入学時に思い描いた自分に照らして

受験学年を迎える現2年生に対しては、第一志望を宣言させたり、春休みには志望校別の対策講習が始まったりと進級への準備が着々と進んでいる中、現1年生に対しては、2年への進級を意識した策を特には講じていないというケースが思いの外多いようです。

入学時に抱いていた高校生活での夢や目標、思い描いていた自らの日常と今の自分とを照らし合わせて、進級後の目標を再設定させることが、中だるみを起こしやすい2年時を有意義に過ごさせる上でプラスになるのではないでしょうか。


❏ 日常に埋もれかけた「なりたい自分」の再描写

高校生活が始まって10カ月が経過し、入学前に抱いていた夢や目標を忘れかけている生徒も少なくないかと思います。

あれこれ打算を挟まずに目の前のことに全力を尽くす中で得られるものも沢山ありますが、目指していたものや「こうありたい」と思っていた自分を忘れてしまって良いということではないはずです。

高校生活の3分の1を終えようとしているタイミングで、入学前に抱いていた夢や目標を思い出させ、高校に入って学び、気づいたことを加えて残り2年をどう過ごしたいのか考えさせてみましょう。

まずは「入学時に抱いていた思い」というタイトルで、思い出すまま箇条書きにさせてみて、次に高校になってから見つけた目標を並べさせてみるのが良いと思います。

それぞれに自分にとっての重要度を、入学当初と現時点とを対比して、マークアップさせてみても良いのではないでしょうか。

入学前に抱いていた思いの中には、自分の中での優先度が下がったものもあるはずですし、さらに思いを強めたものもあるはずです。


❏ 何かに懸命に取り組んだか~ひと皮むけた実感は?

もう一つ、言語化させることで意識の上に取りださせたいのは、この10か月間で「ひたむきに頑張った」と思えるものは何かということです。

文化祭や体育祭、合唱祭などもひと通り経験したところですし、日々の勉強や部活動、生徒会活動なども含めれば、難局を乗り越えるべく重ねた努力の中に自分の成長を実感できた瞬間があって然るべきですよね。

生徒が1年間で経験したことを並べておき、それぞれに対して

 「最後まであきらめず、ひたむきに頑張れたか」
 「自分の成長を感じることができたか」
 「仲間と刺激し合うことができたか」

といった観点で自己評価させてみたいところです。

如上の問いに「特にそう思う」や「そう思う」と答えられた項目が幾つあるかは、高校生活への頑張りやその充足度を示す指標になり得ます。

もしかしたら、「どちらかと言えばそう思う/思わない」や「そう思わない」ばかりになってしまった生徒もいるかもしれませんが、高校生活はまだ3分の2が残っており、再チャレンジは十分に可能です。

学校生活を送る中で、様々な課題が次々と目の前に現れます。どんな課題に取り組んだかは、喩えるならば「どんな山に挑んだか」です。山を登りきった、つまり課題をクリアできたということは、素晴らしいことではありますが、次の瞬間には「過去のできごと」に過ぎません。でも、山を登ろうと頑張る中で、筋力や体力もつけば、難所を通過するための技術も身につきます。危険を回避する判断力や知恵も養えます。こうした、体力、技術、判断は、より高い山を登るときの支えとなります。日々の学習の中で頑張りきることは、知識や技能だけでなく、思考力や表現力、協働性や主体性などを身につけていくことにほかなりません。

授業開き/オリエンテーション(その4)より転載。

蛇足ながら、肯定的な回答が予想以上に少ないものがあったとしたら、今度の新入生を迎え入れるに当たり、行事のあり方や指導体制の見直しをしておいた方が良さそうです。


❏ これからの1年間をどう過ごし、最終学年を迎えるか

なりたい自分の再描出と、懸命に取り組んだ記憶の整理は「最終学年を迎えるまでの1年間をどう過ごすか」を考えるための準備です。

春休みを迎える前に、一度立ち止まってこれを考えてみることで、高校生活のど真ん中である1年間の充実やその中での成長の度合いが違ったものになると思います。

誰かに読まれることを前提とすると、「格好よくまとめたい」という雑念(邪念?)が入り込み、内省に集中できないこともありますから、提出は求めなくても良いと思いますが、履行は徹底させたいところです。

学年末考査の最終日にでもワークシートを調えて教室で配布し、春休みを迎えるまでに記入させておきましょう。

最終パートである「これから1年間をどう過ごすか」という問いに答えが見つからない/どう考えて良いかわからないときは気軽に相談に来なさいという一言も如上の指示に際して忘れないようにしたいものです。


❏ リセット&リスタートの好機を逃さない

この指導は、生徒にそれまでの生活を振り返り、これからに向けた課題形成に取り組んでもらうものですから、年度の切り替わりという絶好のタイミングを逃さないようにしましょう。

多忙な日常を過ごす平常授業期では、思いを新たにしても日々のルーチンが行動の変化を許さないこともあるでしょう。

振り返りと課題形成には、それぞれ一定の時間が掛かりますし、新たな思いを行動に起こし、24時間、7日間というサイクルの中に落としこむ試行にも、多少の余裕が必要です。

入試業務での休校期間や学年末考査が終わって答案返却までの期間、春休みなどをカレンダーに書き込んでみると、生徒が落ち着いて考えられそうな日はそれほど多くないことがわかります。

進級後の授業開きの日までのスケジュールも、生徒自身に考えさせるべく、指示を出す日を早めに設定したいところです。

■関連記事:
  1. 春休みの宿題~やるべきものを選ばせる
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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