単元を跨いで作る、習ったことを使ってみる機会

授業で習ったことを使って答えを導くべき問いは、学習目標を理解させるために導入フェイズで示すターゲット設問としても、授業を終えた段階での学びの仕上げにも大きな存在価値を持つものですが、「ある日の授業で学んだことを使う機会」は、一つひとつの授業あるいは単元に閉じた如上の問い/課題以外にも、その後に学ぶ別の単元の中にも設け得る/設けるべきものです。

既習単元で学んだ重要項目が教材の中に再登場したら、不用意に教え直してしまうのではなく、教科書やノートの該当ページを開かせて生徒自らに確認させたうえで、新たな文脈/条件下でその知識・理解を使わせてみることで、再記銘や理解の深化が図れます。

また、単元固有の知識のレベルではカリキュラムのスパイラル上にしかその活用機会は現れませんが、科目に特有のものの捉え方・考え方は異なる単元でも繰り返し用いられますし、テクスト(読解の材料としての本文に加え、解説文や資料など)やデータ(グラフや表に加工されたもの/加工される前のもの)の読み方ならば、至る所でそれらを駆使するべき場面に遭遇するはずです。


❏ 内容理解/課題解決に用いた手段も「習ったこと」

所与の情報を整理するにしても、問題を解決するにしても、各教科の授業の中で生徒が学んでいる「知的作業の方法」には、以下に挙げたような場面で用いるものを始めとし、実に多岐多彩なものがあるはずです。

  • ディスコースマーカーを手掛かりに文章全体の構造を読み解く
  • グルーピング、階層化などの手法で物事を分類・整理する
  • 問題文に与えられた情報を図に起こしたりモデル化したりする
  • 検証したいことから逆算して、確かめる方法を考え出す
  • 複雑に見える問題をパラメータに分解して理解する

こうした事物を理解するための様々な手法に生徒が触れるのは、単元の内容を理解したり課題を解決したりするための手段としてでしょうが、当座の目的(理解/解決)を満たす中で、そこで用いている様々なツール/手法も同時に学ばせているのだとの認識を、まずは教える側がしっかり持つ必要があると思います。


❏ いくどか使って見せたら、生徒にも使わせていく

これらの手法は先生だけが駆使していても生徒はその使い方に習熟できませんし、下手をすると学んでいる認識すら持たない生徒もいます。

新しい単元を学ばせている中で、以前に幾度か使った手法を駆使すべき場面が訪れたら、使いかけてみたタイミングで「これと同じ方法はどこで使ったか」と尋ねてみましょう。

尋ねられれば、その時の状況とともに使った手法そのものも思い出します。忘れていたら、その時のノートを開かせてみれば良いだけです。

どんな方法で内容を分解・整理したか、正解までもっていったか思い出しながら、新たな場面でそれらを使ってみれば、方法への理解・習熟も進み、使い方の拡張も図れるはずです。

ある日の授業で学んだことに時と場面を変えて出会い、それらが知的活動の強力なツールになり得ることを知れば、科目を学ぶことの意義も、個々の知識の獲得に止まらない、より大きなものと認識されます。


❏ 手法の獲得に向けた段階性(知る→わかる→使える)

如上の指導は、幾度かは先生が使って見せ、生徒の側でその手法への馴染みがある程度できたタイミングで行うのが好適です。

一つひとつの単元を学びながら身につけていくこととは言え、初めて学ぶ単元の内容と、これまた初めて触れる理解/解決のためのツール・手法を同時に学ばせるのには、いささか負担が大きくなり過ぎますし、両方とも中途半端に終わるリスクもあるからです。

手法の理解から習熟まで一気に持っていこうとするより、

  1. まずはそれと意識させずに先生が使って見せて、
  2. 次の機会には想起させつつ様々な場面で使えることを知らしめ、
  3. また別の機会に、やらせてみながら手法のメカニズムを理解させ、
  4. 次には実際に使わせてみて、理解と習熟を確かめさせる。

という段階性を踏むことが大切です。複数の機会を跨ぎながら徐々に学んで行けるよう中長期的に指導の計画を立てましょう。

当然ながら、その先には生徒自身の工夫により生まれた新しい手法の確立というステージが待っています。

段階的指導を行うには、生徒が現時点でどの位置まで進んでいるかを教える側が常に意識し、行動(問い掛けへの反応など)を観察しながら把握しておく必要があることは言うまでもありません。

既にやり方に触れたことがあるのに、情報を整理したり、解答への道筋を立てる工程を生徒にやらせることなく、先生が先回り/肩代わりしてしまうことは、生徒の記憶の中にあるはずのツールを思い出しながら使ってみる機会を奪っているのだとの認識が必要です。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一