できない? やらない? やらせてない?

別稿「"丁寧に教える" ことを取り違えていないか」でも触れましたが、本来ならば生徒自身に挑ませて完遂を求めるべきことを、先生が不用意に先回り/肩代わりしてしまうと、生徒は自力でできるようにならなければいけないことをいつまでもできないままだったりします。

学習者としての自立を促すためにも、主体性の及ぶ範囲を膨らませるためにも、先生方ご自身がこれまでの授業を振り返り、生徒にやらせずに先生が肩代わりしていたことがないか、洗い出してみましょう。

  • 生徒にはできないと思い込んでいたことも試しにやらせてみたら思いもかけず良くこなしてくれた

  • 自分から進んでやらないだろうと思っていたことも、その必要性や楽しさに気づいたとたんに自分で取り組むようになった

といった場面を実際に目にして「これまではやらせていなかっただけかも」と気づくことも少なくありません。


2018/06/27 公開の記事をアップデートしました。

❏ まずは、テクストを自力で読んで理解するところから

自力で教科書や副教材を読んでその内容を理解することは、どの生徒にも出来るようになってもらう必要があることですが、教室を覗いてみると、そうした活動に取り組ませていないことが多いように見えます。

やらせてみないことには、できるようになりませんし、できて然るべきことなのに自分はできていないという認識を生徒が持たないことには、できるようになる必要性も感じないのではないでしょうか。

新課程のもとでの入試では、「学習型問題」も頻繁に登場するようになるはずです。生徒が教科書を読む前に、先生が先回りして説明するのでは、生徒は、教科書や資料などのテクストやデータを自力で読んで理解する力を身につけられず、新タイプの問題への対応に不安を残します。

解くべき問いを示しでた上で、「この資料を読んで自分なりに答えをまとめてみなさい。隣と相談してもいいよ」と指示をしたら、もしかしたらあっさりと出来てしまうかもしれませんよね。

自分で調べて答えを見つける楽しさを知れば、学習者として一歩成長したということ。適切な問いを与えるだけで、自力で理解と解決を試みる姿勢を見せてくれるようになるのではないでしょうか。

 ■ 教科書をきちんと読ませる

もう一歩進んで、読んで理解した中に「問いを立てる」ことにも挑ませてみたら、さらなる成長を見せてくれるかもしれません。書かれていることに問いを立てるというのは、テクストとの対話そのものです。

 ■ 生徒に問いを立てさせる
 ■ 質問を引き出す~学びを深め、広げるために


❏ 生徒の可能性を低く見積もらず、まずはやらせてみる

予習中心の授業に転換を図りたいのに「うちの生徒に予習を求めても」と躊躇しておられる先生がいらっしゃいましたが、次回の予習ができる状態を作って授業を終えるよう、仕掛けを講じてみれば、案外、あっけなくできてしまうかもしれません。

まずは、やらせてみなければ本当にできないのか確かめられませんし、工夫を凝らしながらやらせ続け、できるようにさせていくのが指導者の仕事ではないでしょうか。

やらせてもみずに「生徒には難しいかな」「ちょっと無理かな」と慮って、先回りして教えたり、お膳立てを整え過ぎたりすることが、生徒の能力発現と成長の機会を奪ってしまいます。

できるようになって欲しいことなら、まずはやらせてみましょう。

たとえ最初は一部の生徒しかできなくても、生徒が互いの取り組みを見るうち、自分なりのやり方を身につける生徒が次々と現れるはずです。

そもそも、先生ができていること(=肩代わりしてやってあげていること)は、生徒にも大人になるまでのどこかで、同じことをできるようになってもらわないことには、社会が世代を重ねて後退してしまいます。


❏ できるようになったことの自覚が更なる挑戦意欲に

何か新しいことができるようになれば、達成感もあり、新たに獲得した能力やスキルをつかって何かする場面を求める気持ちも生まれます。

さらに高度な課題に挑みたいとの欲求が生まれたということです。その欲求を満たしてあげれば、モチベーションは更にアップします。

学びの機会のたびに、しっかりと振り返りをさせて、新たにできるようになったことの「たな卸し」をさせるようにしましょう。

練習や工夫を重ねて新たな能力やスキルを獲得しても、実際にそれを使ってみる機会がないと、獲得したことそのものを認識していないこともありますので、学んで身につけたものを活用する機会は、欠かさず用意してあげたいものです。

