機械翻訳がここまで進歩すると…

連休中にスマホを新調したついでに、Google翻訳アプリをインストールしてみました。久しぶりに使ってみると、音声認識の性能も各段に改善されていますし、翻訳の精度も初期のバージョンとは雲泥の差です。


❏ 英語を学ぶことに新たな意味と動機が必要かも

もはや、生活レベルなら十分に実用的であり、英語学習に膨大な時間を投じるよりも、アプリの使い方を覚えた方が合理的という意見がでてきても不可解ではありません。

生徒にしても、外国語運用力を獲得・向上することを自己目的化していては、苦労して勉強することに自分の理由を見つけ出せないのではないでしょうか。

外国語を学ぶことに、新しい意味と動機を見つけさせていくことも必要かと思われます。


❏ 久しぶりにグーグル翻訳を使ってみたら

画像右のスクリーンショットは、スマホに向かってしゃべったのをリアルタイムで英語に翻訳させたものです。

文末のピリオドがないのは見逃すとして、和文英訳問題なら、満点をあげられる答案ですよね。

右肩にある「英語」をタップすると、ターゲット言語が選べますが、サポートしているのは103か国語。

どんなに語学的センスを持った人でも、生きているうちにこれだけの言語を身につけるのは不可能かと。

ちなみにスピーカーアイコンをタップすると翻訳した結果を音声で読み上げてくれます。

「音声会話モード」は、2つの言語を自動で認識してリアルタイムで翻訳して読み上げるというもの。騒音の中でも発言者を聞き分け、それぞれが何語を話しているか自動で判別する機能も実用段階が近いとか。

全員が共通して理解できる言語が一つもなくても相互コミュニケーションがリアルタイムに成立する時代はそう遠くないような気がします。


❏ 利用可能な場面が増え、言葉の壁は低くなる

現状では、長い文章を読み上げてみると音声認識がついてこないようですが、これはあくまでも技術の問題。いずれは解消されるはずです。

ディープラーニングの技術はますます進化するでしょうし、Google 翻訳コミュニティに集まる翻訳結果へのフィードバックは、集団知として翻訳の精度を今後も飛躍的に向上させていくはずです。

現時点までの進化を考えると、それほど遠くない将来には、英語に限らず他言語の運用能力はスマホの助けを借りて、人間は別の知的活動にエネルギーを集中できる環境が整いそうです。


❏ 技術の進歩は、人に求められる能力を変える

電卓が登場して、暗算やそろばんに習熟しないと生活の中で立ちいかないという状況は解消されました。簿記だって、複雑な計算や面倒な転記は会計ソフトウエアが代わりにやってくれます。

その結果、技術や知識を習得するのに必要だった時間は、新たな価値を作りだす他の活動に振り向けられるようになりました。

道具の進化は、人間に求められる能力やエネルギーを投じるべき活動の在り方を変えてしまいます。

機械による自動翻訳の進化もまた、人間がよりよく生きるために身につけておくべきことを大きく変えようとしています。外部検定による4技能の測定にばかり気を取られている場合ではないような気がします。


❏ 何を身につけさせていく必要があるのか

翻訳は機械がやってくれるとしても、そこでアウトプットされたものを読んで理解する能力を持たなければ、どうしようもありません。

大学入学共通テストでは、まさにこの能力が試されます。

物事を理解するには前提となる知識や理解が必要であり、各教科に固有の学習内容をきちんと学ばせる必要には変わりはありません。

同時に、学び方そのものを学ばせ、「巨人の肩の上」に登れるだけの技術と体力を身につけさせる必要もあるでしょう。

情報を集め、取捨選択し、目の前の課題を解決していくには、課題解決学習や探究活動で培われる能力がこれまで以上に求められます。

新しい課題が続々と生まれる中で、既存の知識や理解だけでは立ちいかなくなる以上、新たな知を作り上げる方策を学ぶことも必要です。

協働で課題解決に当たるなかで獲得していく協働性や多様性も、これからの時代をより良く生きる上では欠かせないものになるはずです。

  1. 教科書をきちんと読ませる
  2. 教科固有の知識・技能を学ぶ中で
  3. 新テスト対応にも探究活動は土台となる
  4. 『TOK(知の理論)を解読する』を読んで
  5. 学力の三要素とは~もう一度考えてみました
  6. 多国籍化する社会での共生と協働
  7. 新しい道具は、思考法や行動様式も変える



英語は早晩、目的科目としての地位を失う可能性があると"探究活動・課題研究と手段科目としての英語学習 "で書きました。海外研修や留学も、語学習得のためというより、多様な価値に触れることや外から見た日本の再発見といった目的にシフトしていくものと思われます。

新学習指導要領への移行を見据えて、3ヵ年/6ヵ年の教育活動のグランドデザインを描き直すべきときが迫っています。その中で、限りある教育リソースをどう配分していくか改めて考えるべ局面を迎えています。

英語学習についても、機械翻訳の精度と利便性は驚異的なスピードで進歩していることを踏まえると、次の学習指導要領で学んだ生徒が出ていく10年後の社会をイメージしておく必要がありそうです。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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