教え方と学び方のマッチング

生徒はそれぞれの学習履歴の中で学び方を身につけてきています。その一方で、先生方もそれぞれの教え方をお持ちです。進学や年度の切り替わり等で生徒と先生の組み合わせが変わったことを機に、ときとしてこの「学び方」と「学ばせ方」のミスマッチが生じることがあります。

教え方と学ばせ方のマッチングが失われると、学ぶ側での戸惑いなどが生じて、生徒本来のポテンシャルが十分に発揮されず、成績の伸び悩みという形でその影響が現れることが少なくありません。

2018/09/27 公開の記事をアップデートしました。

❏ アジャストに手間取る間にアドバンテージを失う

例えば、中高一貫校で内進生(付属中学からの進学者)と高入生(公立中学からの進学者)の成績推移を調べてみると高校入学時点では後者の方が高いのに2年生の後半ぐらいにはそのアドバンテージが失われていることがあります。(内進生が伸び悩むケースも少なくありませんが)

高入生がアドバンテージを失っていく背景には、高校受験準備を含めた中学での学びの中で身につけてきた学習観や学習方法が、高校の学習の求めるものを満たしていない可能性があります。

内進生は持ち上がりで担当してくれる先生方の教え方に合わせた学び方を身につけているのに対して、高入生がそのアジャストに手間取り、その間の学びが十分な成果を得ていなかったのかもしれません。

学習は積み上げですから、ある期間に学ばせたことが定着しなかったら、その後の学びに困難が生じたり苦手意識を膨らませたりする中で、伸びを欠く要因をさらに抱え込んでいくのは想像に難くありません。


❏ 中学で経験したキャリア教育や探究活動の成果も影響

内進生と高入生とでは、中学で経験してきたキャリア教育や探究活動にも小さからぬ違いがあります。

キャリア教育を通じて、高校卒業後の大学での学びとその先にある社会との関わり方まで考えを巡らせる機会やその土台となる体験を積んできた生徒は、高校での学びに自分なりの動機や理由を持ちます。

一方、高校進学という目先のハードルを越えることに集中してきた生徒は、入学後の学びに動機や理由を改めて作り直さなければならないこともあるはずです。

目的を見つけるまで日々の生活に流されてしまったり、漫然と時を過ごしてしまえば、その間の学びが十分な成果を結ばないこともあります。

探究的な活動を経験してきた内進生と、横断的・体験的な「総合的な学習の時間」を経験してきただけの高入生とでは探究のマインドやスキルにも違いが生じているかもしれません。

そこで身につけた学びの方策は、個々の教科を学ぶときにもその土台となりますし、探究を通して掘り下げるべき興味を見つけている生徒は、進路意識の形成でも一歩先んじているはずです。


❏ ミスマッチが生じそうな点を集中して観察

内進生と高入生の間に生じているこうした違いを踏まえずに、各教科に固有の知識や技能を獲得させることだけに目を向けていては、学びの成果に差が生まれてしまうのは当然ではないでしょうか。

"授業開き/オリエンテーション"でお伝えした通り、生徒が入学してきた時点で、どんな学び方をしているかを注意深く観察し、ご自身の教え方とのマッチングを確かめておく必要がありますし、ミスマッチがあるなら早期にその解消を図らなければなりません。

また、キャリア教育や探究活動を通じて生じ得る差(進路意識、探究マインド&スキル)についても、観察の機会を持つべきです。

中学で経験してきたことを入学時のアンケートで調査したり、面談で進路意識を確かめたり、探究活動や課題研究に取り組む場を作り、その様子を見守ってみたりする必要があるはずです。

先生方の教え方が求めるものを生徒が満たしていないようであれば、補完策を示して自助努力を促したり、教え方/学ばせ方をアレンジしたりする対応が必要ですが、まずは観察に注力しましょう。

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❏ 内進生が高入生についていけない"逆のケース"では

前段までの話は、優秀な成績で入ってきた高入生が、伸びを欠いて内進生の集団に飲み込まれていくケースでしたが、これとは逆に内進生が高校進学時点でのアドバンテージを失い、成績下位層を形成していくケースも観測されています。

本来ならば、6ヵ年を見据えた指導の中で弛まずに学びの成果が積み上げられて当然ですが、中学での学習内容を理解する中で、高校での学びに必要な方策を身につけないまま高校に進学していることもあります。

高校受験を通して自分なりの学び方やタスク管理のスキルを身につけた高入生に対して、そうした「成長の機会」を持たなかった生徒が太刀打ちできなくなるのかもしれません。

中学の内容を学ぶことを「手段」に、高校での学びに必要な方策を身につけるという「目的」をどこまで達することができていたか、生徒の様子を観察する中で、教える側が振り返ってみる必要もありそうです。



年度が替わって新しい生徒を迎えたら、学びの場面ごとに生徒がどんな学習活動に取り組んでいくか、指導計画に照らしてイメージした上で、各場面で必要になるスキルや姿勢を生徒一人ひとりが身につけているか実際にやらせてみながら確かめていきましょう。

授業開きから5月の連休ぐらいまでの時期は「集中的な観察の期間」です。この期間にすべての生徒の観察を一巡できるかが、その後の指導の成否を分けていくと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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