生徒の意見や所感をシェアする

対話を通じた深い学びを実現するには、ペアやグループでの生徒同士の話し合いに加えて、問答を通じた「先生との対話」や、教科書や資料、副教材を問いを立てながら自力で読んで理解する「テクストとの対話」の充実も図る必要があるのは、昨日の記事で書いた通りです。

生徒同士の対話も、顔を突き合わせて交わす会話(話し合いや教え合い)だけではありません。

先生の発問に答えた他の生徒の意見や考え、あるいは他の生徒の発表に耳を傾け、それに対して自分の考えを作り上げることも立派に「対話の要素」を満たしているのではないでしょうか。


❏ 対話への参加姿勢を作る、先生からの問い掛け

他人の意見に触れて自分の考えを作り直す習慣を身につけさせるカギは、ある生徒の意見や考えに対して「どう思うか」「対案はないか」と他の生徒たちに問う、先生方の指導者行動です。

先生が正誤判断をして、まとめ直し、次の内容に進んでいくという「よく見かける風景」には、生徒の間に対話は生じていません。
  • ある論点を示して、賛成/反対の態度を表明させた上でその理由を言わせたら、理由付けへの評価を他の生徒に求める

  • ある問題への解放をグループごとに考えさせ、その解法の問題点や対案をほかのグループに考えさせて言わせる
といった場面を教室の中で繰り返し作っていくうちに、他人の発言にきちんと耳を傾ける習慣が作られるのではないでしょうか。


❏ 質問をタスクとして課して習慣化を図る

個々の生徒に割り当てた調べ学習の結果を発表する場を、毎回の授業の冒頭で作っておられる先生がいました。

どの生徒の発表もよく準備されたもので立派でしたが、それ以上に目を惹かれたのは、発表者に対して他の生徒が次々と質問をする姿です。

さながらゼミでの討論のように、「どうやって調べたのか」「この観点でも同じことが言えるのか」と鋭いツッコみが続きます。

生徒が元々優秀だからというだけではないはずです。そうした場面を作り、質問をすること自体が大事という方向付けをしているかどうかで、生徒のふるまいは変わります。

先生から与えられたタスクに答える中で、質問や意見を出すことを繰り返すうちに、自ら手を上げることへの抵抗感も徐々に取り払われます。

他の生徒からの質問や意見がなかなか出ないからといって教える側が諦めたら、それ以上の進展はありません。


❏ 周りからの質問が学習者としての成長の糧

前段で紹介した事例での高い発表クオリティは、生徒間での質問による部分が大きいと思います。

調べ損ねていることに突っ込まれ、見ていなかった角度から考えさせられる場を目にすれば、自分の番に備えて調べ学習にどう取り組んでいくかを考えざるを得ません。

他の生徒のツッコミから、考察の糸口を見つけることもあるでしょう。

もちろん先生からの講評も大事ですが、指導者からのの助言と、立場を同じくするものから突き付けられた疑問とでは、受け止めるときのインパクトが違います。

実現には時間が掛かるかもしれませんが、質問をすることが互いを高めあうこと/相互啓発であると気づけば、互恵意識で結ぶ学びのコミュニティの形成に大きな礎となるのではないでしょうか。


❏ 他者の所感に触れる機会は作られているか

生徒に発表の場を与えることに注力しているクラスでも、発表を見聞きして他の生徒が感じたこと/考えたことを言葉にさせることには、まだ踏み込んでいく余地があるかもしれません。

相互評価のためのシートを用意して、評価所感を文字に起こさせているケースでも、それを発表させたり、生徒同士でシェアする場面はあまり多く見かけないように思います。

ある意見や発表に対して他の生徒がどう評価しているか、どこに着目しているかを知ることも大切な相互啓発です。

Wi-FiやICT環境が整っている教室なら、生徒のスマホやタブレットから所感を瞬時にシェアすることもできるはずです。

無記名の方が意見表明への心理的ハードルは低いかもしれませんが、記名式にすることで「自らの発言に責任を持つ」という態度を養うことも必要かと思います。

もしかしたらSNSの利用マナーを考える場にもなるかもしれません。


 ■ ご参考記事: 評価と相互啓発(探究型学習における指導)
他の生徒が行ってきた/行っている活動を、如上の観点&規準に照らして評価させれば、自分がやってきたことを相対化することもできますし、「こんな方法もあるのか」とヒントを得ることもできるはずです。そう考えると、探究型学習の指導における最大のポイントは「評価と相互啓発」ということになるのではないでしょうか。



教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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