教科学習指導の土台はホームルーム経営

授業評価アンケートにおける「この授業を受けて学力の向上や自分の進歩を実感するか」という質問にYESと答えてもらえるかどうかは授業担当のスキルとデザインによる部分が大きいのは当たり前ですが、学級経営を通して「生徒が互いに刺激し合い、ともに成長するクラス」を作れるかどうかにも大きく影響されます。


❏ 成長の場としてのHR×教科学習指導の成果

下図は、当期の「授業評価&生徒意識アンケート」のデータ(計340クラス)を使って作成したものです。

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横軸は、生徒意識アンケートの Q06成長の場「私のクラスは、生徒が互いに刺激し合い、ともに成長している」への回答を得点化し、クラス平均を算出した結果です。

縦軸は、同時に行った授業評価アンケートの Ⅶ学習効果「授業を受けて、学力の向上や自分の進歩を実感できる」へのクラス平均値です。

教科学習指導の「学習効果」とホームルーム経営の「成長の場」はともに、目的変数として改善の進み方を図る第一指標となる重要項目です。

上図に見る通り、Q06成長の場で85ポイントを超えるようなクラスで、Ⅶ学習効果の平均が75ポイントを下回ることはほとんどありません。


❏ 成長の場としてホームルームが認識されているか

散布図は一見しても分かるように「右上がり」の分布を示しています。

両者の相関係数は、下表に示す通り、0.6前後とかなりはっきりした共起関係にあることがわかります。

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なお、それぞれの評価項目の質問文は、拙稿「授業のこと以外にも尋ねておくべき“生徒の意識” 」でご参照いただければ幸いです。

各項目で高い評価を得たクラスがどこか特定できれば、その実践に倣うことで学校全体での改善を加速させることも可能です。

優良実践の抽出と共有が図れないのでは、改善は個々の先生方の工夫と努力に頼るばかりになってしまい、学年や学校全体での組織的/継続的な改善は遠のくばかりではないでしょうか。


❏ 協働での課題解決を通してコミュニティを作る

Q06 成長の場を目的変数に、生徒意識調査の他の9項目を説明変数にした重回帰分析で偏回帰係数が最大となったのは 、Q05係の仕事「学級の係や当番は、それぞれがきちんと必要な役割を果たしている」です。

係の仕事を通して、生徒が協働でクラスの課題を解決する場を経験する中で、互恵意識が高まったり、相互啓発が働くようになることで、学びに適したコミュニティが形成されると考えられます。

課題をどう解決するか知恵を出し合うことで「集団知の活用」「気づきの交換」の有効性を学べば、各教科の学びにもそこで身につけたものが生かされますので、対話的/協働的な学びの実現も進みます。

また、各教科の学習指導の中でも協働で課題解決に取り組む場の充実を図れば、相互啓発と互恵意識がより良く働き始め、この項目(Q06)の改善に大きく寄与すると思われます。

相対的に低い評価となったクラスでは、教科担当の先生方からの働きかけにも期待されるところが大きいということです。


❏ 規律ある生活や先を見据えての行動選択も重要

上の相関行列で第2位につけたのは、Q10 規律ある生活「規律ある生活を送るとともに、集団生活のマナーを守れるようになった」です。

ルールを押し付けるばかりでは、生徒のストレスも増えそうですし、なにより自分たちで考え、より良いコミュニティの形成に主体的に取り組む姿勢も育めません。

授業規律も、生徒自身に考えさせ、自分たちのルールとマナーを確立させるのが重要だと思います。ルールでの保護と危険回避の思考力養成にも通じるところがあると思います。

Q09行動選択「私は、進路のことや今何をするべきかを考えて行動できるようになった」も、相関係数が0.5を超えています。

進路指導などを通して、三か月後、半年後に迫る選択の機会(大きな分岐)に挑む姿勢と意識を持たせることも、教科学習指導の効果を確かなものにする土台です。


■ご参考記事:
  1. 互恵意識で結ぶ学びのコミュニティ
  2. 生徒に考えさせる授業規律
  3. 先に控える選択の機会をいつ認識させるか


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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