理解している≠正解できる

理解しているかどうかと正解できるかどうかは、必ずしもイコールではありません。理解していることであっても眼前の課題と結び付けられずに正解に至れないこともありますし、ある問いに正解できたとしても問われていることをきちんと理解できている保証はないということです。


❏ 理解している、かつ正解できることが目指す状態

答えられなかった後で説明を聞いて「ああ、そうか」と言っている生徒もいれば、選択式問題や語句補充などの客観問題で正解したときに誤肢を消す理由を訊いてもきちんと説明ができない生徒もいます。

正解できるけど理解していない、あるいは理解しているけど解けなかったという状態(下図参照)を放置するわけにはいきませんよね。

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生徒一人ひとりがベン図のどこにいるのか見極めたうえで、両者が重なる領域に引っ張ってくるために何らかの方策を講じる必要があります。


❏ 正解できるけど理解していないときには…①

空所を語句で埋めるだけの問題であれば、似たような問題で同じ語句を埋めた経験や、うろ覚えながらその語句を知っている(≠理解している)だけで正解できてしまうことがあります。

言うならば、「理屈はわかっていないけど、前もこれで正解だった」というあやふやな、きわめて危なっかしい解き方ですよね。

この状態にあるかどうかは、正解できたときに、「なぜそう考えたか」「どうしてそう言えるのか」といった具合に次の問いを重ねてみることで見極めができます。

理由や根拠を訊けば、生徒はそれに答えよう/言語化しようとして、知識の不足や未整理を解消するきっかけを得ます。

足りない知識や理解の不十分なところを、改めて教科書や参考書を読んだり、周囲と話し合ったりして補っていけば、ベン図の重なり部分に移行することができるはずです。


❏ 一度解いた問題では理解を確かめることはできない

如上の「問い掛け」と「理解の言語化」、「知識・理解の補完」を図ったら、正しい理解を形成できたか、別の文脈に当てはめたり、条件を変えたりした問題で確かめてみる必要があります。

その場ですぐに類題に挑ませても、認識したパターンを適用しているだけのこともありますので、少し時間を空けて確認してみることも大切です。定期考査などは、その好機です。

教室で扱ったのと同じ問題を課しても、解法を自分で作り出せないけど解法は覚えたという生徒と、きちんと理解した上で正解できた生徒とを区別できません。

授業を通じて学ばせた知識や理解を用いて解く、初見の課題/問いを与えてみないと、本当にその知識や理解を活用できるレベルまで身につけているかどうか判別できないということです。

 ■ 考査問題で何をどう測るか


❏ 理解できているのに正解できないとき…②

一方で、理解はしているのに問いに正解を導けない、課題の解決にその知識・理解を活用できないことも少なくありません。

既に習って知っていることなのに、眼前の問いがどの知識・理解を使うことを要求しているのか、気づけないことには、問いに正解を導くことはできません。

ある知識や似たような問題を解いたときの手順を想起できないのは、問題文を見て、何が求められているかに気づけてないということです。

問題文のどこに着目し、何を手掛かりに思考すべきか判断する力が身についていないのは、そうした訓練がそれまでの学習の中で不十分だったからではないでしょうか。

先生が丁寧に説明して、生徒の側になんの疑問も残らないように説明するだけでは、「理解しているけど、自力で解答を導けない/解法を考え出せない」という事態も起こりえます。


❏ 問いで誘導しながら、気づきと思考の手順に習熟させる

理解しているし知識もあるけど問いに正解を導けないでいる生徒には、「着眼点に気づかせる問いを繰り返す」ことが効果的な指導の一つになります。

先生がその問題を解くときと同じ「頭の使い方」(どこに着目し、何を手掛かりに使うべきツール[知識など]を選択しているか)を生徒ができるように、キューとなる問いを投げかけ続けて行きましょう。

最初は先生の問い掛けに添って頭を使うだけかもしれませんが、先生の問いを真似ることができるようになれば、思考そのものを自力で再現できるようになっていきます。

問題の捉え方、解決の方策の立案といった思考では、最初から自分のスタイルを作れるわけではありません。

学び方における守破離とも通底しますが、先生が示すお手本に倣えるようになった先に生徒自身の工夫が生まれ出るのを待つ/促すというのが正しい手順ではないでしょうか。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一


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