授業を終えてからの学びの「仕上げ」と「拡張」

授業は50分という限られた時間の中で行われるものですから、そこでできることには限りがあります。授業内での学びで得た知識や気づきを携えて課題にじっくり取り組み学びを深く確かなものにすることや、教室での学びの中で刺激された興味や関心に沿って学びを拡張していくことを通じて、学びの総量(深さ✕広さ✕密度)を大きくしたいものです。


❏ 教室での気づきをそのままに放置しない

授業中にどれだけの気づきがあっても、それをもとにじっくりと考えたり、理解したことを言語化してみないと、気づきは断片的なままです。見落としていたことや理解し損ねていたことがあることも認識できず、そのままにされてしまいます。

テレビで情報バラエティ番組を観て「なるほど」と思うことは多々ありますが、大抵はそのままにしてしまうので無知の領域は手つかずのまま放置されます。似たようなお題でも再び「ボーっと生きてきてすみません」と謝ることになりそうです。

深く考えるには、「起点となる問いや課題」が必要ですから、授業を終えるときには、その日の学びをもとに解を導くべき課題をきちんとセットしてあげることは指導者の大事な仕事のひとつだと思います。

 ■ 答えを仕上げる中で学びは深まる

先生が正解や模範解答を示した瞬間に生徒は、それ以上考えることを止めてしまいがちです。「あとはこれを覚えればOK」という意識に切り替わってしまえば、そこから先の学びの深まりは期待できません。隠されているものは覗きたくなるという心理をうまく使いましょう。

 ■ 結論を出さずに終える授業


❏ 学んだことを振り返りながら、次の問いを立てさせる

学びの仕上げに好適な問いは、先生が用意してあげるのが最も確実で簡便な方法しょうが、それだけでは生徒は自ら問いを立てる力を身につける機会を持てません。生徒自身が教科書やノートに目を通し直して、自ら問いを立てるよう、そうした場を積極的に作っていきましょう。

教科書に書かれていることでも、「本当にそうなのか」「なぜこう言えるのか」を考え、物事を鵜呑みにせずに事実を確かめて行く姿勢(ファクトフルネス)は、これからの社会を生きていくために必要な力です。

PISA2018の結果でも、読解力の順位が下がったと騒ぎになりましたが、日本の生徒の失点が多かったのは「情報の質と信ぴょう性を評価する」あるいは「矛盾を見つけて対処する」という新たに読解力要素に加えられた部分でのことです。(PISAが測定する「読解力」

学び終えた範囲に改めて質問を作らせることが、背後にあるメカニズムや行間に隠れている考え方に意識を向けさせる効果的な方法です。

 ■ 質問を引き出す~学びを深め、広げるために同続編
 ■ 探究活動を通して養う"ファクトフルネス"


❏ 学んだことをもとに行う「拡張型調べ学習」

教科書や先生が用意した資料/プリントに書かれていることをきちんと調べ/改めて深く考えてみることに加えて、授業内で見出した興味や関心を起点に拡張型の調べ学習を行わせてみるのもお奨めです。

教科書内容を理解するのに精一杯という生徒に、プラスα の課題を与えても、容量超過で「仕上げ切れないことを増やすだけ」という結果になりますので、あくまでも任意課題という位置づけになります。

 ■ 探究から進路へのきっかけを作るプラスαの一問

授業で扱った課題やテーマに別のアプローチはないか、異なる考え方で解決に取り組んでいる人はいないかなどを調べてみて、そこで知ったことをミニプレゼンにまとめさせている実践を方々で見かけます。

生徒は授業でベースになる知識・理解を得ていますので、インターネットで検索するためのキーワードを所持していますし、先生が参考図書を挙げてあげれば図書室に足が向くかもしれません。(当然ながら司書の先生との事前の打ち合わせ、蔵書の点検と整備が必要ですが…。)

理科や社会だけでなく、英語や国語で読んだ文章を起点にすることだってできます。本文に登場した重要語彙は検索のキーワードになり、授業で得た知識は自ら調べて行くものを理解する土台になります。

教科書で学んだ瞬間こそが、その先の学びに向かう絶好機です。

拡張型調べ学習は、当然ながら生徒自身によるアウトプットを伴いますので、提出してきたものには肯定的・建設的なフィードバックを行うことで生徒の興味・関心、さらには自己有能感を刺激できます。

好適なアウトプットは教室内外で他の生徒とシェア(授業内での紹介や校内掲示、教科通信などへの掲出)をすれば、学びのコミュニティに相互啓発が働きますので、生徒が互いの頑張りを支え合う集団作りの一助にもなるはずです。


❏ 生徒が自力で進められる工程は授業外学習に

授業を終えてからの学びの「仕上げ」と「拡張」に取り組ませるには、授業の中で必要なレディネスを整える必要があります。

先生との問答、生徒同士の話し合い、資料や文献を介した先人との対話などで、「起点となる気づき」をしっかり積ませなければなりません。

解消すべき不明や掘り下げるべき興味の所在に気づかせるための問い掛けもこれまで以上に充実させていくべきでしょう。

こうした活動に授業時間の多くを割くためには、生徒が自力で進められるものは授業外学習に割り当てた授業デザインが必要になります。

まさに、「学ばせ方の転換で、家庭学習の充実が求められる」ということだと思います。

 ■ 原因から考える家庭学習時間の延伸策(全3編+関連記事)


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一