準が明確でない/場当たり的に作っているとしたら、普段の授業での評価基準にもブレが生じているはずです。


❏ 3ヵ年を通して、整合性と段階性を備えた採点基準を

課題に挑むたびに、恣意的に採点基準が設定されるのでは、生徒は混乱したり、余計な誤解を抱いたりするかもしれません。

また、要約力や論述力が高まってきたら、採点基準の更新でさらに上を目指す動機を与える必要もありますよね。

また、基礎練習の段階ではあえて着目を求めなかった観点も、成長を見極めながら、採点基準の中に組み戻すべきタイミングを探るべきです。

3ヵ年を通した指導計画の中で、それぞれのフェイズで用いる採点基準が、段階性をもってきちんと用意されているかはとても大事なこと。

当然ながら教員間でも共有されていなければ、科目を跨ぎ、学年間を通した指導のシナジーは生まれません。


❏ 要約とは何かをきちんと理解させているか

前稿で書いたように、考査問題の改善を図ることで、要約力を高めることへの十分な意識を持たせたら、実際の教室でも要約練習の場をしっかり整える必要がありますよね。

しかしながら、
  • 要約とは何をすることか
  • 仕上がりはどんな要件を満たす必要があるか
  • どのような基準で点数化されるのか
を生徒にきちんと認識させないまま場数だけこなしても、指導効果は薄く、投資量(時間と労力)に見合った効果は得られません。

生徒もまた、自分の答案を客観的に評価して、自分の成長を実感できないのでは、達成感も得られず、要約力を高めるモチベーションを維持できなくなってしまいます。


❏ 練習を重ねながら採点ルーブリックを完成させる

幾度かの要約練習を重ねながら、生徒による要約例をもとに答案評価/相互評価を行いながら、好ましい要約を成立させる条件を一つひとつ見つけさせていくことが大切です。

一度の練習で学べるポイントは1つか2つであったとしても、回数を重ねるうちに、答案が満たすべき条件を網羅することもできます。

やがてはリストにまとまって「要約問題の採点ルーブリック」が生徒の手元に出来上がります。

半年なり、1年なりの指導期間を想定して、いくつのポイントに気づかせたいかを数え上げておき、全授業回数を割ってみれば、最小限、何度の練習機会を設ければ良いかの見込みも立つはずです。


❏ 実地の経験の中で作ったからこそ使える基準に

ひとつの観点・基準についても、回を重ねる中で、様々な答案例に照らしながら、そこで求められていることへの理解が深まります。

この積み重ねの結果、生徒は自己答案にも採点基準を正確に適用できるようになります。

具体例の中で一つひとつ理解してきた規準であるだけに、在りものを使わせるより生徒にとって遥かに「使える道具」になっているはずです。

また、答案を比較しながらの公開添削で、生徒が自らポイントを見つけることもあるでしょう。先生が予め作っておいたものを超えるような採点基準が出来上がることだってありえそうです。

 ■ 進歩を止めさせない自己評価の在り方


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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