授業で使った教材・課題や考査問題の引き継ぎ

新年度の引き継ぎに際し、これまでの指導で使用した教材や課題、考査問題などを必要に応じて次年度以降でも利用・参照ができるように調えて残しておくことはとても重要です。日々の指導の中で積み上げてきた工夫には成果と反省の両方があり、それらを踏まえた上で「その先」を考えることが、継続的な指導の改善に繋がるからです。


❏ 効果的な設問や課題はきちんと継承&ブラッシュアップ

授業デザインはどのような問いをターゲットに設定するかで決まりますので、生徒の興味を刺激し、思考を促すことに成功した「設問」や「課題」は、翌年以降の指導にも活用したいものです。

 ■ どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる

先生が変わるごとに、それぞれが新たに考案したものを使うだけでは、試行錯誤の繰り返しに生徒を巻き込みかねません。

納得いく教材を自作できたという充足感も大事ですが、どれだけ生徒を成長させられたかという実利こそ、優先すべきものだと思います。

前年度の指導で効果的であった設問や課題をベースに、さらにブラッシュアップをかけていきましょう。

また、それらがなぜ効果を得たのか理由を考えてみて、その仮説に基づき別の設問・課題を考案すれば、材料のないところで一から作り出すよりも、成功率は各段に高まるはずです。

設問や課題そのもののブラッシュアップに加えて、生徒に課す事前学習や授業内での活動、答えの仕上げとその共有など、設問・課題の「使い方」においても更なる工夫の余地があるかもしれません。


❏ 使った結果を添えて、検索と再加工が容易な形で

こうしたことの積み重ねが、継続的な授業改善をより確かなものにしますが、そのためには、
  1. 設問と課題が、検索や再加工が容易なデジタルデータで、誰もがアクセスできる場所に保管されていること。

  2. 実際に使ったときの正答率、頻出した誤答、生徒の優れた答案例などが添えられていること

  3. 指導に使ってみたときの工夫や反省点、より良い活用のためのヒントなどを伝えていること
などに留意した引き継ぎが必要だと思います。

プリントを印刷したときの文書ファイルをNASなどの校内サーバーに保存することで1.の条件は満たされます。

サーバー内を文字列検索すれば、単元名や重要語句で該当する設問・課題を探しやすくなりますし、「目録」を別の電子ファイルで作り文書ファイルのパスでリンクを設けておけば、もっと便利です。

文書ファイルの末尾に、指導を行ってのメモなどを追記すれば、2.や3.の要件も満たせます。

教材の電子化とサーバーの整備がまだ行えていないのであれば、とりあえず本年度末は、紙ベースでのファイリングとメモの付与まで、という見切りも致し方ないところ。見送るという選択はないはずです。


❏ 考査問題と設問別正答率で、生徒の状態を伝える

定期考査でどのような問題を課し、どのくらいの正答率であったか、どのような誤答が頻発していたかは、既習内容の定着度や学力の傾向を伝える貴重な材料の一つです。

 ■ 考査の結果から自分の授業を振り返る

定期考査問題をきちんと見れば、そのクラスを担当した先生方がどのような指導をしていたか(=生徒がどのような学びに取り組んでいたか)が、かなりの精度で推測できます。

先生方の頭の中には、固有の教科観・学力観があり、それに基づき授業が設計され、考査問題が作られますので、両者は同じところから生まれた「双子」のようなものです。

年度替わりに異動などで担当者が変わるときには、模試の成績データに加えて、前年度の定期考査問題一式にそれぞれの採点結果、点数一覧くらいは、引き継ぎ資料として調えておくべきです。

考査問題そのものも継続的に改善を進めていくべきであり、過年度の優れた問題やその背景にある発想にはどんどん学んで行きましょう。

 ■ 考査問題の改善が授業も変える
 ■ 考査問題の妥当性を評価し、最適化を図る

特に、高大接続改革を目前に控えた今、問題作りにも新たな発想が要求されますので、個々の先生の発想と工夫をきちんと共有し、より良いものを目指す協働は、これまで以上に重要なはずです。

 ■ 高大接続改革に備えて考査問題も新しいスタイルに
 ■ 出題研究を通して"問い方"を学ぶ


❏ 1年後の引き継ぎに備え、設問・課題の残し方のルールを

ただでさえ多忙な年度末に、ここで書いたことをすべて満たそうとするには、年間を通じて「年度末の引き継ぎ」を想定した準備を進めてきたことが前提条件になるはずです。

本稿をお読みになって、一部でも得心のいく箇所があれば、1年後を見据えた新年度のルール作りに取り組んでいただきたく存じます。

授業内外で課した課題や、授業中に用いて手応えを感じた問いなどは、意識してレコードに残さないと、どんどん埋もれて行きます。

生徒にも、学習活動における様々なログをポートフォリオに残させ、振り返りを通してより大きな成長を促していますが、同じことが先生方の教育活動にも言えるのではないでしょうか。

授業改善は個々の先生の責任において進めるべきものだと思いますが、協働で取り組み、互いの成果を共有するところにこそ大きな進歩が期待できるはずです。

ご自身で教材を新たに作ることはとても楽しいことだと思いますが、先人(前任者)の成果と反省の上に立つことで、より遠くに歩を進めることができますし、何よりも試行錯誤に生徒を巻き込むリスクはできるだけ避けるべきだと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

この記事へのトラックバック

  • 生徒に見えている景色を想像しながら教えているか

    Excerpt: 先生方は教科の専門家であり、日々研究を重ねて行きますの、知の地平はぐんぐん広がり、より高いところから学問の全体を俯瞰しています。一方、学びの途上にある生徒の視野は限定的、個々の知識や考え方の意味を捉え.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2019-03-20 07:45
  • 授業改善での協働のあり方

    Excerpt: 1 授業を観る、授業を観てもらう1.1 授業を観る~優良実践を学び、自分を振り返る 1.2 優れた実践を見て言語化する(見取り稽古)  ★ 1.3 生徒を中心に授業を観る(その1) 1.4 生徒.. Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します! racked: 2019-04-11 04:53