高校の普通科見直し議論に覚える違和感

記事に起こすタイミングを少々逸してしまいましたが、政府の教育再生実行会議が高校生の7割が通う普通科の改革を求めているそうで…。教育内容が画一的で生徒の意欲が高まる内容になっていない、との批判からスタートした議論のようですが、高校現場がこれまでに重ねてきた取り組みをきちんと理解した上での議論なのか大いに疑問を感じます。


❏ そんなに早く、人のタイプを分けても良いの?

高校普通科を、重視する教育内容によって
  1. 進学や就職などキャリアを自身で形成する力の育成
  2. グローバルに活躍するリーダー、国内外の課題を解決できるリーダーの素養の養成
  3. 科学技術分野でのイノベーターとしての素養の育成
  4. 地域課題の解決を通じ、体験と実践を伴った探究的な学び
の4つのタイプに分けるとかなんとか…。

このうち、2.~4.はだいぶ前に経産省が言い出した「人材のポートフォリオ」に通じる切り分け方ですが、1.は他の3つとは並列にされるものではなく、取って付けた感が否定できません。

そもそも、高校にこうした区別を設けるということは、中学3年の段階で(あるいは完全中高一貫校の場合、小学校6年生で)、どんな人生を歩むか決めろってことになりますよね。

高校に進んでさらに広く学び、総合的な探究の時間などを通して、自らのあり方・生き方に向き合ってから選ぶのが本質だと思います。

自分がどんな人間か、何に向いているかは、やってみなければわかりません。いろんなことをやってみないうちに自分のタイプを決め打ちすることに危うさはないでしょうか。

現時点でも、それぞれの学校が、特色ある教育活動を展開すべく、探究活動や国際理解、地域貢献活動といった力点を置いてグランドデザインを描こうとしているわけですから、今に及んで敢えて新たに区分を作ることに意味もメリットもないと思います。

それよりも、これまでに進めてきた教育活動をさらに充実させたり、指導法の確立を進めたりする方が、よほど優先順位が高いはずです。


❏ 似たタイプの人間だけで作られるコミュニティの脆さ

区分けが固定しまえば、柔軟な学校経営が阻害される恐れもあります。

高校の中に様々な資質や希望を持った生徒が集うことで得られる「多様性」は、学校の活力になるとともに、教育活動の成果も大きくするのではないでしょうか。

どんな活動でも、リーダーがいればフォロワーもいますし、マネージャーだって必要。ときにはリーダーに異を唱える対抗勢力だって建設的に働くことがありますよね。

多様な資質と志向、バックグラウンドをもった生徒が集う、今の普通科のままの方が、よほど健全なコミュニティと言えそうな気がします。

働き者のアリだけを集めて新しい巣に移すと、一定の割合でさぼるアリが出てくるという話もあります。

リーダーになるタイプの生徒が過剰な割合を占めるコミュニティでは、せっかく資質を備えているのにそれを発揮する(=その中でさらに大きく膨らませる)チャンスを持てない生徒だって出てきます。

結果的に社会に供給されるリーダーとしての素養を備えた人材が減るという想像もできなくはないような気がします。


❏ 興味に特化せず、広く学ぶことで張れる「認知の網」

また、普通科の画一化との批判も会議の中ではあるようですが、膨大な知が日々生み出され、複雑な課題が次から次に生じる社会では、分散知をきちんと活用できるよう「認知の網」を広く張らせることの重要性は高まる一方です。

広い範囲に認知の網が張れているということは、様々な専門性を持った人々との接点を見つけるためにも欠かせないはず。

少なくとも、相手の言っていることが分かり、真偽を確かめる方法を考える土台ぐらいは持っていないと、チームは組めません。

文理を分けず、科目を切らずに広く学び続ける期間は、むしろ長くとった方が好ましいのではないでしょうか。


興味を持ったことを掘り下げて行くことは大事ですが、その機会は「総合的な探究の時間」や、「探究」を付した新設科目で十分に作れます。

広く教科・科目をきちんと学ばせ、密度の濃い、偏りのない認知の網を張ることを普通科教育の旨とすべきではないかと考えます。

但し、様々な科目を広く学ぶことの大切さを理解させることと、入試に課すことで学ばざるを得ない状況で追い込むことは違います。教育再生実行会議の提言にある、「(大学入試における)文系・理系に偏った試験からの脱却を目指す」も、少々乱暴に過ぎる議論だと思います。

次稿「目標を持った状態で巣立たせる」に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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