 ■ 習ったことを使ってみる機会

授業の中で新たにできるようになったことの少し先に、次のハードルを設定して挑むように促すことも、できること/生徒の主体性が及ぶ範囲を広げていくことに通じます。


❏ 何がどこまでできるのか、観察を通じて見極める

生徒たちが小中学校ですでに経験して方法を身につけていることも沢山あるはずです。

指導は、その先を目指して設計すべきもの。まずは、様々なことをやらせてみて、生徒が何ができるようになっているか観察する機会を持たないと、その後の指導を考えるときの見極めを誤ることもありそうです。

他の先生の授業を参観してみたら、自分のクラスではやらせてみたこともないことに、生徒が想像もしないほどの活力を持って取り組んでいる姿をみて驚くことも少なくないはず。

学習活動に生徒が取り組む場面を様々と作り、生徒の行動を観察するところから、指導方法や授業設計を考えていく必要があると思います。

■ 関連記事:
  1. できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしない
  2. 不用意な“待て”をかけない(全4編)


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

この記事へのトラックバック

  • 学習目標は解くべき課題で示す

    Excerpt: 日々の授業で学習目標を明示することはとても大切であり、実際の教室を覗いてみても、目標をきちんと示そうとする先生方の姿も以前より多く見かけるようになったように感じますが、従来の発想のまま、形式を整えるだ.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-06-28 07:22
  • 大学入学共通テストにおける問題作成の方向性から

    Excerpt: 先月の中旬に、大学入試センターから「大学入学共通テスト」における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨についてとの発表がありました。 Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-07-03 06:10
  • 対話が思考を育み、深い学びを実現する(まとめ)

    Excerpt: 2020年以降の新しい入試に初めて挑む学年がこの春に高校生となり、新課程で学ぶ生徒も来春には中学生となる中、新しい学力観にそった、教え方の転換を図るべく、各地の学校では様々な工夫がなされています。 Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-07-06 04:30
  • 学ぶ理由/自立した学習者

    Excerpt: 1 学び続けられる生徒を育てる1.1 教室は、興味が生まれる瞬間を体験して学ばせる場 1.2 5教科7科目に挑ませることの意味 1.3 学び続けられる生徒を育てる 1.4 学びの広さと深さ 1.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-08-08 06:56
  • 定期考査の失敗を繰り返させない~リベンジ自習会

    Excerpt: 日々の学習の中で「伸びている実感」を抱いたり、自らの進路希望の実現に展望を持てたりすることは、学び続ける意欲を維持するために欠かせません。少なからぬ生徒が模試成績を通じてそれらを感知しますが、模試の点.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-09-13 04:52
  • 苦手意識を抑えて、伸びている実感を持たせる

    Excerpt: 授業を受ける中で「学力や技能の向上」「自分の成長や進歩」を実感できている生徒は、高い確率でその科目に新たな興味や関心を見出していくというデータがあります。逆に、伸びている実感が得られなければ、その科目.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-10-02 08:38
  • 学習方策は課題解決を通して身につく

    Excerpt: ある単元を学ばせるときに「不明を残さずに理解させる」ことだけを目的とするなら、先生一つひとつ丁寧に教えれば十分かもしれませんし、ある問いに正解を導くだけであれば、手順をきちんと伝えさえすれば当座の目的.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-10-11 08:12
  • 不用意な“待て”をかけない #INDEX

    Excerpt: せっかく動き出そうとしている生徒に不用意な"待て"をかけてしまっている場面はないでしょうか。生徒は高校生活で50分☓30単位☓35週☓3年でのべ2,625時間の授業.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-12-07 05:57
  • 活動性を高める方法と効果

    Excerpt: 1 活動性を高め、成果を可視化する1.1 アクティビティと学習効果 1.2 活動の成果を可視化する 1.3 練習場面での成果確認 1.4 できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしない 1.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2018-12-21 04:58
  • 学び方における守破離

    Excerpt: 生徒から「説明はわかりやすい」「とても面倒見が良い」「訊けば何でも答えてくれる」と言われて悪い気はしませんが、"自ら学び続けられる生徒を育てる"という目的に照らすと、如上の評価を受けたときの心地よさに.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2019-04-02 05:49
  • 科目の学び方や取り組み方の獲得

    Excerpt: 主体的に学んでいると言えるには、生徒本人が「学ぶことへの自分の理由」を持っていることに加え、自ら学び進められるだけの学習方策を獲得している必要があります。誰かに教えてもらわなければ勉強が進められない状.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2019-04-05 06:45
  • 戸惑いを抑える、約束事と個々の指示

    Excerpt: 何らかの行動を指示したときに、生徒が期待通りの反応をとれないことがあります。原因は様々ですが、大別すると「何を求められているのか把握しかねている場合」と「指示に応える態勢が整っていない場合」の2通りが.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2019-04-19 07:20