教え込むより、調べさせて気づかせる

教科固有の知識や理解を効率良く形成しようとすると、調べさせたり考えさせて気づかせたりするよりも、教えるという方法を選択してしまいがちですが、それでは生徒が自力で物事を理解したり、何かを解き明かしたりする力を養う機会を奪ってしまうことにならないでしょうか。


❏ 美味しい料理を食べさせる≠作り方を覚えさせる

とびきり美味しいカレーを作って相手に食べさせてあげれば相手はとても喜んでくれると思います。

きっと「また食べたい」と思ってくれるに違いありませんが、作り方を知らなければ誰かが作ってくれるのを待つしかありませんよね。

食べさせながら作り方も教えていけば、次の機会を楽しみにする気持ち(=勉強で言えば、次の学びに対するモチベーション)を刺激しつつ、食べたいときに自分で作ってみようという姿勢も持たせられます。

作り方の基本さえ押さえておけば、自分の好みや手持ちの材料に合わせてアレンジすることもできるはずです。

自分で作ったものを美味しいと思えれば、「また食べたい」は「今度はこんなの作ってみよう」に昇華するかもしれません。


❏ 内容を理解させることと学び方を身につけさせること

きちんと教えて単元の内容を理解させることは、先生が料理したものを生徒に食べさせているのに近いのではないでしょうか。

教室を覗いていると、こんな場面を見かけることも少なくありません。
  • 教科書や資料集、副教材を読めば書いてあることなのに、読ませもせずに先生が先回りして教えてしまう。

  • 問題へのアプローチを生徒が自力で十分に考える前に、先生が正しい(洗練された?)解き方を教えてしまう。
確かに単元内容は十分に理解させられ、同じような問題に再び挑ませたらできるようになっているかもしれません。

しかしながら、この状態が繰り返されていたとしたら、見たこともない問題/習ったこともないことを目の前にしたときに何をすべきか学べない可能性があります。


❏ 「主体的な学び」の意味を少し拡張して考える

新学習指導要領のキーワードのひとつは、「主体的、対話的で深い学び」ですが、「やり方がわからないときは、教えてもらえるのを待つ」というのでは、とても「主体的」とは言えそうもありません。

手持ちの中から、対象を理解したり問題を解決したりするのに使えそうなものを探して利用する姿勢を身につけさせるのも「主体的な学習者」に育てる上で欠かせないことではないでしょうか。

間もなく1学期も終盤を迎えますが、生徒が持ち歩いている参照型副教材は十分に使い込まれているでしょうか。

教科書はどのくらい読み込まれているでしょうか。既習分と未習部分で紙のくたびれ方が違わないのではあまり使っていないかもしれません。

もし、いまだに新品同様だとしたら、「自力で調べて考えさせる」という要素を授業や予復習にもう少し増やす余地があると思います。


❏ 学び方を学ばせるには、生徒が解くべき課題が必要

以前の記事でも書きましたが、学習方策は課題解決を通して身につくものです。

生徒自身が解を導くべき問い(=ターゲット設問)を導入フェイズでしっかり示し、解き方そのものを考えさせることが、学び方を学ばせていく上で欠かせないものだと思います。

課題解決型学習(PBL: project-based learning)の要素を、授業内に増やしてみるのも有効な方策です。

授業時間内に十分な時間が取れないなら、次の授業の準備として生徒が自力で調べて考えることを求める課題を宿題にすれば良いはずです。

授業終了時に、次の授業でのターゲット設問を提示し、解法や問題へのアプローチをその場で少し考えさせたり、周囲で話合わせたりすれば、自宅に持ち帰って取り組むためのレディネスも整います。


❏ プログラムを刷新しても、学力観の転換を図らなければ…

新課程に向けて教育課程の刷新に取り組んでいる学校も少なくありませんが、カリキュラムを変えたりプログラムを新設したりするだけでは新しい学力観にそった学習指導は実現しません。

ひとつひとつの授業のあり方を変え、目標とするところを設定し直さないと、せっかく設計し直したカリキュラムも「絵に描いた餅」、狙った教育効果も得られないはずです。

2020年からの大学入試では、学習型問題の出題がこれまで以上に増えてくる可能性が高いはずです。

そこでは、自力で読んで理解したことをもとに、与えられた課題に解決の道筋を自分でつけなければなりません。

その対応を考えただけでも、教え込むより、調べさせて気づかせることの重要性は軽く見ることはできないのではないでしょうか。


■ ご参考記事:
  1. 学び方そのものを学ばせる
  2. 教科固有の知識・技能を学ぶ中で
  3. 大学入学共通テスト&高大接続改革(記事まとめ)
  4. "正解を言って欲しい"と言う生徒
  5. 主体的・対話的な深い学び~どこまで実現したか


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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