大きな成果が出た時にこそ~実践の共有と継承

進学実績にしろ、模擬試験や外部検定の成績にしろ、あるいは授業評価や学校評価のアンケートにしろ、成果が出たときの行動こそがとても重要だと思います。失敗に原因があるのと同様に、成功にもそれをもたらした要因がありますので、それをきちんと分析的に捉え、共有と継承ができる形に「言語化」しておくことが大切です。

ある学年で大きな成績伸長があったに拘わらず、1年後に次の学年が同じ局面を迎えて、何の良い変化の兆候も見られなかったり、むしろ成績などに低下がみられたりするようであれば、前年度の指導の中で作り上げられたノウハウが生かされなかったということです。


❏ 成果を得た指導法はきちんと共有・継承しているか

授業評価アンケートの集計結果を見ていると、一つ上の学年の1年前の結果を大きく下回るケースが少なからず見られます。

担当の先生が変わったから、という理由付けですませてしまうことが少なくないようですが、本当にそれでいいのでしょうか。

授業で理解したこと(=獲得した知識や理解)を用いて考える(=課題の解決に挑戦する)機会があるか、という質問に答えてもらう授業評価項目があります。

授業で使った教材・課題や考査問題の引き継ぎ」で書いたように、教室に持ち込んで手応えがあった問いをきちんと保管・継承するようにしてさえいれば、翌年はその先に更なる工夫を重ねられるため、少なくとも大きく崩れることは少ないはずです。

理解確認の方法や、学習目標を把握させる手順なども、継承が比較的容易な事柄ですし、対話などの授業内活動の作り方にしてもプロシージャ―と各フェイズの注意点などを言語化して次学年に伝えることはそれほど難しくありません。


❏ 前年度までの試行の結果を踏まえてこその継続的改善

毎年、毎年、ご担当される先生方がそれぞれに知恵を絞り、最善と考える指導を作り上げていくことの必要性は疑う余地もありませんが、前年度までの成果を活かさないのでは、あまりにも勿体ないと思います。

過年度の成果を踏まえ、その先に新しい発想や工夫を加えることは、まさに「巨人の肩の上に立つ」ことです。これをしなけば、見渡せる水平はいつまでたっても広がりませんし、教科学習指導の技術に不断の発展をもたらすことはできないのではないでしょうか。

前年度までに同じ学年・同じ科目を担当された先生方が作り上げた成果を活かし、失敗から学び同じ轍を踏まないようにすることは、教える生徒に対する誠意でもあると思います。

自校内だけでなく、全国で行われている先進的な研究で得られた知見にだって無関心でいることはできないはずです。
cf. 先端研究で得られた知見を活かして授業改善


❏ 実践を伝えるログと成果を証明するエビデンス

日々の研鑽を積み、工夫を重ねて成果を得たら、それをきちんと言語化し、共有と継承が可能な形に調えて行きたいところです。優れた指導法は、賛同者を増やしてより広く実践してもらってこそ、より大きな価値を持ちます。

このような試行を採り入れたところ、こんな変化が生じたという因果を考察し、指導改善ログに記録を残しておくことはマストです。

教科学習指導に限らず、生徒を指導するときの方法の適性は、学ぶものが備えているものとのマッチングに左右されますので、事前の指導での仕込みや、成果が見込めるかどうかの判断基準なども書き添えておきましょう。

しかしながら、そうした実践を文字に起こし、「実績」として並べ立てただけでは、理解者や賛同者が増えるわけではありません。

効果測定は、理解者と賛同者を増やすためでも書きましたが、模試成績やアンケートの集計、ルーブリックで数値化できた生徒の行動や姿勢の変化といった「可視化された成果」が出たときこそが、説得力をもって実践を伝えるチャンスです。



追記 なぜ事態が改善したか理由がわからないことには、ノウハウの継承どころではありません。理由のない成功はありません。意図しない因果が重なり合って成功を手繰り寄せることは多々ありますが、そこにもきちんと理由は存在します。

仮説を立て、実践を重ねて検証ができれば、それは確立した知見となります。仮説通りにいかなければ、また理由を考え、別の仮説を立て検証に当たるまでです。



教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一