生徒が解法を考える機会

講義座学系の教科で「授業を通じて学力の向上や自分の進歩を実感できるか(学習効果)」に対し大きな寄与度*を持つ項目の一つに「習ったことを使って課題解決に取り組む機会(活用機会)」があります。数学も例外ではなく、下図の通り、学習効果の上位群(トップ25%)に含まれる授業は、その大半が80ポイント以上という高い評価を得ています。

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*寄与度: 学習効果を目的変数とする偏回帰係数のt値の大きさで推定。


❏ 教科書は設問の配列で構成されているのに…

数学は、問題群の配列で教科書が構成されていますので、習ったことを用いた課題解決体験は整いやすいはずです。

事実、他教科との比較では、活用機会の集計値分布は数学が最も高く、知識拡充に力が注がれがちな社会/地歴公民とは大差がついています。

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しかしながら、上のヒストグラムを見ても、分布の尾がかなり長く伸びており、肯定的な回答が9割となる75ポイント(必達目標です)に届かない授業もかなり多く観測されます。


❏ すべての問題を先生が丁寧に説明してしまっては…

例題から始めて、類題、練習問題と進んでいくときに、先生がすべてを丁寧に教えきってしまうことが続くと、生徒は自分で解法を考える機会がありません。

教えてもらった解法を記憶して忠実に再現できれば、定期考査でも高得点が取れてしまうのであれば、それ以上に踏み込んで学ぶだけの動機も持てないのではないでしょうか。

例題を通じて学ばせたことを生徒自身の手と頭で類題に適用させてきちんと理解できていたか確かめさせるのと、類題も先生が先回りして説明してしまうのとでは大違いです。

類題を使って理解を確かめられたら、練習問題や発展問題、章末問題へと進みながら「解法から自力で考える場面」を作る必要があります。

どうアプローチするかを隣同士で説明し合ったり、少し骨のある問題ならグループで話合わせたりすることでも、「習ったことを使う機会」の充実が図れるのではないでしょうか。

教え合い・学び合いの機会も増やせますので、苦手意識の抑制にも一定の効果があるはずです。

新テストの試行問題を見ると、解き方や証明の仕方を相手に説明することを求める問題も増えてくることが見込まれますので、早いうちから練習させて慣れさせておくことも必要と思われます。


❏ 説明を繰り返すまえにやるべきこと

その日の授業で導入された新しい概念や、既習内容に理解できていないことがあったとき、説明をやり直してもうまく行くとは限りません。

教科の専門家である先生の説明よりも、同級生が一度咀嚼して表現し直した言葉の方がわかりやすいこともあります。

先生がいつもベスト・ティーチャーであるとは限りません。

また、大抵の場合、生徒には問題集を持たせており、解説もついているはずです。

問題集から似たような問題を探させ、その解説を読ませることで「文字を介したテクストとの対話」を促し、不明を解消させることもできるのではないでしょうか。

教科書やノートを読み返すだけでも、授業内に生じた不明の大半は解消できるはずです。

わからないことがあったときに、「先生に教えてもらう」こと以外に、解決策を持たせることは、学習者としての自立を促すことにもなりますし、「調べて理解したことをもとに課題を解決できた」という体験は、教科・科目に対する自己効力感を高め、「学力の向上や自分の進歩を実感できる」状態を作り出していくものと考えます。

 ■ 教え込むより、調べさせて気づかせる


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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