〇〇的な(教科・科目に固有の)考え方、ものの見方

教科・科目に固有の考え方を理解させ、それに基づき物事を正しい見方で捉えられるようにさせることは、教科・科目を学ばせる最大の目的のひとつだと思いますし、そうなれたとの実感は生徒がその先に学びを進めていく上で大きな動機になると思います。

科目への自己効力感も高め、興味も大きく広げさせるでしょうし、今まで興味を持つことがなかったことに面白みを感じ、関心を向けられるようになったら、そこから先の成長には大きなものが期待できそうです。

生徒にそうした実感を持たせるには、それなりの場面を教える側で用意することが不可欠です。ものの見方まで踏み込んだ日々の授業を心掛けていたとしても、先生が説明しているだけでは「そんな見方もあるんだな」という認識に止まってしまい、「自分が新しいものの見方ができるようになった」という体験を通した感覚にはならないはずです。


❏ メカニズムを理解したら他の例に当てはめてみる

ある単元を学ばせるときにも、幾つかの具体例に基づき、底に流れる考え方や事象を作り上げているメカニズムを理解させたら、そこからもう一歩踏み込みたいところです。

考え方やメカニズムを理解させるのに用いた例と同じ原理が働いている別の例を用意して、パラメーターを変更したときにどんな変化が生じるか、結果を予測させ、その理由も言葉にさせてみることなら、様々な単元・場面で試すことができそうです。

自分の予測が正しく、しかも論理的に説明することができたとしたら、考え方やメカニズムをきちんと理解していたことが確認できますし、生徒は自分の理解やそこまでの学びに自信を持ちます。

ただ並べられた事象を知って覚え込むだけでなく、根っこの理屈がわかったとなれば、面白さも違ってきますよね。

その先に広がる世界もイメージがわいてきますので、興味や関心も広がるチャンスを得るはずです。先生方が今教えている科目を専門にするきっかけも、そうしたものだったのではないでしょうか。


❏ 具体例を観察し、そこに働くメカニズムを推測させる

様々な現象や事例を見せたり探させたりした上で、それらを支配しているルールを予測させ、その予測(仮説)で他の事例を上手く説明できるか確かめさせてみるのも面白そうです。

先生が具体例を使ってメカニズムを説明するのを常にしては、物事を観察してそこに働く仕組みを考える練習の場を生徒は持てません。

総合的な探究の時間では、調査を通してデータを集め、そこに仮説を立てて検証することを生徒に求めますが、週に1~2回の探究の時間だけではそうしたスキルと姿勢を育むのに指導機会の不足が懸念されます。

各教科の日々の学びの中でも同様の経験をさせ、学びのチャンスを増やしてあげることが大事です。

普通に考えると同じような現象が予想されるのに、違うふるまいをする2つの例を用意し、違いを生んでいる原因は一体何かを考えさせる場も、どこかで作ってあげたいところです。

探究のテーマとは程遠く見える英語や古文の文法だって、同じような構造や語彙を持つ例文を集めて、それらを支配している文法規則を考えさせるなどの活動は可能ですし、生徒の興味を刺激するはずです。

教科書のページを最初から最後までめくり、そこに登場する「言葉」という語をすべて拾い上げさせて、使われている文脈/指しているもので分類し、「言葉」という語の定義を考えさせるというのは、『教えることの復権 (ちくま新書)』で紹介されていた大村はま先生の実践です。


❏ 仮説を立てる力、統計リタラシー、ファクトフルネス

教科・科目固有のものの見方を獲得するという目的の中には、教室で習っていないことがらに対しても、現象を観察してそこに働くメカニズムを推測できたり、それらをコントロールするすべを考案できるようになることも含まれます。

当然ながら、各教科・科目の指導においても、ものの見方/考え方を獲得する如上の活動の配置は不可欠なはずです。

現場には「ただでさえ授業時間が不足し、学ばせなければならないことをこなすのに精一杯。そんな時間がどこにある?」とのご意見があるのも承知しておりますが、必要性が明らかならば、実現の方法を考えるのが筋というものだと思います。

学ばせなければならないことは減らなくても、教室で教えなければならないことがそれと同量ということではありませんよね。

単元の基礎的な知識・理解であれば動画教材で自習させることもできますし、教科書をきちんと読めて参照型教材も使いこなせる状態に生徒を育てておけば、授業外学習で生徒に任せられる範囲は広がるはず。

知識の拡充を図る場面でも、知識の獲得は個人の活動を通じてという発想を持つべきだと思います。

如上の活動を3年間/6年間の指導計画にきちんと組み込んでおけば、教科学習指導の中だけでも、データを正しく理解するための統計リタラシーや、確かめた事実に基づく判断を大切にするファクトフルネスなどの獲得も、ある程度まで進む期待が持てるのではないでしょうか。


こうしたスキルや姿勢は、どの進路を選んだ生徒にとっても、より良く生きる(=正しい選択を重ねる)ための土台になると考えます。

新しい学力観の下での授業デザイン(まとめ)


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一