学習目標は解くべき課題で示す

日々の授業で学習目標を明示することはとても大切であり、実際の教室を覗いてみても、目標をきちんと示そうとする先生方の姿も以前より多く見かけるようになったように感じますが、従来の発想のまま、形式を整えるだけの目標提示に終始している授業も少なくありません。

単元名や指導案に書くような(=教員同士でしか了解し合えない)文言を板書しているだけの授業も割とよく見かけます。

生徒はそんなもんかと思っているのか、不満を表明するわけでもなく、黙ってノートに写していますが、果たして「本時の学習を通じて達成すべきこと」を正しく理解するのに役立っているのでしょうか。


❏ 生徒の目標=習ったことを使って課題を解決すること

指導案などでの「教える側にとっての指導目標」は、"○○について理解させる"という形で表現されることが多いようですが、これは生徒にとっての学習目標とは違うのではないでしょうか。

生徒は、新しい単元に書かれていることを学ぶことを目的としているわけではありません。

新しく習ったことを用いて、"自分ごと"としての課題を自力で解決できるようになることが、生徒にとっての学ぶ目的です。

ならば、学習目標を生徒に対して端的に示すには、「生徒自身が解を導くべき課題」をもって示すのが手っ取り早いし、最も効果的な方法と言えるはずです。


❏ 目標であるためには、達成を検証できることが要件

学習指導に限らず、目標が目標たりえるには客観的に達成を検証できることが要件です。「頑張ります!」は元気がよくて気持ち良い言葉ですが、単なる意思表明であり、目標を設定したことになりませんよね。

授業の冒頭で、「○○のメカニズムを知る」「登場人物の心情を理解する」と板書してみたところで、目標を提示したことにならないのは、達成検証の可能性を担保していないからです。

これに対して、生徒自身が解を導くべき課題(ターゲット設問)は、解けたかどうかが正誤によって明らかですし、採点基準に照らせば、どこはできて、どこができなかったか分析的に捉えることができます。

できたかどうかの判別が生徒自身にできることは、勉強を好きにさせる学ばせ方で触れた「何がわかっていないか確かめながら勉強する」 という 【モニタリング方略】 に持っていくにも欠かせません。


❏ ターゲット設問は授業の冒頭で板書する

学習目標を解くべき課題で示すときに心掛けたいことは、導入フェイズでしっかり示すことと、問い自体を板書することの2つです。

導入フェイズ(多くは授業の冒頭)で示すことで、学びを重ねる間ずっと生徒は学習目標を認識できるため、途中で説明や手順に不明が生じても、目指しているものと照らして理解力の補完ができます。

目的をもって学ぶ時間と、先生の指示に従っているだけの時間とでは、学びの密度も違います。

板書をするのは、書き写すことで一語一句に十分な注意を向けさせることに繋がるからです。

授業の冒頭で、余計な説明なしにターゲット設問を板書すれば、生徒はノートを取り出し書き写し始めますので、休み時間からの切り替えも上手にできるはずです。


❏ 生徒自身が問いを起こすことを予習の課題に

もう一歩、工夫を進めるならば、次の時間で扱う範囲を読ませ、そこに「自分なりの問いを立てる」ことを予習の課題とする方法もあります。

他人が作った問いが、生徒の琴線に触れるとは限りません。でも、自分が作った問いなら答えもきちんと出したいと思うものです。

問いを立てようと思えば、指定された範囲を自力で読んで理解しなければなりませんので、学習範囲をひと通り学んできたことになります。

期せずして、反転学習の要素も取り込んだことになります。

知らない語句を辞書で調べてきなさいという「作業型タスク」も結構ですが、問いを立てる宿題と比べてどちらが生徒にとって刺激的かは言うまでもないところではないでしょうか。

こう申し上げると「いや、うちの生徒には…」という反応がありますが、本当にそうでしょうか。

昨日の記事にも書きましたが、やらせてみると案外できるものですし、やらせないことにはいつまでたってもできるようになりません。


❏ コンピテンシーモデルに即した学習目標の提示法

本稿の冒頭で使った「従来の発想」という言葉の意味は、教える側が学力観の変化に対応していないという意味です。

PISA以降のパフォーマンスモデル(何を学んだか)からコンピテンシーモデル(何ができるようになったか)への転換は、別に目新しいことではないと思います。

生徒にとっての学習目標は習ったことを使って課題を解決すること、という「当たり前」が、それを表す用語とともに改めて明確に打ち出されただけではないでしょうか。

このように考えてみると、生徒にできるようになって欲しいこと、すなわち自力で解決してほしい課題を「学習目標」として示すことは、新しい学力観に沿った学ばせ方を実現する一つの方法と言えそうです。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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