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zoom RSS ポートフォリオの円滑な導入と効果的な活用に向けて

<<   作成日時 : 2018/11/08 07:30   >>

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高大接続改革に向けてポートフォリオの導入が始まっています。プラットフォームは様々な事業者や機関が提供しているものの、使う側である高校では運用方法について試行錯誤が続いている段階のようです。大学がどんなデータを求めてくるかはっきりしないので運用方法の検討を進められずにいるとの声も方々で聞かれます。

しかしながら、ポートフォリオは学習者の自己認識を深めさせて主体的に学ばせることを目的に考案されたツールです。これを忘れて、大学入試への対応という側面にばかり気を取られないようにしたいところ。

本来の目的を見失いさえしなければ、もし導入後にうまく行かない部分があっても、その都度適切に修正の方法が探れるはずです。


❏ 情報は集めておいて、必要に応じて後で編集する

現時点で、ポートフォリオをもとに書き起こす出願書類(主に志望理由書など)にどのような様式・内容を各大学が求めるかわからない以上、勝手な斟酌で「残す情報」を選別するのは危険です。

進路希望を形成する過程やそれに関連する活動は、志望理由書を起草する際に必ず言及しなければならないはずですので、きちんと記録に残しておきましょう。後で記憶を辿るのは容易ではありません。

特に、進路指導やキャリア教育、体験学習の場での「プラクティス・ログ」(実践体験記録)と「リフレクション・ログ」(省察記録)は欠かせないものです。

当然ながら、進路意識形成に深くかかわる探究活動では、出来上がった論文を「ラーニング・ログ」(学習記録)とする一方で、途中の過程での体験と省察もきちんと記録に残させましょう。

その場で文字にさせて、きちんとファイリングさせておきさえすれば、後になって必要に迫られたときもページをめくって記録を辿れます。


❏ きちんと書けているか定期的にチェックを

進路の手引きをファイリング形式に改め(下記参照)、記入済みのワークシートをとじ込んでいかせれば、難なく如上の条件は揃います。

しかしながら、きちんと振り返りができない生徒もいます(むしろ多いはず)ので、生徒が書き込んだものには定期的に目を通して、書き方へのフィードバックを行う必要があります。

実際に拝見してみると、プラクティス・ログにしても、いつどこでのことかすら読み取れないようなものが少なくありません。

リフレクション・ログに至っては、ただの感想に終わり、学んだことや成果のたな卸しもできておらず、次に向けた課題には触れてさえいないものが大多数だったりします。

この状態を放置しては、後になって読み返したところで、志望理由書に書き出すものを見つけることは難しいのではないでしょうか。

初期の段階から、個々の生徒がポートフォリオに記入したものを読み、「良い書き方」をピックアップしてクラスでシェアしたり、「良さ」を言語化させたりするポートフォリオの書き方指導が必要です。

初動の段階では、先生方にもノウハウが十分に備わっていない可能性がありますので、シェアするモデルのピックアップや良さの理由付けなどは、学年会や進路部会での協働作業とするのが好適です。


❏ ポートフォリオを通じて作る個々の生徒のPDCA

ポートフォリオは、大学への出願書類の作成準備だけを想定して導入するべきものではありません。

本来的には、日々の学びの振り返りを通して、自分はどうあるべきかを生徒に自覚させ、成長を促すツールであるはずです。

そうした使い方をしていなければ、仮にポートフォリオの様式が調ったところで、いくら記録を辿っても成長の痕跡を拾い上げることすらできず、志望理由書も書けないという事態が予想されます。

如上の書き方指導では、きちんと振り返れるようにすることを主眼に、
  • 学びの成果のたな卸し
  • 次に向けた課題形成/自分の目標の設定
  • その目標に照らした達成検証
というPDCAサイクルが形成されているかを確認することが肝要です。

また、3ヵ年、6ヵ年を通した進路指導/キャリア教育の全体プログラムの中で、「今は何を目指しているフェイズか」を予め生徒にしっかり認識させておかないと、成果のたな卸しも曖昧になったり方向を誤ったりすることになりかねません。

ポートフォリオをきちんと機能させるには、体系的に組まれた進路指導計画が定立していることが大前提です。


❏ 中間段階でのポートフォリオの見直し機会を

大学への出願期を迎えて、いざ志望理由書を描こうとしたときに初めて蓄積してきた情報を見直すのでは、うまく活用できません。

ぶっつけ本番にするのではなく、学年や学期の終わりなどを機に、それまで書き溜めてきたものをしっかりと見直させて、次のタームでの自分のミッションを考えさせるようにしましょう。

本番を迎えたときの予行演習にもなりますし、何よりも自己評価力を高め、メタ認知を深めることで、主体的・意図的な行動を引き出すチャンスになるはずです。

年間の活動をまとめながら記録を辿り直してみれば、活動を挟んだ変化の中に自分の成長の証を探して整理することもできますし、記録しておくべきだったのに漏れてしまったことにも気づき、その後の書き方にも改善が見込めます。

ポートフォリオの本来的な目的である、主体的に学ぶ姿勢を作り出すには、中間段階での省察機会を定期的に持つことが何よりも重要です。




以下はこれまでに公開した関連記事です。お時間の許すときにご高覧いただければ光栄です。

ポートフォリオに何を記録し、どう活用するか
高大接続改革では、一般入試でも志望理由書や学習計画書を選考材料に含めることが大学に求められています。志望理由や学習計画は、熱意だけを伝えてもその要件は満たしません。それまでに取り組んできた活動やその成果の中から、適切な材料を選び出して「進路先が求める人物像にマッチするストーリー」を書き上げる必要があります。その材料を蓄積していくのが、「ラーニング・ログ」(学習成果記録)と「プラクティス・ログ」(実践体験記録)です。

校内に蓄積されてきたデータを生徒IDで関連付ける
校内のデータは様々なところに散在しています。模試などの成績に加えて、生徒が自ら入力したものもあれば、アンケート調査の結果など特定の分掌・組織が作成し所持してきたデータもあります。これらをeポートフォリオなどのひとつのシステムに組み込もうとすると膨大な手間が掛かりますし、すでに組み上がったデータベースシステムの仕様を後で変更しようとすると改修には大きなコストが生じます。新たな調査を行いデータを管理する必要が生じたとき、それに対応していないシステムに組み入れることに拘るあまり、業務が滞り身動きが取れなくなってしまうのでは、本末転倒です。

進路の手引きは冊子よりもファイリング形式で
高大接続改革では、一般入試でも志望理由書や学習計画書を選考材料に含むことが大学に求められていますし、AO・推薦入試での募集枠が増えるとなると、ポートフォリオの作成は喫緊の課題です。進路探究や体験活動などを経験するごとに、体験や省察の結果をログを残すにも、ファイリング形式はとても便利です。いずれは、ポートフォリオの電子化が進むでしょうが、様々なログを残すこと自体に生徒も先生も不慣れな段階、経験が不足している段階で、その設計に当たるのは現実的とは思えません。紙ベースのファイリングを進める中で、どのような情報を残すべきかを検討を重ねながら、それらを格納できるようデータベースのテーブル構造を拡張していけば、ことはかなり易しくなるはずです。


追記:
ポートフォリオを導入するときにもう一つ重要なことがあります。それは、「なぜ、作るのか」「どう活用するのか」といった目的や理由を生徒がしっかりと理解できるように、事前指導や中間検証のときに繰り返して伝えて行くことだと思います。伝えるためには教える側が「導入の意図」をしっかりと理解しておくことが大前提です。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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