休校期間中の自学自習をより確かなものにするために

新型コロナウイルスの感染拡大で5月の連休まで対面での教育活動は事実上不可能になりました。この状況下では、生徒一人ひとりがどれだけ主体的・意欲的に学習を進めるかが問われますが、生徒の意欲と力量に任せるだけでは学力差は大きく広がるばかりです。

しっかり取り組んだ生徒は、単元の理解や知識を十分に蓄えるだけでなく、学びのスキルも高めているはずです。その一方、形だけ整えて終わりという生徒や、表面をなぞること以上にできることを見つけられなかった生徒は学習した内容の理解も覚束ないはずです。

教室での授業が再開したとき、休校期間中に生徒がそれぞれ積み上げたものを土台にせざるを得ませんから、学力差によって指導はより難しくなることが予想されます。

少なくとも数週間に亘り、生徒の自学に任せる部分が大きくなる以上、何を学ばせるかよりも、どうやって主体的・意欲的に取り組ませるかに頭を働かせる必要があると思います。


❏ ユニットごとに明確な到達目標(=解くべき課題)

到達目標を明確にすることは大前提です。その日の学習範囲をきちんと学べば答えられる問いを冒頭(授業で言えば導入フェイズ)で提示し、何を答えれれば良いかしっかり認識させた上で、教科書や資料に取り掛からせましょう。

①問いを見て目標を認識→②問いに答えるべく、教科書や資料を読む→③問いへの答えを仕上げる、という流れをしっかり作りましょう。

②に当たる部分が「学びのメインパート」であると考える向きもあるでしょうが、この部分だけでは履行は担保できても、明確な目的を持たずにただこなすだけですので、学びの成果は保証されません。

当然ながら、問いはサブノート式のプリントの空所を語句で埋めたり記号を選択したりする「求答式」「選択式」ばかりでは、生徒がやっていることは断片的な情報を拾い上げて場所を移すだけです。

これでは、知識(文字通り、情報を編み知に織り上げたもの)にもならないでしょうし、単元の内容を理解しているかも定かでありません。まして、その知識や理解が「生きて働く」ものになっているか不明です。

ちなみに、セクションタイトルに使った「ユニット」は、教室での授業に相当する1回分の自習も指しますし、いくつかの自習を経て学び終える単元や章も指します。毎回の自習を積むだけでなく、まとまりのある個所を学び終えたらそこを俯瞰させることも重要です。

■ご参考記事:
  1. 学習目標は解くべき課題で示す
  2. 答えを仕上げる中で学びは深まる
  3. 単元ごとに設定するターゲット設問


❏ 必達課題、上位課題、挑戦課題で複線的ゴール

生徒の学力差は教室の中にもありますが、一人になって進めなければならない自学自習の場では、その影響は教室の中以上に大きくなります。

成績最上位の生徒を想定して課題を整えて、そのまま全員に「さあ頑張れ」と与えたところで、キャパを超えてしまう生徒が続出します。

全員が必ず仕上げなければならない必達課題で、単元の中心的な理解を確保した上で、まだ余裕のある生徒が任意で取り組むべき上位課題を用意しておきましょう。

必達課題で精一杯だった生徒は、そのユニットでは更なる深掘りはせず次のユニットに進ませ、余裕がある生徒には上位課題でもう少し理解を深めたり、知識を拡張させたりしてもらえばOKです。

上位課題でも余裕を残してこなせてしまった生徒には、探究活動に繋がるようなもう1問を用意しておけば、外出できない生活にチャレンジの材料を持てます。このチャレンジ課題にいどんだ結果(答え)は、生徒間でシェアすれば上位生同士の相互啓発も期待できます。

■ご参考記事:
  1. ひとつの課題から複線的なハードルを作る
  2. 知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせて
  3. 探究から進路へのきっかけを作るプラスαの一問


❏ 見通しをもって学びに向かわせる

目の前の課題にひとつひとつ取り組んでいるだけでは、生徒は見通しを持って学習を進められません。

休校明けの授業でどんなタスクが待っているか、今取り組んでもらっていることをベースにどんな課題に取り組むことになるのかを、授業計画としてきちんと提示してあげましょう。

評価の基準もきちんと示せば、目指すべき到達状態をより良く理解させることにも繋がるはずです。

今回の休校措置では、授業開きもできなかったのではないでしょうか。年間授業計画やシラバス、学習の手引きなどを使ったガイダンスもろくに行えなかったものと拝察します。配布すらままならなかったケースもあったとうかがいました。

別稿"シラバスを熟読・活用させることの効果"で書いた通り、シラバスの熟読が到達目標の達成を近づけることを示唆するデータもあります。

自宅学習中の生徒を対象に、課題を送るだけでなく、授業開きも改めてきちんと行うようにしたいところです。配布済みのシラバスや年間授業計画があるなら、それを「教材」にした解説授業(YouTubeの限定公開機能を使えば動画の配信もできます)も検討してみましょう。


❏ 目が届かないからこそ、振り返りの結果を把握

主体的に学びに向かわせる上で最も重要なことのひとつは、課題に取り組んだあとの振り返りです。振り返りを経てこそ次への課題形成です。

ポートフォリオの導入が進み(始まり?)、日々の授業でのリフレクションシートの活用も広がりを見せていますが、直接的に生徒の学習の様子を観察できない環境だからこそ、生徒が残したリフレクション・ログをしっかり読み、生徒一人ひとりの状況を把握するようにしましょう。

校内にシステムが用意されていなくても、Googleフォームを使ってアンケートを作り、生徒のパソコン、タブレット、スマホからアクセスさせれば十分に機能させることができます。

好適な振り返りをしている生徒がいたら、そのリフレクションログをクラスでシェア(名前は伏せた方が無難でしょうか)しましょう。ぼんやりしていた(ボーっと生きていた)他の生徒への刺激にもなります。

なお、せっかく作るアンケートフォームですから、理解の度合いの自己評価や課題を仕上げるのにかかった時間などの定量的なデータも取っておきたいところです。課題量の調整や教材の工夫、補助的な説明教材の要否などの判断に材料が得られます。



追記: 休校期間中の教科学習指導では、「教える」という発想をひとまず脇に置き、「学ばせる」ことに意識を集中させた方が良いと考えます。所与の教材を学んだ上で自力で答えを仕上げるべき問いを用意してあげれば、生徒は自ら教科書や資料を読んで、知識と理解を獲得しながら、自ら学ぶ方法そのものを身につけてくれるのではないでしょうか。教えることができない今こそ、不利と考えるのではなく、この状況を逆手に取る発想が得るものを大きくするように思います。

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  1. リモート学習の可能性と十分な成果を得るための前提要件
  2. 情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ


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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一