新年度に向けて、最終結果と照らした指導の成果検証

早いもので1月も終わりを迎えました。センター試験の結果も既に出ていますし、最終的な出願校も決まったはずですので、3ヵ年/6ヵ年に亘って行ってきた学習指導と進路指導の成果を測るのに必要な指標は、これですべて揃ったことになります。

一般入試の合否結果はまだですが、それを待っていては来年度の指導計画にこれまでの指導を振り返っての成果と課題を反映できなくなりますので、総括にはこのタイミングを逃すわけにはいきません。

データをきちんと揃えて指導の効果測定/成果検証を行い、来年度に引き継ぐものと手を引くものを切り分けるとともに、更なる改善に向けた新たな仮説の下で新年度からの指導計画を固めて行きましょう。


❏ 模擬試験とセンター試験の結果などから

入学時から計画的に実施してきた模擬試験の成績はすべて記録に残っているはずです。これらを用いて、学年全体での成績分布の推移を確かめるのは指導の成果検証に向けた最初の作業です。

後退や停滞が目立った時期については、当該時期の指導のあり方だけでなく、そこに至るまでの期間での指導にも何らかの問題点や改善課題があったはずです。

当該時期の指導では、授業デザイン、課題の選定、指導の内容とその組み合わせなどが、改善課題の特定に際しての着眼点になります。

教えて覚えさせることに終始したり、宿題を増やすばかりで仕上げ切らないことを習慣化させていたりといったことはなかったでしょうか。

体験的な学びに臨ませたのに準備学習が不足して、認知の網が働かないままに手順だけを踏ませてしまったということもあるかもしれません。

時期を遡った指導では、学びが次のステージに進んだときに必要になる学習法策の獲得が十分であったか、相互啓発と互恵意識で結ぶ学びのコミュニティの創出と維持ができたかを確認しましょう。

こうした振り返りには、指導に当たった先生方の見立て(観察の記録と所感の蓄積)を持ち寄る必要がありますが、データを用いて「どの時期のどの観点で」と焦点を絞り込まないと会議の効率が悪すぎます。

ただでさえ忙しい年度末に思い出話で無駄にする時間はないはずです。全員で集まる会議の前には、電子会議室の利用などで、気づきの交換と論点の整理までは済ませておくのも好適です。


❏ 進路希望調査の記録と最終出願校の一覧から

定期的に行ってきた進路希望調査の記録を辿ると、指導の改善に繋がる様々な示唆が得られるはずです。

当初の希望と違った進路を最終的に選んだ生徒の中にも、手が届きそうもないからという理由だけで第一志望を諦めてしまった生徒もいれば、対照的に、体験的な学習機会や日々の授業の中で見出した興味を起点に探究活動にしっかり取り組み、学問研究や学部・学科研究を経て、地に足の着いた志望理由を作り上げた生徒もいるはずです。

目標を持った状態で巣立たせることは大きな指導目標です。最終的な出願先に明確な志望理由を持つことができた生徒を抽出すれば、どの時期に何を経験させ、どんなことを考えさせるべきなのか、進路指導計画作りのヒントも得られそうです。

また、如上の生徒の割合には、学年/年度間での違いに加え、クラス間でも差異があります。より多くの生徒が明確な志望理由を持てたことの背景には、担任の先生や学年団の指導があるはずです。

データを用いて優れた実践の所在に当たりをつければ、好適な指導手法は何か、どんな指導(内容と配列)、どんな働きかけが進路意識形成に好適な影響を及ぼすのかを探るにも効率がぐんと良くなります。

ポートフォリオの導入が進んだら、体験的な学びの場や進路イベントを経験して生徒が残したリフレクション・ログもデータに加えましょう。


❏ 定期考査の結果や評定と最終結果の照らし合わせ

定期考査の点数や評定と、模試やセンターの結果との間に有意な相関が得られているかどうかも点検しておくべきだと思います。

新しい学力観への転換が進むと、従来のままの定期考査や学習評価の仕組みでは、生徒のパフォーマンスを正しく評価・予測できません。

入学から卒業までを通して、正しい評価を重ねることは、学力形成の道を正しく歩ませることに通じます。

ある時点で行う評価は、その先をどう歩ませるかの指針を得るためのものです。定期考査や評定の付け方が新しい学力観に添わなくなっていると、生徒に誤った地図を示すリスクを増やすばかりです。

個々の生徒について、入学以来の考査成績や評定は当然ながらレコードに残っていますので、これと最終結果(出願先大学群と合否結果、最後の模試やセンター試験の成績など)と関連付けをして、相関を数値にしてみるのはそれほど面倒な仕事ではないと思います。


❏ 指導の改善にもファクトフルネスを

新しい学力観への転換は、先生方の経験則が適用できる範囲にも変化をもたらすはずです。令和の時代に移り、平成の前期や昭和の時代に通用した「正しい学び方」が今もなお価値を持つ保証はありません。

社会の変化がますます加速する中、従来の進路指導観にも修正が必要になっています。そもそも、入学してから生徒が経験する学びの場が大きく変化していますので、あるパーツだけ更新せずにそのままにしたら、全体のバランスがおかしくなるのは必定です。

最新のデータを用いて、事実に基づく判断を重ねて行くことは、先生方が経験の中で積み上げてきたノウハウや技術を正しく活用するためにも欠かせません。どれほど優れた技術にも的を誤るリスクがあります。

ファクトフルネスは、探究活動を通じて生徒に獲得させたいものですが、指導に当たる先生方にも欠かせないものだと思います。

例えば、学力や進路意識の形成をデータに残った記録を用いて点検してみると、入学から卒業までのそれぞれの時期に大きく伸びた生徒と、伸びなかった生徒/後退していった生徒が明らかになります。

伸びた生徒の学習者行動を、指導に当たった先生方の記憶を持ち寄って具体的にイメージすれば、ガイダンスや進路集会などの場で生徒に提示する「好ましい学習者像」「期待する行動」にもエビデンスに基づいて合理的に更新ができます。

方針を正しく定め直せたら、あとは先生方がこれまでに身につけた指導技術(観察、声がけ、知識に基づく助言など)を使って、正しい方向に生徒を導くだけですよね。


追記 新しい学力観のもとで大学入試も変わります。当然ながら、学ばせ方や進路指導の方法にも転換が求められます。「清心」という言葉がありますが、昔からのやり方そのままにせずに、時にはきっちり埃を払うことも必要ではないでしょうか。そのためにはデータをきちんと活用するべきですが、入学から卒業までを通したすべてのレコードが揃ったこの時期こそ、指導の振り返りの最適期だと思います。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一